コマツがコマッた-対策をみんなで考えたセミナー
ガガー!
レディガガではない。暗闇から現れたパワーショベルが、銀行のATMを襲う音(^_^;)。ATMを根こそぎ取って持って行ってしまう。
工事現場から盗まれたパワーショベルが、こんな大胆な犯罪に使われてしまう。重機メーカーのコマツは頭を痛めていた。
さあ、これを防ぐ対策を考えよう。という、ちょっと変わったセミナーに先日参加した。
■ユーザー主体開発セミナー
ITによるイノベーションを可能にするプロジェクト推進体制とは、というサブタイトルがついたプロジェクトマネジメントオフィス主催のセミナーだった。講師は日経BPの谷島宣之氏。
前半で谷島氏が日経コンピュータの取材で得た体験や考えを語ったあと、冒頭のパワーショベル問題について、参加者全員でロールプレイングをやった。
まず参加者が、4~5人ずつのグループに分かれた。さらにその中で1人ずつ誰かの役になった。重機メーカーの開発者、営業、役員、ITベンダの人、工事会社の責任者、警備会社、銀行員、未来の顧客、などなど。グループによって配役の構成に偏りがある。現場サイドの人ばかりのグループ、重機メーカーの人ばかりのグループ、異業種の人が集まったグループ、など。
グループごとにしばらく対策とそこから発展できることを考えた。それぞれの役の立場で。するとどのグループも、ショベルカーにGPSを付けて盗まれたら検知できるようにする、という発想は同じだった。だが、そこから先が少し違った。
■重機メーカーの社内のグループ
このグループで考えられた対策は、
- GPSでパワーショベルを監視し、ある範囲から出たら通報する。
- ATMにもセンサをつけ、パワーショベルが近づいたら通報する。
- 指紋認証をつけて、特定の人しかパワーショベルを動かせないようにする。
- しゃべるパワーシャベル(なんのこっちゃ?!)
など、技術的な対策が多く出てきたようだ。
■現場サイドのグループ
- GPSを利用してパワーショベルの稼働率を把握し、足りないときに近くの現場で稼働率が低いところを見つけて借りられるようにする。
- 稼働率が高いところを把握して、もう1台売り込めるようにする。
- そろそろ部品交換が必要、とかいうメンテナンスの案内を出せるようにする。
現場サイドでは、作業効率やコストが意識されていて、「現場力」で意外といいアイデアが出てくる。これを利用したのが今日のテーマのユーザー主体開発ってことか。
■異業種が集まったグループ
- 稼働率を把握して、効率良い重機のレンタルサービスを行う。
- 重機のレンタルサービスと警備会社が地域ごとに連携して、盗難時にはすぐに警備員が駆け付けるという連携ビジネスを展開する。
未来も見据えた異業種が集まったグループでは、新たなビジネスにつながるようなアイデアも出てきた。
こういった、異業種の人達が集まって課題を解決して未来を作っていこうという目的で、フューチャーセンターというコミュニティが最近活動を始めている。複雑な問題を解決していくにはいろんな業種が知恵を出し合うことが必要だ。今後はこのフューチャーセンターが脚光を浴びるようになることだろう。
■セミナーで思ったこと
セミナーに集まった人たちは重機メーカーの人でも警備会社の人でもない。でもその役になりきっただけで特化した意見が出てきた。本物だったら、もっと意見と結論が偏るんだろうな。
いろんな立場の人の意見を聞くことは重要だ。
このショベルカーの対策は、実はコマツが何年も前に対策したこと。谷島氏が書いた本にも事例として載っている。コマツはGPSを使ったKOMTRAXというシステムを全車に標準装備し、稼働状況から建設業界の景気まで予測できるようにした。このシステムはユーザー主体開発で行ったという。コマツってなかなかやるなぁ。
ロールプレイングには講師の谷島氏も参加した。ITベンダの役をやった谷島氏は、「ITベンダ役が提案できることって意外と少ない。話し合いに加わる意見をなかなか出せなかった。」と気付いたという。このセミナーで一番勉強になったのは、実は講師の谷島氏自身だったのかもしれない!
こんな感じの楽しいセミナー。あなたも参加してみては!
abekkanでした。