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【小説 パパはゲームプログラマー】第一話 プロローグ1

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 この世界には七つの国がある。
 その一つ、これはディオ王国を中心としたお話。

 ディオ王国にある日突然、現れた魔王ハーデン。
 魔王は沢山のモンスターを召喚し、王国を苦しめた。
 ディオ王は、国民を救うため王国の勇者達に呼び掛けた。

「魔王討伐を!」

 それから二年後。

 遂に魔王を倒した勇者パーティ。
 そのメンバー達。

 勇者
 戦士
 魔法使い
 僧侶
 武闘家
 賢者
 そして、雑用係

 ディオ王は喜び、約束通り彼らに自分の国を与えた。

「グラン王、即位おめでとうございます」

 僕はパーティのリーダーだった元勇者、今は王様になったグランに頭を下げた。

「おつかれ」

 グランは目礼した。
 僕の45度のお辞儀に比べたら軽いもんで、何かバカにされた気分だ。
 そう、僕はいつもバカにされていた。
 同じパーティのメンバーからいつも。
 だって、僕は特に何も能力がない雑用係だったのだから。

「下がってよし」
「はい」

 僕は王の間を去った。
 残ったパーティの元メンバー、戦士のタケル、魔法使いのルビー、僧侶のコブチャ、武闘家のソウニン、賢者のマリク。
 扉の向こうで彼ら、彼女らは一体何を話しているのだろう。
 僕は一人外に出されパーティの話し合いにも参加出来ない。
 魔王討伐の旅に出ていた時もそうだった。
 重要な話は僕のいないとこでいつも行われて、結果だけが簡単に伝えられる。

「何でそうなったの?」

 って、理由を訊いても皆、首を横に振って

「お前には教えられない。言われた通りやれっ」

 って言われる。
 だから、いつも言われたようにやってた。
 時には、おとりになってゴブリンの村に一人で突入した。
 あの時は、怖かったな。
 ヒノキの棒一本でゴブリンの群れの中で一人暴れまわった。
 突然の闖入者、まあ僕なんだけど、団欒中のゴブリン達も驚いたもんさ。
 その驚いて何も出来ない隙に他の仲間たちは好き放題。
 村を焼き討ちにして略奪し、ゴブリン達を縛り上げて中ボスの居場所なんかを問い詰めたりしてた。
 僕は彼らの本当の姿を見たような気がしたよ。
 で、他には......
 おっと、長くなるのでこの辺にしておくか。

ガチャ。

「おい」
「はい」

 戦士のタケルが扉から顔を出してる。
 相変わらずゴツイくてイカツイ顔だ。

「入れ」
「はい」

 僕は言われた通り王の間に入った。
 そこにはかつて一緒に戦ったメンバーが、グラン王を囲むように立っていた。

「雑用係、ケンタ」
「はい」
「お前、今日から平民」
「え?」

 僕はびっくりした。
 パーティの仲間として働いたんだから、僕にも然るべき地位が与えられると思ったからだ。
 それが、平民だなんて。
 『平民』その言葉に僕は耳を疑った。
 僕は雑用係とはいえ、パーティのメンバーとして皆をサポートしたつもりだ。
 そのお陰で魔王を討伐出来たんだ。
 そして、皆、今回のことでそれなりの地位を得た。
 同じ苦労をして来た仲間なのに......なんで僕だけが。

「あ、あの......」

 緊張でカラカラに乾いた口から、声をやっとこさ出す。

「何だよ?」
「僕......」
「お前をちゃんと評価した結果だよ! ありがたく受けろ!」
「はいっ」

 戦士タケルがイライラした様子で僕を怒鳴る。
 パーティのメンバーの中でも特に血の気が多い彼のことを、僕は苦手だったし怖かった。

「まあ、生活保護は出してやるから」

 グラン王は表情一つ変えずにそう言った。
 まるで氷のように冷たい。
 僕は彼の冷徹な性格を思い出した。
 許しを乞う魔王を、笑いながら輪切りにしていた。
 僕はこの人が王様になったとしたらどうなるか考えてしまった。
 この国は大丈夫なのかなあと思ったよ。
 どのみち、能力のない僕が声を上げても握りつぶされるだけだろう。
 そんな僕のステータスはこんな感じだ。

  Lv.13
  スキル :なし
  攻撃力 : 10
  防御力 :15
  HP : 50
  MP : 0
  素早さ :100
  知力 : 20
  運 : 0

 これは賢者マリクのスキル『能力監視《キャパシティーモニター》』で見てもらった結果だ。

 ちなみに、グラン王のステータスはこんな感じ。

  Lv.9999
  スキル :剣術(最上級)
       魔法(火、水、土、風属性)
       空間維持
       時空補正(2秒間)
       武器自動回復
       火竜化
       氷竜化
       召喚(オーディーン、カーバンクル、ゴブリン×100、シルフ、サキュバス、ゴーレム、オーガ)
  攻撃力 :9999
  防御力 :9999
  HP :9999
  MP :9999
  素早さ :9999
  知力 :9999
  運 :9999

 カンストってやつだ。
 グランは他の皆よりも成長力が高かった。
 何より沢山のモンスターを率先して狩っていたからね。
 経験値も十分得ていたはずだ。
 だけどこのステータスは異常だと思う。
 何か裏があるのかなあ。
 ま、ステータスだけを比較すると僕と同じ年齢とは思えないよ。
 そんな僕でも、素早さだけは多少あると自負している。
 逃げ足は速いよ。
 だからおとり役や使いっパシリを任された。
 何でこんな僕が勇者パーティに入れたかって?
 実は僕は孤児なんだ。
 今年で16歳。
 背は165センチ痩せ型。
 黒髪で顔は普通だと思う。
 孤児院のシスターが言うには僕は教会の前に捨てられていたらしい。
 シスターは雨に濡れている僕を抱きかかえてくれた。
 彼女が僕の育ての親になってくれた。
 僕より10歳年上の黒髪の美人で、僕は密かに彼女のことが好きだ。
 孤児院には僕みたいな子供が沢山いた。
 食べ物には不自由したけど、友達も出来たし楽しく生活していた。
 14歳のある日、国を挙げて魔王討伐が計画された。
 討伐のために沢山のパーティが編成された。
 孤児院の子供達は戦力としてパーティに引き抜かれていった。

「今こそお国のために働けってね」

 孤児院は税金で運営されていたから当然といえば当然の話さ。
 友達とは離れ離れになった。
 で、僕はグラン王のパーティに引き抜かれたんだ。

 グラン王も始めは優しかったんだけどね。
 冒険するにつれて仲間も増え、彼自身も強くなっていく。
 日が経つにつれて彼は変わっていったよ。
 残虐な行いが多くなっていった。
 パーティの皆を守るために非情な性格にならざるを得なかったのかなあ。
 だから魔王を倒したら元の優しい彼に戻るかと思ったけど、僕への対応を考えると元に戻らなかったみたいだ。

「では、失礼します」

 僕は一礼すると王の間を後にした。
 パーティの皆とこれでお別れだと思うとちょっと寂しかったけど少しホッとした。
 彼らといると緊張しっぱなしだからね。
 あのパーティでは僕が一番底辺にいたから。
 それに何より、シスターに会いたい。

「ケンタ!」

 シスター・マリナは二年間の旅から帰って来た僕を暖かい笑顔で迎えてくれた。

「マリナさん!」

 僕は彼女の手を取って泣いてしまった。
 そんな僕の頭を彼女は優しく撫でてくれた。
 赤ん坊の時みたいにね。
 そうなると、やっと生きて戻って来たんだなって実感が湧いたんだ。

「僕、今日から孤児院で働きます! 今までの恩返しがしたいんです!」

 マリナはただニコリと笑顔だけ返してくれた。
 思えばこれが初めて自分の人生で何かをやろうって決めた瞬間だったんだ。
 魔王が死んで世界は絶対平和になると思った。
 だから僕は孤児院でマリナと一緒にずっといようと思ったんだ。
 だけど、そうはいかなかったね。

 一年後。

 グラン王国は6つの国に分かれた。
 グラン王は魔王討伐のメンバーそれぞれに領土を与え統治させた。
 勇者グランの国を中心に大陸は以下の様に構成された。
 戦士タケルには東の国を。
 魔法使いルビーには西の国を。
 僧侶コブチャには南の国を。
 武闘家ソウニンには北の国を。
 賢者マリクだけは勇者グランの国の真ん中に作られた都市国家『ブーコック市』を与えられ、そこが彼の国になった。
 その都市国家の真ん中には大きな神殿が作られた。
 魔王はいなくなったけど、王国はどこか不穏な空気が漂っていたんだ。
 この一年でグラン王の独裁政治が国民を震え上がらせていたからね。
 そんな中、僕の生活には嬉しいことが起きたんだ。

「ケンタ! 結婚おめでとう!」
「マリナさん! ケンタは気が弱いからしっかり守ってあげてね!」
「あはは!」

 その日、孤児院は僕とマリナの結婚を祝う人々で歓喜に包まれていたんだ。
 その中心には純白のドレスを着たマリナと、黒いタキシードを着た僕。
 孤児院の皆が小遣いをためて用意してくれた大事な衣装だ。
 皆、笑顔だ。
 でも、参列者の中に僕の両親がいないのは寂しいけど。

「ん?」

 参列者の列の後ろに気になる存在が見えたんだ。
 腰に剣を差し、真っ黒な軍服と軍帽に身を包んだグラン王国親衛隊の姿を。
 何だか嫌な予感がする。
 グランは用心深い性格だから、この集まりを結婚式に見せかけた国家転覆の打ち合わせだと思っているのだろうか。

つづく

この小説は、エンジニア要素はほとんどないファンタジー小説です。
掲載頻度は、火、木、金です。
祝日がぶつかった時は、翌日に繰り越され、話数はだいたい30から40話で完結予定です。
若干のテレビゲーム的な要素がエンジニアリングっぽいですが、ほとんどエンジニア色はありません。
サラッと読めて、多少の支離滅裂を無視しても展開を早くすること、誰でも理解出来て面白くすることを目標に書きました。
仕事に疲れた時の息抜きに、気楽に読んでいただけたら幸いです。

Comment(11)

コメント

勝ち逃げ先生

早速仕事に疲れたので読みました。プロローグ、面白かったです。
今後の展開が全く読めませんが、グランは大きなプロジェクトが一段落して昇進したPMに、同期のケンタは同じプロジェクトを末端で支えてきたテスト要員に置き換えてやれば、エンジニア色がにじみ出てきます。きっとこの作品は読み手の力量が問われる。楽しみにしてます。

密かなファン

久々の小説ですね。楽しみにしています!

湯二

勝ち逃げ先生さん。


コメントありがとうございます。


読んでいただきありがとうございます。


>グランは大きなプロジェクトが一段落して昇進したPMに、同期のケンタは同じプロジェクトを末端で支えてきたテスト要員に置き換えて

すごい。
作者が予想もしなかった読み方をしてくれて、驚いています。
小説は後悔した後は、受け手のものなので、どう解釈してくれてもいいです。


>読み手の力量

頑張ります。

湯二

密かなファンさん。


コメントありがとうございます。


IT業界の物語じゃないので、載せるかどうか迷いましたが、、、
待っていただいてみたいで、ありがとうございます。

foo

冒頭をちょっと読んでみて、一瞬桜子姐さんもとうとう異世界転生しちゃいました的な事態が起きてしまったのか? ……と思ったが、そういうネタではなかったか。
エンジニア成分薄目とは言うものの、これからの展開が楽しみだな。

# 異世界転生後、桜のかんざし片手に、迷宮深部のデーモンやらドラゴンやらを次から次へとクリティカルヒットで斬首していく桜子姐さん & それによるパワーレベリングに命懸けで付き合わされる雄一も、ちょっと見てみたい気がする。

湯二

fooさん。


コメントありがとうございます。


ご無沙汰しておりました。


>桜子姐さんもとうとう異世界転生
もうネタが無くなったら、それをやるしかないですね。
世界観ぶち壊しですが。。。
書いてる人が同じ人なので、中盤辺りで似たような人は出てきます。


>エンジニア成分薄目
0.5%もあればいいほうです。


> 異世界転生後、桜のかんざし片手に
デスマーチ中に意識失って、異世界でしたみたいな。。。
書いてて楽しそうだけど。

VBA使い

新連載、おめでとうございます。


「何で」こんな僕が「なんで」勇者パーティに入れたかって?


グラン王国は6つの国に「分か」れた。


異世界でもマリナなんですねw


主人公のプロフィールが、2点ほど私と似てるので、結末が楽しみやら、気になるやら

VBA使い

追伸:体型も似てますw

湯二

VBA使いさん。


コメントと校正ありがとうございます。
ご無沙汰です。


>新連載
巻頭カラーでないのが残念。


>異世界でもマリナ
迷ったらこの名前。
何でかは訊かないで。。。


>2点ほど私と似てる
どこが似ているのか……しかも体型まで似ているとは。

桜子さんが一番

新連載おめでとうございます。
今気づきました。

湯二

桜子さんが一番さん。


コメントありがとうございます。
突然始めてすいません。
通知するメディアも個人的には持ってないので、いつも、いつの間にか始まっていつの間にか終わってます。

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