新世紀純愛伝説 リツコ ―Part3―
■戦慄の翌日
昨日はどれだけ泣いただろうか。しょぼつく目をこすりながらいつものように出勤する。通勤電車の中で、やるせなさは怒りへと変わった。
「須田さん、なんで私のことを置いて先に帰ってしまったの!」
あんなに忙しそうにしてたのに、定時にさっさと帰ってしまうのを見て、おかしいと思った。こういうことだったんだ……。
いつものようにミーティングを終えて席につく。一呼吸して律子は言葉を切り出した。
「須田さん、昨日、ウイルスのログあがってましたよ」
「あっそう。」
……何かがプチッと切れるのを感じた。
「昨日、私がどれだけ大変だったか……」
と言いかけた時、須田からの意外なカウンターが来た。
「お前プロだろ? 苦労したぐらいでうだうだ言うな。」
■逆転敗訴
律子は一瞬、頭が真っ白になった。須田がしたり顔だったのを覚えている。ケンカというのは、先に泣いてしまった方が負けなのだろうか? 何を言ってもただ、淡々と返されるだけだった。私は何か悪い事をしたのだろうか。ただ、「悪かった」の一言が欲しかっただけなのに……。
結局、エロスの件も逆に“対応が悪い”というクレームとなって律子が責められることになってしまった。逆に、須田が適当に詫びを入れたことで、”しっかりした上司”という評判を得たようだ。
それ以来というもの、須田とはギスギスと関係が錆び付いていくようだった。須田は仮にも上司だ。よほど心象がわるかったのか、私に回ってくるはずの仕事がなぜか回って来なくなった。代わりに、須田の評価は上がっていく。
世の中とは理不尽なものだ。正直な者より、嘘のうまい人の方がなぜか出世する。確かに須田はがんばってはいる。しかし、技術者として技を磨くといった感じではない。人間関係というはしごを、うまく登っているだけのようにしか見えなかった。
ただ、失意に明け暮れる。そんな日々を過ごしながら月日は流れた……。
→続く