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【小説 パパはゲームプログラマー】第十五話 魔法使いの国2

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 石畳の広間の中心には魔法陣。
 その魔法陣の中央に、ロープで縛られた男が寝かされる。

カツカツ。

 奥の暗がりから、ヒールの鳴る音。
 音の主は、黒いローブに赤髪の女。
 タキシードの男と、兵士を伴っている。
 女がその男を見下ろし、こう言う。

「珍しいな。抵抗しない者がいるとは」

 今、僕の目の前にいるのは、かつて共に戦った仲間(恐らく僕だけがそう思っている)、『火』属性の魔法使いルビー。

「へへへ。噂には聞いてました。あなたは何者かを召喚するために、無実の罪の人間をこうして生贄にしているのでしょ」

 魔法陣の上に寝かされている男がルビーに問い掛ける。

「ふむ」
「どうせなら、天国にでも転生させてください。俺はこの世界にはうんざりなんだ」

 男は哀願口調でそう言う。
 さっき牢獄で一緒になった男。
 この男の言っていることが真実なら、次は僕が同じ目に合うはずだ。

「お前の望み通りの場所に転生させてやりたいが、私の召喚魔法はまだまだなのだ。もしかしたら地獄に転生するかもしれぬぞ」

 ルビーは自嘲するように笑った。
 男の顔色が変わる。

「ま、待ってくれ......」
「降臨《サモン》」

 男が暴れるのを無視して、ルビーは詠唱した。
 魔法陣の中心から光の柱が立ち昇り、男を白い光が包む。
 光の中から、

「ゲコゲコ」

 ルビーは舌打ちした。
 ガマガエルはピョコピョコとはね、ルビーの横を素通りして行った。

「次!」

 ルビーが声を荒げる。
 兵士が僕の腕を掴んで、魔法陣まで引きずって行く。

 まずいなあ。
 復讐したい相手ともうご対面とは。
 いつものパターンだと、商売に成功して仲間を集めて反乱するってパターンなのに......
 今の丸腰の僕じゃ勝てないよ。
 コブチャの仲間に、顔を変えられるスキルを持つ奴がいたな。
 そいつ、殺さずに仲間にしとけば良かったなあ。
 とか思ってた矢先、ルビーと目が合う。

「寝かせろ」

 あれ?
 ルビー、君は僕のことを覚えていないのかい?
 薄暗い部屋だからってのもあるが、同じ釜の飯を食った仲じゃないか。
 彼女にとって僕は眼中に無かったってわけか。
 機嫌が悪い時、散々僕の服に火を点けてくれたくせに。

「さてと......」

 ルビーが詠唱しようと口を開き掛けた時、

「待ってください! 僕は魔法学校を開こうと思ってます!」

 突拍子もない僕の発言に、ルビーは目が点になる。
 さっき転生させられた男が牢獄で教えてくれた。
 ルビーは召喚魔法が下手だから、沢山の人を犠牲にして来たと。
 ルビーはそんな自分に腹が立って、不機嫌だからこの国がずっと暑いままだということ。

「その学校は一流の召喚魔法使いを育成することが目的です。きっと、ルビー様が望む人を召喚出来る者を提供して見せます!」

 ルビーの目が光った。
 牢獄でずっと考えてた僕のアイディアが、彼女に響いたみたいだ。

「ルビー様」

 執事と思われるタキシードのイケメンが、ルビーに話し掛ける。

「この男の話が本当なら、任せてみるのも有りかと」
「トールス......」

 トールスと呼ばれた男は、控えめだがしっかりとした口調だった。
 冷静に物事を判断し提案しているようだ。

「分かった」

 ルビーは僕に向き直り、こう言った。

「一ヶ月以内に、最上級の召喚魔法使いを連れて来い!」

 僕はルビーの城から釈放された。
 フラフラと街へ行く。
 召喚魔法使いを早く見つけなければ......見つからなければ、僕の命が無い。

トクン、トクン......

 心臓が高鳴る。
 僕は自分の左胸に手を当てた。
 熱い。
 シャツをはだけさせ、目で確認する。
 左胸には赤い文字で30と刻まれていた。

「一ヶ月以内に、最上級の召喚魔法使いを連れて来い」

 ルビーにそう命じられた僕は、約束を守る様にと魔法を掛けられた。

「時限発火《タイムドファイヤ》」

 その魔法のせいで、僕は一ヶ月(30日)しか生きられなくなった。
 この30という文字は日にちを表している。
 これが、日を追うごとに減って行く。
 そして、最後の日に僕は発火する。
 紅蓮の炎に身を包まれ、死んでしまう。

「まずは、召喚魔法使いを探すか」

 落ち込んでいても仕方がない。
 兎に角、動くのみだ。
 約束を果たせば、ルビーは魔法を解いてくれる。
 そして、僕は魔法が解かれた瞬間、ルビーを殺す。
 そのために、召喚魔法使いを見つけるのと、復讐のために仲間を集めるのを同時進行で行わなきゃ。

「ギルドに行って見るか」

 学校を作るのは最後の手段だ。
 まずは、手っ取り早く召喚魔法使いを見つけよう。
 酒場兼ギルドは、冒険者で賑わっていた。

「召喚魔法使いは登録していますか?」

 僕はギルドマスターに問い掛けた。

「あなたどこの人? 冒険者を募るなら他のギルドの紹介状を見せて」

 若い女のギルドマスターはそう言った。

「サチエさんの紹介状があります」
「サチエね。OK]

 サチエさんはギルド界では有名人らしく、色んなギルドで名前が通っている。

「残念ながら、召喚魔法使いはこのギルドにいないわ」

 キクヨというギルドマスターは名簿を見ながらそう言った。

「他のギルドに行けばいますか?」
「う~ん。召喚魔法使いは希少価値が高いからね。例えば、魔法使い一万人に一人いるかどうかの存在よ」
「そうなんですね」
「時空と空間を操る魔法だもの。選ばれた者しかなれないから」

 確かに。
 皆が好き勝手、異世界から色んなものを召喚出来てしまったら世界は破綻する。
 まさに神に選ばれた者だけがなれるのだ。

「チピピピ」

 僕の肩に鳥が乗っかった。

「ササミ!」

 先代の王、ディオのペットだ。
 久々の再会。

「ディオ王様はスライム島で元気にしてるかい?」
「ピチュ」
「何て言ってるか分からないや」

 ササミはディオ王とだけ話すことが出来る。
 ササミは片足を上げて見せた。

「お」

 手紙が結ばれている。
 僕はそれをほどき、広げた。

「ケンタへ

 元気か?
 まあ、お前の様子はササミがいつも見ている。
 と言っても、ササミにも入れる場所と入れない場所があるから、断片的に、だが。

 わしは元気にしておる。
 ルキも元気にしておる。
 東の国の統治者がカズシになってから、スライム島も少し雰囲気が変わった。
 カズシはノルマを緩くしてくれたし、食事も多少良くしてくれた。
 週休二日にしてくれたし。
 労働組合の結成も認めてくれた。
 ケンタ、お前のお陰じゃ。

 ところで、
 お前、西の国にいるそうじゃな。
 実はそこにわしの娘ジェニがいる。
 なんでいるかは直接、ジェニに訊いてくれ。
 あいつは、ギルドにいる。
 お前の力になってくれるはずじゃ。」

「あなたが父上の言ってたケンタね」

 先代の王様の娘、ジェニ・アフォン・エスタークが目の前にいる。
 腰まである白銀の髪。
 白い面《おもて》の中央には真っすぐ通った鼻梁。
 大きなサファイアブルーの瞳。
 白いローブに身を包んだ高貴な姫君。

「お久しぶりです」

 久々に見たその姿に、僕は驚いた。
 最後に見た時より美しくなっている。
 あの時は確か、魔王討伐した日に城で行われた祝賀会だった。
 一瞬だけ見掛けた彼女の姿はまだ幼かった。
 僕と同じように彼女の手には手紙が握られていた。

「グランに復讐するんでしょ?」
「ひ、姫!」

 僕は思わず、ジェニ姫の手を掴んでギルドの隅の席に連れて行った。
 そんな僕らを気にすることも無く、ギルドは冒険者達の宴会で盛り上がっていた。
 良かった。
 どうやら気付いた者はいないようだ。

「親衛隊や兵士が聞いているかもしれません。気を付けてください」

 突然、ピキピキとテーブルに薄氷がはられた。
 テーブルに乗せられたジェニ姫の手から冷気が漂っている。
 彼女は『水』属性の魔法使い。
 大気中に漂う水分子を自由に操る。

「ふん! 攻撃して来たら返り討ちにするだけよ!」

 相変わらず気が強いなあ。
 祝賀会でも、欲しかったケーキを先に食べられて激怒していた。
 僕はジェニ姫に話した。
 復讐に至るまでの経緯を。

「ジェニ姫はどうして、ここに?」

 何故、彼女がこんなところにいるのか?
 彼女は確か、グランの元に嫁いだのでは?
 否、嫁がされたと言った方が正確か。

「そりゃ、お父様の言いなりになるのは嫌だったけど......。グランはカッコ良かったからね」
「結婚したんですよね」

 先代のディオ王は魔王討伐パーティのリーダー、勇者グランと約束していた。
 魔王を倒したら、王位を譲り、娘ジェニを与えると。

「破棄されたわ」
「え?」
「婚約破棄されたの」

 なるほど。
 そして、ここに......。
 ......って、話がだいぶ飛んでる気がする。

「破棄されたから、王国からも追放されたってことですか?」
「ぶん殴ってやったわ」
「え?」
「プライドを傷付けられたから、グランの頬を殴ってやったの。そしたら追放された」

 ジェニ姫は悔しそうに拳を握り締めた。
 拳に霜が降りたかと思うと、カチカチの氷になった。
 暑いこの国だと、この冷気は心地いい。
 とか、思ってる場合じゃない。

「だから復讐するために旅してるの!」

 僕と動機は違うが、彼女も同じ目的を持った仲間だ。

「それにしても、あなたほどの美しい方でも振られるんですね」
「ふん。あの男は国中の女を引っ張って来ては、もてあそんでるのよ。ほんと、病気よ。でも、私が振られる直接原因になったあの女。あいつだけは、私も認めるわ。めっちゃ綺麗だった」

 僕は何か嫌な予感がしたんだ。

「それは......」
「確か、シスター・マリナとかいったわね。今どうなってるんだか。彼女はグランのお気に入りだからね」

つづく

Comment(4)

コメント

VBA使い

ロー「プ」で縛られた男が寝かされる。


散々僕の服に火を「着」けてくれたくせに。
→「点」の方がしっくりきます。


「暑」いこの国だと


ジェニにタイムドファイヤを解除してもらったらいいのに。

桜子さんが一番

なんだろうw。女性が多く登場すると湯二さんらしい雰囲気がでるんですがw

湯二

VBA使いさん


コメント、校正ありがとうございます。


>ジェニにタイムドファイヤを解除してもらったらいいのに。
改めて読み返してみると、魔法とかの名前が中学生のノートに書いてある小説みたいで、これはこれでなかなか耳が赤くなります。

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。


らしいって言われると、書いてて嬉しいですね。

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