エンジニア職から営業職へ転換した自分。苦しくも楽しくもあるこのIT業界について、職種を変えたからこそ分かる自分なりの視点で流行のキーワードをぶった切ります。

日本とクラウド(3)~日本人と日本企業

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 いよいよ最終回。

 今回は日本でクラウドは流行るのか、民族性や国内の企業状況を踏まえて書きました。さぁ、皆さんは読み終わってどう感じるでしょうか!?

■日本人と日本企業

 ではNoの理由は何か?

 欧米企業でクラウドの導入が盛んになると考えたのは前述の通りだが、クラウドの導入がそれほど進まない国があるとしたらドコの国だろう?

 筆者はそれが日本だと考えている。

 ではなぜクラウドが日本で流行らないと考えるのか?

 世界の中で日本人の特徴と聞いて皆さんは何を思い出すだろう?

 首からカメラを提げた観光客? 円高ドル安にモノを言わせてブランド品を買い漁る民族? 牧歌的農耕民族? 日米安全保障条約(笑)?

 筆者の場合、長崎の出島に代表される「閉鎖的国民」や「島国根性」という言葉を思い出す。

 筆者も例外ではなく「オラオラ、ワシは日本人ぢゃ。そこの外人。ココは日本なんだよ、日本語話さんかい。」と言いたくなるほどコテコテの日本人である(笑)。

 先ほどスカンジナビア半島の某企業に勤める人が言っていたような、欧米人と日本人に仕事の進め方の違いがあるとすれば、あながちその考えも間違ってはいない気がする。

 つまり、欧米のビジネスが狩猟的でギャンブル的なのに対して日本人のビジネスは農耕的とでも言えばいいのだろうか。

 ブラッシュアップして良い製品やサービスを作り出そうとするが故に、ある程度の時間をかけて育て、欧米に比べ多少スピードを抑えたビジネスの進め方をするのが日本人なのではないかと感じる(もちろんある程度のスピード感はあると思うが)。

 その分、自分達の収集した情報や設備なども自前で作り上げてしまったほうが、後にブラッシュアップした様々なサービスや製品の展開に活かす自由度が高いと考えるのではないだろうか。

 皆さんの周りに何かをコレクションしている人はいないだろうか?

 最近ではあまり聞かなくなった「切手集め」に始まり、多かれ少なかれ日本人には収集癖があると筆者は考える。

 ブリキのおもちゃ、トレーディングカード、タレントのサイン、面白いのになるとトイレットペーパーを包んでいる包装紙…などを収集している人もいる。

 良い悪い、好き嫌いは別としてモノや技術や情報を溜め込むクセ…これも日本人の特徴ではないだろうか。

 また自社の業務でクラウドを必要とし、その業務をクラウドに構築するための必要なコストをかけ、作業の効率化などでコストパフォーマンスのバランスアップが見込めるような仕事を行っているような、規模感のある会社だけではないのも理由の1つと考える。

 話しは変わるが日本で大企業といわれる会社は、どの程度存在するのかご存知だろうか?

 ウィキリークスではないが、ネットには便利な情報がゴロゴロ転がっているものである。

 中小企業庁の統計調査で大企業と中小企業の割合などを調べた「中小企業白書」なる報告書があるのだが、それによると実に日本の企業の99.7%が中小企業である(そのうち小企業が87%)で、大企業とされる企業は0.3%しかないのだ。

 ※中小企業の定義は「常用雇用者300人以下(卸売業、サービス業は100人以下、小売業、飲食店は50人以下)、または資本金3億円以下(卸売業は1億円以下、小売業、飲食店、サービス業は5000万円以下)の企業を中小企業とする」とある。

  ※小企業の定義は「常用雇用者20人以下(卸売業、小売業、飲食店、サービス業は5人以下)を小企業とする」とある。

 この数字を見てどう思うだろう。

 日本の経済は中小企業で支えていると言っても過言ではない。

 この中小企業がほとんどを占める日本で、クラウドを必要とし、程度の差こそあれ、そこに投資をする企業がどれだけの数あるだろう。

 例えば昨年(2010年)の5月にパナソニックが「2011年度からネットワーク経由でソフトウエアの機能を利用する『クラウドコンピューティン グ』」を工場の生産管理に導入する。運用は子会社から進め、システム運用費の4割削減と迅速な海外展開を後押しする目的だ」と発表した。

 国内外に多数の拠点を持っている企業ではこのように自社グループ内でサービスプロバイドを行うだけでもコスト削減などの効果は大きく表れるだろう。

 だが先ほども言ったように日本企業の99.7%は中小企業である。国内外に複数の拠点を持ち、クラウドの恩恵を最大限に受け、コスト削減や効率アップが図れる企業はどのくらいあるだろう。

 多分、筆者が中小企業の経営者だったらこう言うだろう。

 「クラウドか何だかし知らね~が、いーから本業の仕事を引っ張って来い。カネ出してクラウド導入したってお前の給料は上がらね~ぞ」……と。

 また、それと同時に、やはり島国根性と言うか、自分のビジネスの情報をクラウドなどという外部のサービスに託せないと言うのが本音ではないだろうか。

 例えば身近なところで言えばGoogle DocsやDropboxなどのサービスがある。これも1つのパブリッククラウドである。

 見れば巷にはクラウドを体験できるサービスがゴロゴロしているが、企業や仕事の上での重要な情報をそれらのサービスやサーバに託している人はどのくらいいるだろう。

 コツコツと積み上げてきた大切なビジネスの情報。

 もちろん、法律上や取引先との関係上、外部のサーバに託せないことも多々あるだろうが、 ドコでどういう管理をしているのか分からない、目に見えないサーバにそんな重要な情報を託したくない気持ちがあるのは事実ではないだろうか。

 よく考えればそれらのクラウドサービスプロバイドを展開している企業に、どんな管理をしているのかと聞くこと自体、野暮なのは心のどこかで分かっているのにだ。

 それらのクラウドサービスを展開する企業は、当然それで利益を出すことや顧客の囲い込みを狙っているのだから、鍵のかかっていない事務所に24時 間365日稼動のサーバを置いて運用するよりも、ドコにあっても自社以上の管理体制を取っているだろうサービスプロバイダに運用を任せたほうが安全で得策 なのに……だ。

 筆者が日本でクラウドが流行らないと考える理由が以上である。

 もし日本国内のクラウド導入が加速するとすれば、一般に公開されているサービスやリソースを利用するパブリッククラウドではなく、先ほど例に挙げ たパナソニックのような、自社でリソースを準備し、自社グループにそのサービスを展開するようなプライベートクラウドが主流になるのではないかと考える。

 ただそれも日本の企業のほとんどが中小企業だということを考えれば、加速という言葉を使うほどの勢いはなく、またプライベートクラウドと言えども、 自前で設備を用意することは難しく、Googleなどのファイル共有をせいぜいとするパブリッククラウドに限定されるのではないだろうか。

 筆者の考えはIT業界の加速を鈍らせる考え方であるかもしれないが、皆さんはどう考えるだろう?

 海外と日本国内のビジネス手法や民族性の違いなど、クラウドというキーワードを中心に切らせていただきました。

 賛否両論いろいろあると思いますが、皆さんはどう感じたでしょう?

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