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【小説 パパはゲームプログラマー】第五話 プロローグ5

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 僕は街に出て物件探しを始めた。
 タピオカミルクティー屋にピッタリの店探しだ。
 街は賑やかで沢山の商店が軒を連ねている。

「おや?」

 それまで気付かなかったけど、街のいたるところに見覚えのある顔がある。
 その顔は店の看板に目印の様に描かれていたり、
 壁に絵として描かれていたり、
 銅像もある。

『タケル』

 そうだ。
 これ、僕をイジメてた戦士タケルの顔だ。
 そうか、ここはタケルが治めている国なんだな。
 ......ってことは、ここは東の国か。

「この人はここの統治者です」

 街の人Aに訊くとそんな答えが返って来た。
 なるほど、力馬鹿のタケルらしいや。
 自分の存在をアピールするために街中に自分の顔を掲げるとはね。
 彼のイカツイ顔に睨まれると国民も怖くて彼に従うだろう。

「おっ」

 丁度いい場所発見!
 そこは空き家になっていて、畳3畳ほどの広さだった。
 タピオカミルクティー屋に大きな店舗はいらない。
 だって、特別な機材もいらないし、作るのも簡単だからスタッフもいらない。
 タピオカとミルクティーが置けて、僕が立って売る場所さえあればいい。
 
『この場所を借りたい人は、ギルドに来い。 サチエ』

 サチエって人がこの場所の管理人かなあ。
 とりあえず、この街のギルドに行って見よう。
 どんな冒険者がいるのか見てみたいしね。

 ギルドに着いた。

「いらっしゃい!」

 受付のお姉さんが僕を出迎えてくれた。
 中は酒場っぽい。
 そこで何人かの冒険者たちが、飲み物片手に情報交換してるって感じ。

「サチエさんっていますか?」
「私ですよ」
「あっ、そうでしたか」

 受付のお姉さんがサチエさんでしたか。

「あっ、早速なんですが......街にあった空き店舗を僕に譲ってくれませんか?」
「ああ、あそこですね。いいですよ。家賃は月1万エン。敷金礼金は10万エンです」

 あっ、お金が足りないや。
 『スライムの欠片』は売りたくないしなあ。

「僕の商売は絶対成功するので、敷金礼金は後払いでいいですか? その代わり20万エン払いますから」
「え?」

 やっぱダメかなあ。
 ええい、先手必勝だ!

「ちょっと、待っててください!」

 数分後、僕はダッシュでギルドに戻って来た。

「これ、飲んでみてください」

 サチエが恐る恐るタピオカミルクティーに口を付けた。

「う、うまい!」
「でしょ?」

 僕はサチエに商売のことを説明した。

「面白そうね」
「でしょ?」
「でも、人に沢山売るってことは沢山タピオカがいるってことでしょ? それ、君一人でどうやって仕入れるの?」
「あっ......」

 僕一人じゃ大量生産、出来ない。
 そうだ、誰か雇おう!

「すいませーん! 僕のためにタピオカ集めて来てくれる人いませんかー!」

 僕は昔は恥ずかしがり屋だったけど、今は違う。
 復讐のために積極的に頑張るんだ。
 何人かの冒険者が僕の方を見た。

「ちょっと、あなた。勝手にここで仕事の依頼をしないで」
「あ、すいません」
「ここで冒険者に仕事を依頼するなら、私を通しなさい」
「はい」

 サチエの話によると、タケルが治める東の国にはギルドが10個ほどあるらしい。
 ギルドに冒険者登録した者に仕事を依頼したい場合、ギルド管理者(このギルドではサチエ)に許可を受けなければならない。

 ・仕事内容:タピオカ集め
 ・報酬:5万エン
 ・期限:明日中

 僕は申請書にそう書いて、サチエに提出した。

「じゃ、手数料5000エンいただきます」
「え? お金取るんですか?」
「あたりまえでしょ。こっちだって冒険者の手配とか広告代が掛かるんだから」
「そうですか......」

 僕が渋々、金を出そうとすると

「ま、いいわ。さっきタピオカミルクティーごちそうになったし」

 そして、程なくして候補者が見つかった。

 カズシ(18歳)

  Lv.19
  スキル :魔法剣技(中級)
  攻撃力 : 100
  防御力 : 100
  HP : 150
  MP : 30
  素早さ :70
  知力 : 50
  運 : 45

「うん、なかなかいいと思うわよ」

 サチエは自家製の能力測定器で、そのカズシという男の魔法剣士の能力を測った。
 彼は僕の『タピオカ仕事』に手を上げてくれた。

「じゃ、カズシさん。お願いします」
「おうよ」

 細身だけど鎧の下は細マッチョって感じだ。
 そして、クールな感じだ。
 顔は僕の方がちょっとカッコいいかな。
 でも、ステータスは僕より優れてる。

「じゃ、行ってくるぜ」
「明日中にお願いします」

 そして翌日の朝。
 僕がギルドに行くと、もうカズシが来ていた。

「ほらよ」
「おおっ!」

 机の上に、袋に入った5kgくらいのタピオカが置かれている。

「ありがとうございます! でもこんなにいっぱいどうやって?」
「そんなことどうでもいいだろ。ところで、それ何に使うんだ?」
「タピオカミルクティーを作るんです!」
「何だそれ? 美味いのか?」
「はい。飲んでみますか!?」
「いらん」

 不愛想だけど、頼りになるな。
 この人を雇いたいなあ。

「あの......カズシさん。僕と一緒に冒険しませんか?」
「お前、何がしたいんだよ。商売するんじゃなかったのか?」
「そうですね」

 カズシさんは用があると言って、去って行った。

 僕のタピオカミルクティーは飛ぶように売れた。
 特に若い女の子に。
 友達とお話しする時に、これを買うらしい。
 一杯50エンで売っている。
 原価が30エンだから一杯20エンの儲けだ。
 皆、大切なお小遣いから買ってくれてありがとう。

「キャー!」

 タピオカが地面に転がる。
 ミルクティーが地面に吸い込まれる。
 さっき買ってくれた女の子が地面に引き倒される。

 親衛隊だ。

 3人いる。
 憎きあいつらが僕のお客さんを蹴散らしながらやってくる。

「貴様か! ここで許可なく商売をしているという者は!」

 一番偉そうな奴が僕を怒鳴りつける。
 僕は質問に応えず睨みつけた。

「なんだ、その態度は!?」
「僕はちゃんとここで家賃を払って商売してるんだ! 何であなたたちの許可がいるんだ!」
「この土地はタケル様が治める国であり、グラン王国の一部なのだ。だから場所代をおさめよ!」
「......っく」

 僕は憎きタケルやグランに金を払いたくない。

「払わなければ、分かってるな」

 親衛隊が腰に差した剣を抜いた。
 殺される......。
 僕の脳裏に牧師様の首の無い死体がフラッシュバックする。

「......分かりました......」

 ここは耐えよう。
 だけど、涙が止まらなかった。
 力が無いばっかりに、こんな奴らに従わなければならないなんて。

「いくら払えばよいのですか?」
「50万エンだ」
「えっ......そんなにありませんよ!」
「嘘を付け! お前が不正に稼いでいるという通報があったんだ!」

 親衛隊が黒い軍靴をカツカツ言わせながら店に殴り込む。
 やめろ!
 やめてくれ!

「お前ら! やめないか!」

 聞き覚えのある声がする。
 振り返ると、そこには剣を手にしたカズシがいた。

「電光石火《でんこうせっか》!」

 カズシの剣の先から雷《イカズチ》がほとばしった。

ガカアアァ!

 親衛隊の足元に黄色い衝撃が落ちる。
 地面が砕け散って岩が周囲に飛び散った。
 僕はその様子をハラハラしながら見ていた。
 だって、あの恐ろしいグラン王国親衛隊に歯向かっているのだから。
 それにしても、クールな表情で戦うカズシはカッコいいなあ。

「てめえ!」

 親衛隊の中でも一番弱そうな奴(Aと呼ぼう)が、カズシに切りかかる。
 それをカズシはヒラリとかわした。
 行き場を無くしたAはゴミ箱に突っ込んだ。

「てっ......てめえ......!」

 ゴミ箱から出て来たAの頭にはバナナの皮が乗っかていた。

「あはは」

 僕は思わず笑ってしまった。

「貴様!」

 笑われたのがイラっと来たのか、カズシではなく僕の方に向かって来た。
 やべ。
 カズシがいたから油断してたよ。

キィン!

 だけど、カズシが僕の前に立ち塞がってくれた。
 剣で相手の攻撃を受け止めている。
 お陰で僕は攻撃を受けずに済んだ。

「うおおおお!」

 Aが怒りに任せて剣を振り回す。
 何か、無様だなあ。

「やめろ!」

 親衛隊の中でも偉そうな奴(Bと呼ぼう)が、Aに声を掛ける。
 Aはその場でピタリと止まった。

「よく見ると、カズシぼっちゃんじゃないですか」

 Bはカズシを上から下まで見た。
 なんだ?
 知り合いなのか?
 Bはからかうように、こう言った。

「平民の味方してると、叔父上であるタケル様に怒られますぞ」
「うるさいな。俺は弱い者いじめが大嫌いなんだ」
「綺麗ごとを言うな。あなたがそうやって自由に暮らせるのもタケル様の親族だからなのだぞ」

 Bはカズシの肩を叩いた。
 親衛隊は去って行った。

「カズシさん......」
「聞いただろう。俺はお前たち平民の敵なんだ」

 僕は最初は複雑な気持ちだった。
 カズシが憎きタケルの身内なんだから。
 だけど、彼の態度を見ていると僕は気持ちが変わった。
 それに彼は僕を助けてくれたしね。

「カズシさん、僕が何で商売をしているか話してもいいですか?」
「おお......」
「その前に、タピオカミルクティーどうですか?」
「おう」

 僕らは店先のベンチに腰掛けて話した。
 僕が商売をして金をためている理由。
 カズシは黙って聞いていた。

「ケンタ。お前は俺の叔父に復讐したいわけだな」
「はい。すいません」
「謝らなくていいよ。あいつはお前に、それだけのことをしたんだからな」

 カズシが笑ってくれた。
 僕も笑った。

「俺のことも話していいか?」
「はい」

 弱い者いじめをする親衛隊や父親、タケルに反抗して城を飛び出したこと。
 自分で生きるためにギルドに登録して生活費を稼いでること。
 などなど。

「お前のタピオカミルクティー、美味いな」
「ありがとう」

つづく

Comment(4)

コメント

桜子さんが一番

剣士カズシが仲間ですね。次回は桜子さん並の武闘家が仲間になるんでしょうか?

foo

> そこは空き家になっていて、畳3畳ほどの広さだった。

「畳3畳」なんて表現、ファンタジー世界にあるのか? ……とも一瞬思ったが、もしかしてこの世界の「七つの国」の中にも、中世時代の日本によく似た国があって、ケンタはグラン王との旅の中で、その国に立ち寄ったことがある、みたいな裏設定があったりするのだろうか。
すると、これからクラスが「侍」や「忍者」のキャラクターも出てきたり……?

# 一瞬ケンタがその「日本によく似た国」の出身者だからこんな表現を知っているのかとも思ったが、少なくとも現時点ではケンタの出身地がどこかは未確定だし、グラン王との旅で知ったと考える方が順当だろう……と推理してみる。

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。


>次回は桜子さん並の武闘家
好きですねぇ。。。^^
中盤くらいでそれっぽい人が加入する予定です。

湯二

fooさん。


コメントありがとうございます。


>「畳3畳」
坪で表現するのも変かなと思ったけど、畳ももっと変ですね。


>日本によく似た国
7大陸だから一応地球にも似てる・・・?
ファンタジー世界の構築って難しいですね。
通貨の単位とか、モノを測る単位から、街の作りと国の成り立ちまでしっかり考えないと、表現が、今の日本と、ファンタジーの世界でごっちゃになります。


>ケンタの出身地がどこかは未確定
一応、孤児なので本人もどこの出身か分かってません。

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