自らが主体的に選択して築く未来へ
この本の話を書きたいなと思っていたら先を越されてしまいました(^^;
僕も、この「ワーク・シフト」の本を読みました。未来の自分の働き方を考えさせられる一冊で、2012年に出版された本の中で一番のお気に入りです。自分の頭の中を整理する上でも、今回、この本の内容に関連して「未来をどう迎えるか」について書いていきたいと思います。
副題に「2025」と書かれているように、この本は2025年の未来を見据えて、一人ひとりがどう考えて仕事をしていけば良いかを考えていきましょう、ということが書かれています。今のこの時代は、産業革命以来の大きな変革の時期にある、というのです。それはなぜか。本の中では大きく分けて「テクノロジーの進化」「グローバル化の進展」「人口構成の変化と長寿化」「社会の変化」「エネルギー・環境問題の深刻化」の5つの要因(更に細かく、現象別に分類すると32個の現象)が基になっています。
この本は特定の業界・職業に絞ってはおらず、どの職業の人でも考えさせられる内容になっています。ただ、ITエンジニアの方には特に読んだ方が良いように感じました。その理由のひとつが、先ほどの5つの要因(特に「テクノロジーの進化」)が大きく関係しているからです。32個の現象から一部を引用すると、例えば「インターネット」と「クラウド」。本の中では、50億人がインターネットを利用でき、いつでもどこでも情報にアクセスできるような環境が出来上がると書いています。
50億人がいつでもどこでもインターネットで情報にアクセスできるということは、今の時点でも中国とインドの成長が目覚ましいですが、更なる新興国が台頭してくる、つまり、ライバルが増えるという予想も難くないわけです。
また、いつでも情報にアクセスできる、ということは、今まで以上に情報のシャワーを浴び、結果的に今以上に時間に追われる可能性がある、という指摘もしています。
本書では、5つの要因ならびに32個の現象を基にして、2025年を生きる一人ひとりがどのような生活を送っているかについて、ネガティブな未来とポジティブな未来の予想をしています。(その中には「いくらなんでも、こんなことが実現するかな」と思ってしまうようなものもありますが、可能性はゼロとは言い切れません。)
では、ポジティブな未来のために、どうしていけば良いか。本書では、タイトルのとおり、「ワーク」を「シフト」することを訴えています。「シフト」する内容は3つ。一つ目がゼネラリストから連続スペシャリストへシフトする、というもの。悪く言えば「何でも屋」と言えてしまうゼネラリストではなく、ある領域(技術)を深く学びましょう。特に、この先に未来でニーズが高まると予想されるものについてスペシャリストになりましょう、というものです。「連続」の言葉のさす意味は、時代の変化に応じて、その分野に固執せず、別の分野の技能と知識の習得も覚悟しなくてはならない、という意味での「連続」です。
二つ目が、孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へシフトする、というものです。50億人がインターネットにアクセスできるということは、新たな人的ネットワークも作りやすいので、孤独に革新を起こすのではなく人と人とが結び合って革新を起こしましょう、というものです。人と人との結びつき方として「大きなアイデアの源となる群衆」「同じ志をもつ仲間」「情緒面と安らぎを与えてくれる人間関係」の3つを挙げています。このような人間関係を構築するための意識的な努力が求められています。
三つ目が、大量消費から「情熱を傾けられる経験」へシフトする、というもので、本書では一番重要だとされているように書かれています。例えば「いい会社に入って沢山のお給料を貰い、結婚して子供を産んで、車とマイホームを買って……」といったような昔からの考え方を脱却し、職業人生として幸せを感じる方向へシフトしましょう、と言っています。そのために、こういう選択をしたらこういう結果が待っている、という選択肢とその結果を考えて、その上で決断に踏み切らなくてはならないのです。
もう少し簡潔にまとめると、本書の帯にも書かれているように「忙しいだけの仕事」から「価値ある経験としての仕事」へシフトする(一つ目のシフト)、「勝つための仕事」から「ともに生きるための仕事」へシフトする(二つ目のシフト)、「食えるだけの仕事」から「意味を感じる仕事」へシフトする(三つ目のシフト)、ということです。
「シフト」すると書かれてはいるのですが、要するに「自ら主体的に未来を選択していきましょう」と言っているのではないかと思います。
以前、僕は「晴読雨読」の記事の中で「すべてはあなたが選択している」の本の書評を書きました。
未来について考えず、漠然として未来を迎えると、先述のように時間に追われるばかりの未来がやってくるかもしれません。どのような方面へ行くか、どのような仲間を作るか、どのような幸せに重点を置くか。流されるままに辿り着いた未来も、自分で考えながら進んだ未来も、どちらも自らの選択で選んだ未来なのだと思います。だったら、漠然として選んだ未来より、自らが主体的に(意識的に)選んだ未来へ進もうとするべきではないでしょうか。
本書に書いてある5つの要因ならびに32個の現象で、自分が気になるものをピックアップする。それらについて詳細に調べ、深く考察する。書いていないことでも、自分で考えられる要因・現象があれば付け加える。そして、それぞれを並べてみて、自分の未来図を見いだす。その未来へ行くために、3つのシフトを行う。本書ではそれを推奨しています。読書の秋ですし、ここに書ききれないことも沢山、本書には書かれているので、一度お読みになり、自分自身の未来について考えてみるのも良いのではないでしょうか。
ちなみに、未来で起こりうる現象を考える上で、現在だけでなく歴史を踏まえることも心がけましょうと書いています。「産業革命以来の大きな変革の時期」と書きました。であれば、産業革命時にどのような大きな変化が起こったかを振り返ることで、この先の未来で大きな変化が起きそうな場合の予測の精度が上がるからです。僕は学校時代は社会科(特に歴史)が大の苦手でした。暗記だけの科目だと思っていたからです^^; この本を読んでから、世界史・日本史を勉強し直すための大人向けの本を読んでいます。試験勉強ではないので、詳しい年号や人物名を詳細に覚える必要はありません。こういう時代背景・地理的背景があって、こういう流れで、この出来事が起きた、というのを学べば充分です。これを意識して、ようやく、歴史学習が面白くなりました^^; 歴史を学び直すことも楽しいですよ。