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技術書の製作に1年はかかる

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こんにちは、エンジニアライフの読者のみなさま。

よく「本の執筆にはどのくらいかかるの?」と聞かれるので、今回はそんなお話をしようとおもいます。

製作フローと労力

自費出版ではなく、出版社を通して本(商業誌)を作る場合、作家がやるべきことは原稿を作ることが主体となり、それ以外やることはほとんどないです。

1.企画を作る(数日)

2.原稿を執筆する(4~6ヶ月)

3.著者校正(1週間)

1番目の企画というのは、本のタイトルやまえがき、目次を作成して編集者に了承を得ることを指します。編集者が出版社の内部で稟議を通すために、作家は本のイメージをきちんと伝える必要があります。

企画が無事に通ったら、あとは原稿を作るだけです。自分の場合、半年前後かかっています。作家さんによって執筆のスピードは違うので一概には言えませんが、自分は遅筆なほうだと思っています。

(出版事業以外の)仕事の合間を縫って、執筆作業を進めないといけないので結構たいへんです。平日の夜、週末の空いた時間を使って少しずつ進めていきます。それでも半年で書き上げるのはしんどいです。

原稿の文字数としては10万から20万文字です。技術書の場合、ソースコードや実行結果、図解などがあるため、本によっては文字数が少なめでもよいこともあります。ちなみに、一般的にビジネス書や文庫小説では文字数が10万~12万文字です。

3番目の著者校正というのは、作家がゲラをチェックする作業のことです。チェック回数は2~3回なので、そんなに時間はかかりません。

2番目で原稿を書き上げてから、すぐに出版社からゲラが上がってくるわけではありません。出版社もいろいろ忙しいので、ゲラがでてくるまで数ヶ月待たされることもあります。

結果として本の企画から始まって、出版されるまで1年近くかかることになります。作家さんによっては年に何冊も書かれている方もいて、ホント尊敬します。自分には真似できません。

本が書けなくなった

実は前節でのお話は、自分が若い頃の話なのです。年を取っていき、本業の仕事や家庭で時間がだんだんとなくなっていきました。その間、新しい本の執筆依頼が来ても、即答で断りました。過去に出した本の改訂の話もあがってきましたが、即答で断りました。改定できなかった本はそのまま絶版となりました。

読者の方から「本の内容が古くなっていますが、改訂されないのでしょうか?」という質問を100回受け取りました。

大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。ああ、ごめんなさい......ごめんなさい......。

こうして、自分は本を書くことをやめました。

ワンコインで買える技術書

時は流れて幾星霜。

ある出版社の代表者さんに「ページ数が少なく、低価格販売できる技術書を作れないか」という相談をしていました。具体的な実現方法を代表者さんといっしょに検討を進めた結果、製作手法を確立することができました。

実現のめどが立ったので、自ら技術書を執筆しました。執筆期間も短期で済みました。こうして完成した本は100ページ未満で、定価1000円未満。

電子書籍は定価500円にしましたが、これは自分の強い要望によるものです。周りからは「技術書であるのに、いくらなんでも安すぎるのではないか」という意見が噴出しました。

けれども、ワンコインで技術書が買って読めるなんて魅力的じゃないですか?

結果として、本は大ヒットしました。あそこまで売れるとは思ってもみなかったので、読者のみなさまの応援に感謝しています。

おわりに

「手軽に作れて、手頃な値段で販売できる」という本は、いまの時代に合った方法ではないかと思います。

自分で本を書くだけでなく、本の企画と編集を行い、作家さんといっしょに本を作るという仕事もしておりますが、作家さんへの負担を少なくできます。換言すると、読者の負担(時間とお金)も少なくできます。作家も忙しければ、読者も忙しいのです。

なにより、また本が作れるようになって嬉しいです。

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