常駐先で、ORACLEデータベースの管理やってます。ORACLE Platinum10g、データベーススペシャリスト保有してます。データベースの話をメインにしたいです

【小説 パパはゲームプログラマー】第十七話 魔法使いの国4

»

 目の前の少女、ハヤカワ・サオリはニホンのシブヤというところから転生して来たらしい。
 元の世界に戻れないと悟ると、泣きじゃくった。

「なら、慶太君をここに召喚して!」

 ジェニ姫にすがりついた。

「ごめんなさい。私達の都合で召喚してしまって」

 ジェニ姫はサオリの頭を撫でた。

「ジェニ姫、サオリさん、こうなったら召喚魔法使いを探しましょう!」

 僕らはギルドに向かった。

「うわー、凄い! 本当に武器屋とかある! あ、あれ兵士? 槍、太っ! すごい! モンスターは? モンスター見たい!」

 当初、彼女はこの世界の有様に驚き怯えていたが、時間が経つにつれ適応し始めていた。
 一緒に街を歩きながら、彼女は色んなものに興味を示していた。

「私、本当に、異世界に転生したんだね!」

 そう言いうと、街の人に話し掛け始めた。

「おっ! 毎回違うセリフを言うわ! NPCじゃない。......ってことはゲームの世界でもないってことね!」

 ジェニ姫も僕も彼女のテンションの変わりように呆れていた。

「あの娘、さっきから何言ってるの? NPCとか異世界とか」
「分かんないです。けど、立ち直ったみたいでいいじゃないですか」
「ねー、ねー。私、早くギルドに行きたい!」

 サオリは僕の袖を掴むと、思いっきり引っ張った。

「わー! すげー! 魔法使いとか戦士がいっぱいいる! ラノベで読んだのと同じだぁ!」

 サオリは目を輝かせた。
 どうやら彼女は、転生前の世界においてラノベという読みものを通して、こういう世界に憧れを抱いていたらしい。
 
「ねー、ねー、召喚魔法使いさんいませんかー?」

 サオリは大声で叫ぶ。
 当初の目的は忘れていないようだ。
 だが、このギルドに望む人材はいなかった。

 僕らは途方に暮れ、校舎に戻った。
 校舎は僕とジェニ姫の宿代わりだった。
 そこにサオリも泊まってもらう。

「ちょっと水浴びしてくるよ」

 二人を残して、僕は近所の湖に向かった。

「う~、冷たっ!」

 暑いこの国で冷え冷えの湖は、気持ちいい。
 一日の疲れが取れる。

「それにしても......」

 僕は自分の左胸を見た。
 朱色の二桁の数字が刺青の様に刻まれている。

『25』

 僕の命は残り25日。
 それまでにルビーに魔法を解いてもらわなければ。

「こんなの私が解いてあげるわよ」

 ジェニ姫が嬉しいことを言ってくれた。
 だけど、彼女の魔法でも解くことは出来なかった。

「かなり強力な魔法が掛けられてるわ。ルビーの実力がこれほどまでとは思わなかった。敵ながらあっぱれね」

 ジェニ姫は匙を投げた。
 僕は途方に暮れた。

 校舎に戻ると、暗がりから光る6つの目玉が僕を見据えた。

「うわあああ!」

 僕は後ろに飛びのき、尻餅をつく。

「あははは! 驚いた!」

 ろうそくの火がともり、ジェニ姫とサオリ、そして化け物の姿が映し出される。
 化け物は三つの首を持つ犬だ。

 ケルベロス?

 僕は一瞬そう思った。

 だけど小型だし、クゥーンと可愛い鳴き声を上げている。
 三つの顔も良く見ると、小ぶりな柴犬といった感じでとても可愛らしい。

「こ、これは......」

 驚く僕に、ジェニ姫がこう言った。

「凄いでしょ。彼女、召喚魔法が使えるみたいよ。素質もありそう」

 子ケルベロスが、サオリになついている。

 子ケルベロスを抱っこしながらサオリがこう言った。

「見て、見て。私が召喚したんだよ。これ」

 三つある頭の一つがサオリの腕を甘噛み している。
 残りの二つはジャレてるのかケンカしてるのか、噛みつき合っている。

「凄いですね」
「でしょ? 異世界転生したからにはきっと何か特殊能力が身についてるとか、ステータスがカンストしてるかと思ってたんだ。だけど、まさか召喚スキルとはね! 何? 私、ヒロイン決定? このまま仲間達、見つけてパーティ組んで魔王討伐とか!?」

 僕は彼女の言っていることの半分も理解出来なかった。
 だけど、彼女が召喚スキルを喜んでいることだけは良く分かった。

「彼女、やる気満々よ! ケイタを召喚するんだってね」
「なるほど」

 サオリには恋人がいた。
 この世界に転生する前の世界でのことだ。
 召喚スキルに目覚めたサオリが、ケイタを召喚したいのは、必然のことだろうな。

「降臨《サモン》! 降臨《サモン》! あれ?」

 出てくるものは樽とか、酷い時はカビパンだったりした。

「え~? なんで? 慶太君をイメージしてるんだけどなあ」
「あのね、召喚魔法は大量のMPを使うのよ。言い方を変えると、あなたはスキルはあるけど、それを使うためのエネルギーが足りないの。だから望むものを召喚出来ないのよ。私達と修行して、そのエネルギーを増やしましょう」

 ジェニ姫が落胆するサオリを慰めた。

「分かりました! 先生! 修行ってなんだか、ますます異世界転生っぽくなって来ました!」

 サオリも魔法学校に入校した。

 次の日。
 ギルドに向かう。
 ギルドマスターが持っていた自家製の能力測定器(サチエの発明した機器だ。彼女の作った設計書が全世界に広まっているらしい。サチエ、凄い!)で、サオリの召喚魔法使いとしての能力を測った。

  サオリ(16歳)

  Lv.10
  スキル :召喚魔法(初級)
  攻撃力 : 1
  防御力 : 5
  HP : 30
  MP : 530
  素早さ :104
  知力 : 88
  運 : 263

「わー、これが私のステータス! まじ、ゲームみたい!」

 サオリが空中に浮かぶ文字を見て、はしゃぐ。

 その日から、特訓の日々が始まった。
 ジェニ姫は手を抜かなかった。

『魔法属性学』では、魔法の成り立ちと属性間の融合を徹底的に叩きこんだ。
『ディオ王国歴史学』では、エスターク一族の栄華と繁栄を語った。
『魔法機械学』では、魔法を帯びた機器の作り方と使い方を教え込んだ。
『魔法薬学』では、魔法と薬草の関係を教え、回復アイテムを作ることを実践させた。
『魔法武器学』では、魔法を帯びた武器の作り方と、魔法剣士とのコミュニケーションの取り方を教えた。

「もう、むりー!」
「まだまだ!」

 サオリは何度も弱音を吐いたが、ジェニ姫は攻めの手を緩めなかった。
 泣きながらもサオリはそれに応える。
 攻撃魔法、治癒魔法を基礎に、彼女の秘めたる召喚魔法スキルが開花して行く。

 全てはケイタと再会するために、か。

 校庭の魔法陣の前に立つ、サオリ。
 いつの間にか観客が集まり、彼女を中心に円が出来ていた。

「降臨《サモン》!」

 サオリが唱和すると、魔法陣から光が立ち昇る。
 光の中から現れたのは、身長10メートルはあろうかと思われる土の巨人、ゴーレム。

「おお!」
「凄い!」

 ゴーレムは観客達を睥睨した。

「グオオオ!」

 ゴーレムが暴れだそうとする。

「わー!」
「きゃー!」

 観客達が逃げ惑う。

「おやめなさい!」

 暴れだそうとするゴーレムを、サオリが一喝する。
 途端にゴーレムは大人しくなった。
 サオリの元にスゴスゴと近づき、ひざまずいた。

「う~ん。素晴らしいわ」

 その様子にジェニ姫が感心する。

「召喚自体は、素質のある魔法使いなら修業を積めば出来るようになる。だけど、手なずけるのは才能が無いと中々出来ないのよね」
「そうなんですか」

 僕もサオリの成長ぶりに驚いた。
 彼女は入校してから一週間で、強力なモンスターを召喚出来るレベルに達していた。

「お代、いただきます!」

 僕は観客達に声を掛けて回った。
 一日一回、サオリの上達ぶりを確認するために召喚魔法を唱えさせている。
 モンスターが召喚される様は、イリュージョンショーの様で見栄えがいい。
 それにサオリはめちゃ可愛いので、まるでアイドルのライブみたいだ。
 いつしか僕は、街の人に有料でそれを観てもらうことにした。
 握手会付きで。
 評判は上々で、口コミで毎回1000人は来るようになった。
 儲けた金は、学校の運営に回している。
 そして、サオリの魔法を見て、魔法使いに憧れる子供が多数入校して来る。
 多額の学費も入ってくるようになった。
 全てが順風満帆だった。
 だが、

「でも、本当に会いたい人は中々召喚出来ない......」

 サオリ本人は悩んでいた。
 いくら魔法が上達しても、愛する人と出会えないということに。

「大丈夫よ。これだけ強力なモンスターを召喚出来るんだもの。近いうちに恋人を呼び出せるわ」
「はぁ......」

 ジェニ姫に慰められても、サオリの顔は曇っていた。

「グオオッゴゴゴ!」
「クゥンクゥン!」

 サオリが呼び出したモンスター達が、彼女を慰める。
 子ケルベロスにゴーレム、キメラにミノタウロス。
 トロルにドラゴン......。

「正直、これだけ揃ったらこの世界の力関係が崩れそうだ......」

 僕はそうそうたる面子を見て、そう呟いた。

「それにしても、思った通りのものを召喚するって難しいんですね」
「うん。召喚魔法を極めるって言うのは、思ったものを百発百中で召喚出来るっていうことなの。サオリはまだ極めるところまで行ってないわ」

  サオリ(16歳)

  Lv.9500
  スキル :召喚魔法(上級)
  攻撃力 : 10
  防御力 : 15
  HP : 531
  MP : 9300
  素早さ :3001
  知力 : 2858
  運 : 1591

 あと少しか。
 僕は彼女のステータスを見てそう思った。

 そして、月日は流れた。
 僕の右胸に刻まれた命のタイマー。
 それが、遂に『1』になった。

つづく

Comment(4)

コメント

桜子さんが一番

胸のタイマー怖いすね。

VBA使い

「暑」いこの国で冷え冷えの湖は


回復アイテム「を」作ることを


なんか、タケルやコブチャの時と違って、慶太シリーズ並みに複雑な展開…これも湯二さんらしいですね。

湯二

桜子さんが一番さん。


>胸のタイマー
お風呂で時間が知りたいときに欲しいね。

湯二

VBA使いさん。


校正、コメントありがとうございます。


行き当たりばったりで、複雑になって来てるってのもあります。。。


コメントを投稿する