いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

新世紀純愛伝説 リツコ ―Part1―

»

■光と影。例えるならそんな2人

 彼女の名前は律子。波部 律子(わたべ りつこ)。某、中堅のレンタル業者でヘルプデスクをしている。漢字を当て字読みすると、「はぶりつこ」 →「Public」と読める。「プログラミングで使う言葉にそういうのあるよね」と開発部の悪友から指摘されて以来、開発部の人からはPublicと呼ばれるようになった。

 それはたぶん、彼女がかわいらしくプンプン怒る顔を見たくて言っていたのだろう。また、誰にでも分け隔てなくよく笑うのが何となくPublicな雰囲気だったのかもしれない。

 そして彼女には上司がいた。須田 定久。読み方は「すだ ただひさ」。彼女とは真逆な感じの性格だ。どこか小難しく、自分を通そうと躍起になりやすい。律子が人から好まれるのとは対象に、彼はどちらかといえば孤立しやすかった。しかし、持ち前のスキルでそれなりの信頼を築き、会社での居心地はそれなりに良かったようだ。

■きっかけはデートの約束

 律子は浮き足立っていた。今日はデートだ。恋人の名前は亜沼飛久(あぬま とびひさ)。クールで、そして漂わす雰囲気が何となく神秘的で、エジプトの神話にでも出てきそうな感じの人だ。大阪に住んでいて、3カ月に一度しか会えない。

 午後5時半。もう、仕事どころではない。律子は早々に仕事を済ませ、後は問い合わせがないのを祈るのみだった。そんな彼女を横目に、須田はいい気分ではなかった。露骨にイライラしながら、新人研修用のドキュメントを作成していた。

 そして、午後5時50分。電話が鳴った。

 2人が目を合わせると、須田は目を細めてあごをクイっとだす。無言で「忙しいからお前出ろ」そういうことのようだ。率直、そんなに忙しいように見えない。律子は渋々電話に出た。

 「あのー、ネットに繋がらないんですけど……」

 平凡な問い合わせのはずだった。しかし、これが律子がこの会社での立場を大きく揺るがす事件へと発展していくのだった……。

 ⇒続く

Comment(0)