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もしあの人がITを使ったら -第一話 サンタクロース(前編)

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■要求仕様

 『毎年12月中旬までに、日本国内の3歳~15歳で1年間「よい子」だった全ての子の名前と住所をリストアップする』

 「な、なにこれ?!」

 ときどき仕事を発注しているフリーのエンジニアの手塚君が、今日は大きな仕事の案件を持って来ると言うから何かと思ったらつまらない冗談か。高橋は左手に持っていたお気に入りのジェットストリームのボールペンを置いて溜め息をついた。

 「いやいや、冗談じゃなですよ、本当ですよ高橋さん。この案件の依頼主は誰だと思います?」

 手塚君は続けた。

「サンタですよ。あのサンタクロースですよ! フィンランドでサンタクロースの秘書をやっている茶色い目をしたリーベルさんと僕はFacebook友達なんです。それで日本の信頼できるSIerを紹介して欲しいって頼まれたんです。だから高橋さんに話を持ってきたんですよ」

 そして高橋はのちに日本一のITシステムとなるサンタシステムのプロジェクトマネージャーをすることになったのである。

■サンタ苦労す

 「わしは毎年世界中のよい子たちにクリスマスプレゼントを配ってきた。わしはソリに乗って空を飛ぶことができるし、クリスマスイブの1晩のうちに世界中を駆け巡ることができる。袋の中から子どもが望んでいるプレゼントを取り出すこともできる。

 ただ、最近の日本の子どもたちのことはよく分からなくなってきた。日本人は感情を表に出さないから分かりにくい。顔は笑っていても内心は怒っていることもある。子どもにしても先生や大人の前ではいい子にしていても、陰で悪口を言ったりいじめをしていることもある、いったいどの子が本当にいい子なのじゃろうか? 毎年判断に苦労しておる。

 そうじゃ、最近流行りの「IT」というものを使って日本の「よい子」を教えてもらおう。そういえば私の秘書のリーベルが日本語が得意で、日本のサイトにゾンビの小説などを書いておる。ちょうどいい。リーベルに日本の会社にITシステムとやらを作るように手配してもらおう。



■通信簿を参考に

 どうしたら「よい子」を判別できるだろうか? 高橋PMは高校入試の評価方法に目をつけた。私立高校を受験する際には学校の通信簿の内申点が評価される。例えば私立のK高校では、英語、国語、数学、理科、社会の点が20点なら当日の試験結果が悪くても合格が確約されるのだ。

 高橋の娘の秀美はY中学に通っていた。内申書の英国数理社の合計が17点で20点には届かなかった。ところがボーナスポイント制度というものがあった。英語検定や数学検定を取った、部長や生徒会役員をやった、部活で県大会に勝ち進んだ、コンクールで賞を取った。などの実績があるとボーナスポイントが加算されるのだ。秀美の場合は英検、数検を取っていたがそれでも1ポイント足りなかった。

 普段マンガしか読まない秀美。あるとき宿題の読書感想文で、叱られるのを覚悟で少年ジャンプの感想を書いた。ところが女子中学生が書いた少年ジャンプの感想文ということで注目され、その内容もすばらしい出来だったので全国レベルで大賞をもらった。そして秀美はこれをポイントとして認めてもらってK高校の合格を勝ち取ったのだった。

 こういったボーナスポイントのようなものを使って「よい子ポイント制度」を作れないだろうか? と高橋PMは考えていた。



■サンタクロースのネームバリュー

 高橋PMは大手通信教育のB社のシステムを担当している吉政部長に話を持ちかけた。

 「高橋さん、それは無理だよ。私はいつも教育ビジネスを考えてきたしうちの会社には全国の子どもの成績のデータもある。でも個人情報を外に出せないことくらい分かるだろう。いったい誰がそんなバカなことを言い出したんだい?」

 「実は、サンタクロースなんだ」

 「さ、サンタクロース!? ちょっと待て。それなら話が別だ」

 『サンタクロース』の一言で形勢は大きく変わった。吉政部長もB社の社長も、みんな子どもの頃にはサンタクロースにプレゼントをもらっていたのだ。『サンタクロース』はみんなに魔法をかけるマジックワードだったのだ。

 そしてB社側は通信教育を真面目に出すとサンタポイントが貯まってクリスマスプレゼントがレベルアップする、という宣伝だけで労せずに会員を増やした。

 その話が広まると、別の通信教育のZ社も参画を申し出てきた。さらに計画が進むと、学習塾も加わった。そしてB社やZ社や学習塾から情報を仕入れている小中学校までもが加わることになる。全国的な子どもの学習データがサンタシステムに集まるのだ。そして少年野球やピアノコンクールなどのお稽古ごとの団体も加入して学業以外の成績データも集まった。

 Tポイントカードはいろいろな店での買い物でポイントが貯まる。しかしPontaや楽天カードといった競合のカードシステムもある。ところがサンタクロースには競合する他社はいない。クリスマスイブに空を飛んでプレゼントを配れる人は他にいないもの。サンタシステムは子どもたちの成績データを集める独占したシステムとなる。

■悪い子はいねがー?

 霊長類最強と言われる格闘技選手が宣伝する警備会社のA社に高橋PMはやって来た。A社が国内に設置する無数の監視カメラの情報をシステムに取り込んで、よい子や悪い子を見つけるためだ。

 「高橋さん、それは無理だよ」と言っていたA社の瀧澤部長も、サンタクロースと聞くと態度が変わった。サンタクロースの魔法がかかったようだった。

 こうして日本の子どもたちのデータを取り込んで「よい子」をリストアップするサンタシステムの開発は進められていった。マイナンバー制度は、反対する人もいて普及は難航している。それに比べてサンタシステムは順調だ。反対する人は誰もいない。よい子はみんなサンタクロースにプレゼントをもらって育ってきたから。

 (後編に続く)



■あとがき

 この話はフィクションです。実在するサンタクロースや人物とは関係ありません。

 突然、あべっかんの小説第三弾を書き始めました。急に思いついてクリスマスまでに第一話を書こうとしているので無理な設定も多々ありますがご容赦ください(^^;。後編はクリスマスイブに間に合わせたいです!

 ちなみにあべっかんの小説第一弾と第二弾はこちら↓。

 「エンジニアの言い分」

 「我がエンジニアライフに悔いなし?」

Comment(2)

コメント

ksiroi

リーベルさんは秘書の資格も持っているのか…。ヤバイな…凄いな…。

abekkan

>ksiroi さん
この話はフィクションです。実在する人物とは関係ありません。

と言いつつ、名前はパクらせていただいていますが(^^;

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