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我がエンジニアライフに悔いなし? -第2話(後編)

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 前編の続きです。


■ITエンジニアの殉職?

 私は薮田太志。だった。バリバリのプログラマー。だった。41歳120キロ。だった。先週までは。

 「薮田さんは心不全だったそうですね」

 「1年前、渋田部長が亡くなったときもたしか心不全だった。薮田くんも渋田部長も横綱級の体格だったからなあ。株田君も気をつけないと」

 「はい、宇奈木課長。僕も気をつけます」

 たしかに、私も渋田部長も横綱級の体格だった。毎晩遅くまでパソコンの前に座りっぱなし。お菓子をバリバリかじりながら。深夜に帰ってビール飲んでラーメン食べて。運動なんてしていなかった。それを20年も繰り返したんだから横綱級になったのは当然だろう。でも、40台になったばかりで命を落とすことになるとは思わなかった。もう取り返しもつかないけど。

 

■夜の寄り道

 それにしても、宇奈木課長ってスリムだよなあ。いつも何食べてるんだろう? ちょっと見てみようか。あれ、仕事が終わって駅と反対方向に歩いていくぞ。愛人宅があるのかなあ? ついて行ってみよう。

 あ、こんなところにフィットネスクラブがある。夜遅くまで開いていたんだ。

 「宇奈木さん、こんばんわ」

 「ああ根住さん、こんばんわ。今日もランニングマシンですか?」

 「ええ。今日は1時間走りました」

 ランニングマシンってなんか嫌いだ。ハツカネズミがカゴの中で回し車を回してるみたいで。

 フィットネスクラブに来る人って、そこでは運動するけど、そこまで車で通ってきたり、通勤電車では真っ先に空席を探したりエスカレーターを使っていたりする人もよくいる。日常生活では楽をしていて、クラブ内だけで運動して満足してるというのはおかしな話だと思う。だから嫌いだ。もっとも、私は運動自体なんにもがんばる気はなかったけどね。

■ITエンジニアのプロ意識

 「宇奈木さんはいつも夜遅いですねえ。お忙しいんでしょ?」

 「ええ。いつも納期に追われていますよ。それでも無理矢理にでも時間を作って泳ぐようにしています。体調管理をしておかないと。

 プロのスポーツ選手は、体調管理や食事に細心の注意をしています。プロですからすべきです。でもそれは、スポーツ選手に限ったことではないでしょう。私のようなITエンジニアには力士のようなパワーやサッカー選手のようなスピードは必要ありません。毎日残業しても疲れにくい体、病気になりにくい体が必要なのです」

 ふむ、ふむ。

 「食事にも気を使っています。昼はスタミナをつけるために大好きな鰻重をよく食べますが、夜は炭水化物は避けて腹にたまらないものを食べています。夜中のラーメンなんて一番いけません。あれが太るもとです。

 ITエンジニアは技術があるだけではいけません。多少の無理をしても倒れない体があってこそ、クライアントの厳しい要求にもある程度は対応できるのです。そこまでできるのがプロのITエンジニアだと私は思っています」

 なるほど。宇奈木課長はそんなふうに考えていたのか。体調管理ができなかった私はプロのITエンジニアとは言えなかったかもしれないな。

 「では、根住さんごきげんよう。私は泳いできます」

 

■デジャブ

 あ、駅前に株田君がいる。幸楽に入ろうとしているな。彼も私と同じような体格だ。私のようにならなければいいが。よし、念力でイタズラしてやろう。

 「今日は豚の角野ラーメンにするか。あれ? 財布がないぞ。おかしいなあ。さっきはあったのに。会社に置き忘れてきちゃったかな?」

 あれ?、このシチュエーション、なんか覚えがあるぞ! 先週の前編と同じだ。もしかして、故渋田部長が私と同じことをしていたのかも...

 「じゃあ、今日はラーメンはやめとくか。僕もダイエットしないと薮田さんみたいになっちゃうもんな」

 そうそう。私はこれができなかったんだよね。株田君は体に気をつけて長生きしろよ。これでひとつ良いことをしたから私も天国に行けるかな。

 

 あ、急に川が見えてきたぞ。これが三途の川か。よし、健康のために泳いで渡ってみるか。体も軽くなったし、溺れ死ぬ心配も無いしね。

 (第2話 完)

 

■あとがき

 この話はフィクションです。実在する人物や動物とは関係ありません。

 座りっぱなしの仕事でお菓子をバリバリ食べ、夜遅くにラーメンをガッツリ食べる。そしてメタボに。というのは私自身への戒めの意味もあって書きました(^_^;)。健康には気をつけましょう。

 第3話は敏腕美人マネージャーが登場します。

Comment(2)

コメント

仲澤@失業者

30年近くプログラマしてますと、体のあちこちが壊れます。
ってことで、体を鍛えるパソを考えました。

【仕様】
1.電源は足で漕いで発電。足を止めるとシステムが落ちます(下半身を鍛えましょう)。
2.キーボードが巨大で固い。グーで殴らないと入力できません(上半身の鍛錬です)。
3.ヘッドセットディスプレイなのでどっちを向いてもモニター(目に優しい)。
4.ポインティングデバイスは使用者の体の向きで制御します(柔軟性を身につけましょう)。

え~とだれか作ってください。ってか、使かってるとこマジ見たいっす。

abekkan

>仲澤@失業者さん

そうきましたか(^^)

体を張って仕事をする。健康的ですよねえ!
タッチパネルは「押した感」がなくって私は嫌いです。昔、少林寺拳法の黒帯をつけていた私としては、やはりグーで殴るくらいでないと(?!)(笑)

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