子育てエンジニアは苦労も多いけど、時に楽しい。

こころの弱さを認める

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 今回は心の病と上手に付き合うにはどうしたらよいか、ということを私見により書こうと思っています。わたし自身まだ回復途中であり、それが正しいかどうかはわかりませんが。

■まずは医者に行く

 子育てエンジニアは心の病にかかりやすい、と思っています。それは必ずかかるということではないですし、他の人がかかりにくいということでもありません。誰だっていつだって、心の病にかかることがあるんだということを、頭の片隅に置いておくことが重要だと思っています。

 体や心に「何かおかしい」ということが起こったら、早めに医者に行くべきです。わたしは割と早い段階で医者に行きました。そのためそれほどひどくならずにすみました。そんな当たり前なことを書くな、と思うかもしれませんがそれはとても重要なことです。

 どんなにすばらしいアドバイスを聞いても励ましの言葉をもらっても、すでに病み始めている状態では正しい判断ができません。だから、まずはきちんと考えられる状態にまで戻す必要があります。その後、同じような状況に陥らないための方法を考えるべきでしょう。

■たとえるなら砂の中

 心の病のど真ん中にいるとき、たとえるなら砂が少しずつ流れ込む穴の中に立っているようなものです。最初は、少しだからちょっと歩きにくいけれど大丈夫だろう、と軽く考えています。でも砂はどんどん溜まっていくわけで、気がつくと膝まで砂に埋まっています。膝まで砂に埋まったらおそらくその場所から動くことはできなくなるでしょう。体力のある人なら抜け出せるでしょうが、体力がなければ動けなくなることでしょう。

 周りから見ている人は言います。「早く砂をかきだして出て来い」と。「膝くらいだったら簡単に砂を出して出てこれるはずだ」と。「手でもスコップでも手段があるはずだからかきだせばいいではないか」と。

 でもその時点で、簡単には砂をかきだすことはできなくなっているのです。ましてやスコップなんて手が届かない。どうしたらよいのか途方にくれているうちに腰まで砂に埋まります。こうなったら人にひっぱってもらっても出ることはできません。そして最後には首まで砂が……。

 医者に行くことは、自分で砂をかきだせる高さまで、プロに砂を出してもらうことだと思います。自分でなんとかできる高さまできたら、今度は砂が溜まらないようにする方法を実践するわけです。

■自分の弱さを認める

 結婚する前はできていた。子供を産む前はできていた。そういうふうに良かった頃と比べる自分がいました。もっとできるはずなのにできない、ということに悩みました。できなくてつらいという気持ちを、周りの人に理解してもらおうとしました。自分勝手で、ズルくて、同情を得ようと必死で。

 前回のエントリーでは、実際にそういう感情、ある意味醜い感情を記述しました。そのエントリーに対してさまざまな意見をもらったわけですが、わたしは人の感情なんてそんなもんだと思うようになったのです。

 誰でも、ズルくて自分勝手な部分は、多かれ少なかれ持っているはずです。そんな自分が嫌で、それを責めてそしてダメなんだという烙印を押してもしかたないですよね。

 完璧にキレイな人間なんているのでしょうか? 誰にだって醜い部分はあるはずです。それを責めることに何の意味があるのでしょうか? 弱い自分だからこそ、やれないことを責めるのではなく、今までやってきたことを誇りに思うことにしたのです。

 ここでコラムを書くこともその(やってきたことを誇りに思うってことの)一環だったりするのですが……。

■いろんな考えの人がいるんだ

 世の中にはいろんな考えの人がいて、自分の考えがすべての人に理解されることはありません。言葉で書くとものすごく簡単なことなのに、なぜかすべての人に理解されようとしていました。10人のうち8人が賛成して2人が反対したとき、なぜか反対の2人にばかり気をとられたりしませんか? その2人をなんとか説得しようとしたりして。

 場合によっては必要なのかもしれませんが(そのような場面が思いつきませんが……)、自分が生活する範囲ではそれはとても無意味なことなのです。

 いろんな考えがあって当たり前。それを説得したところでまた別の反対意見が出るものです。それを説得しようとして矛盾に陥ったりもします。ここで「いろんな考えの人がいる」と書くよりも、前回のエントリーがそれを表しています。わたしの考えについて、いろんな意見が書き込まれています。いろんな意見が書き込まれているという事実が重要なのです。全員に理解されることなんてありえない。

 そして、必ず理解して応援してくれる人もいるのです。わたしもなんとかやってこれたのは、わたしの愚痴をきいて励ましてくれた同僚、先輩、上司のおかげなのです。

■心の病に関してまとめ

 3回に渡って、心の病のことについて触れました。デリケートな問題であり、解決方法も人によって違うことでしょう。しかし1つの経験として少し丁寧に書いておきたいと思いました。

 同じように悩んでいる人はいるかもしれず、その人や周りの人にとって考えるきっかけとなってくれればこの経験も無駄ではなかったのではないかと思います。見苦しい表現や厳しい意見などありますが、綺麗に整えられていない言葉だからこそ伝わることもあるのではないでしょうか。

 ちなみに、わたしは元々性格がきついほうでして、例の部門長に関しては社長に直談判したり、直接「あなたのせいで病気になりました」と言ったりしちゃいました。それでも職場環境に変わりはありませんが、少なくとも部門長と関わることが少なくなり、以前よりは平穏に仕事ができるようになりました。

Comment(5)

コメント

走るWM☆

私も子育て真っ最中技術者です。
そして私も一時期砂の中に足を突っ込みそうになりました。
隙間時間を狙って、自分の好きなことをすることで少しづつ解消されましたが…

3回のコラム読ませていただいて、気持ちがよく分かって泣きそうになりました。
友ぞうさんの頑張っておられる姿が目に見えるようで…

私は自分がやりたいことを仕事の休み時間1時間にやることで、元気になりました。ランチラン♪ 大学時代から走ることが大好きだったので…
心地よい疲れが午後の仕事をしゃきっと取り組ませてくれますよ!

私は現状を理解してくれる人がたくさんいて温かい言葉ばかりでした。
(それなのになんで砂に吸い込まれる?って感じですが、色々ありまして…)
見放さないでいてくれる方々に感謝して、期待に自分なりに答えるしかないんだなぁと今思っています。

子供を育てるという尊いこと、
家事という生きるベースになる動き、
そして技術者というチーム生産活動、どれも大事だから両立したいですよね!

拝見していて、会社の規模も形態など想像はつきますが、現実にはわかりません。ですから、憶測ですみません。

たとえば、弊社は数人でやっている零細企業で、とても子育てエンジニアを支える余裕はないですが、3月に子供が生まれたばかりのSOHOでやってる女性も居ます。
だからといって優れているのではなく、(おそらく友ぞうさんの勤めている)大企業の報酬や福利厚生とは雲泥の差です。

労働基準法などに労働者の権利は書いてありますが、果たすべき義務は明確に書いていません。それは当たり前すぎて書いていないだけで義務はあるのです。それで義務を考えずに、権利の部分ばかり主張する人があります。

先に権利を行使するのは借金をするのと同じで、借金をすれば利子をつけて返さないといけないのですが、現実問題、返さない人が多いのです。
返さなくても罪には問われませんが、それはある属性の人を貶めることになります。

で、ひどい仕打ちを受ける人は、客観的に見て「将来にわたり、利子をつけて返してくれることはない」と周りは見ていることが多いのです。(これは偏見もあります。後述)

どんなに大企業でも、独立採算や部課の成績で給料が決まるところは、部門長は実は中小企業の社長と同じなのです。

部員が10人居れば、それぞれに報酬と費用とあるべき成果が予算化されていて、10人で出した成果(プラスもマイナスも)10人で分けなければなりません。
部門長は10人の社員とその家族を背負っていることになります。
体調を崩してマイナスになる人も居ますが、マイナスは他の9名が引き受けることになります。

それでも、みんなが支えるのはいつか返してくれると思うからで、とにかく権利を主張するけれど、返してくれる見込みがない人には冷たくなるのは当然です。

自分を殺して家族のために必死で残業して、それでも家族に恨まれている男性などはいくらでも居るわけで、10名の中にそういう人が居ると、部門長の立場で、権利を主張する女性とどちらが守るべき人かを決めるのは、部門への貢献度と行使した権利の割合になります。
当然、男性の方が守るべきとなります。

友ぞうさんの会社で産休などの権利を主張したのは、友ぞうさんが初めてではありませんでしたか?

では、(男性)経営者や部門長の立場から見ると、過去の女性社員はみんな辞めていったわけで「女性は仕事を腰掛程度にしか考えていない」と受け取っています。最終的に経営者がリスクを判断するのは確率論になりますから、友ぞうさんは利子をつけて返そうとしていても、過去の女性の例から偏見が出来上がっているわけです。
偏見を持つ方が悪いか、偏見を作る行為をした方が悪いかどちらでしょう。

システム屋さんはそういう経営に役立つ統計資料を作るのが仕事でしょう。リスクを測るのは確率論でしかないということをわかってください。いろんな事情で辞める人がありますし、上長の個人的な偏見もあるでしょうが、確率論で考えると女性差別の敵は実は女性なのです。

(期せずして?)制度を利用して、女性の権利を守りにいったのですから、友ぞうさんはある意味、人身御供です。
ですから、過去の先輩たちが返さなかった利子を返すぐらいの活躍をしないと、会社は確率論で「やっぱり女性は……」と見ます。

ですから、友ぞうさんが行使した権利に利子をつけて返さなければ、後に続く後輩の女性社員に大変悪い影響が残りますので、何とか耐えて、ぜひ、立派な成果を残してください。

あと、頼る順番は、
     夫>両親>親戚>会社>社会
ですよ。

友ぞう

走るWM☆さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

同じ子育てエンジニアなんですね。

>見放さないでいてくれる方々に感謝して、期待に自分なりに答えるしかないんだなぁと今思っています。
わたしも同感です。
理解して見放さないでいてくれる人を裏切らないように、自分としてできることを返していく。そうですよね。
子育てだって、家事だって、仕事だって、一人でできることではないから、時には周りに頼って、時には自分が助けて、そういうことが自然にできるようになるといいと思います。

お互いがんばりましょう。

友ぞう

生島さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

経営者からの視点でのご意見なので、また新鮮な気持ちで読ませていただきました。

>労働基準法などに労働者の権利は書いてありますが、果たすべき義務は明確に書いていません。それは当たり前すぎて書いていないだけで義務はあるのです。それで義務を考えずに、権利の部分ばかり主張する人があります。
>先に権利を行使するのは借金をするのと同じで、借金をすれば利子をつけて返さないといけないのですが、現実問題、返さない人が多いのです。

まさに経営者の視点ですよね。先に権利を行使する・・・。経営者と従業員、どちらが先に権利を行使しているのでしょうね。
経営者から見れば、権利ばかり主張すると思われますが、従業員から見れば会社が権力を行使しているじゃないか、と。

どちらの意見も正しくて、立場が違うから分かり合えない。
そして、生島さんのおっしゃるとおり偏見もあります。

労働基準法に義務がかかれていないのは、そもそも賃金を払う側のほうが立場が強いわけで(お金を握っているわけですし)その従業員の弱い部分を守るための法律だからじゃないですか?

基本的には会社と従業員は契約であるので、お互いに守るべき権利と義務が存在するはずです。
とはいえ、そこは人間ですから、最後に人を動かすのは契約だけでなく情の部分ではないでしょうか。お互いに契約だけを盾にすればギクシャクしますよね。
従業員が権利を主張してくるのは、その前に会社側だって権力を行使しているかもしれないですよね。
これは従業員としての視点での意見ですが。。。

まあ、私も権利を主張した以上はきちんと義務を果たすことは必要なことだと思いますし、できればきちんと貢献できるようになりたいと思っています。
目に見えて(売上をあげるなど)貢献できないことには、あせりや苛立ちを感じていたりもしますが。

>あと、頼る順番は、
>     夫>両親>親戚>会社>社会
>ですよ。
はい。肝に銘じます・・・(笑)

確かに経営者目線ですが、余程出来る中途採用の人でない限り、まずは教育期間からスタートするじゃないですか。つまり、ほぼ100%先に権利を行使しているのは社員なのです。

最初の1、2年なんて、会社にとっては完全に投資以外の何物でもないのです。
金を握っているわけでも、なんでもなく最初から損を握っています。
大手なら、SEを一人育てるコストは大体1千万円ぐらいで、それだけコストを掛けてあっさり辞められるかもしれないというリスクを抱えています。

会社は社員が稼いだものを集めて社員に分配しているわけで、会社なんて人は存在しませんから、会社が投資したというのは、つまりは周りの社員が投資しているのですよ。

だから、男性社会の空気を読むと、男性が産休を取る権利があっても、契約があっても、それを盾に取ったらギクシャクします。男性は、頭で分かってなくても、使った権利以上に返さないといけないということを、空気で分からされますからね。

> 従業員が権利を主張してくるのは、その前に会社側だって権力を行使している
> かもしれないですよね。

というのは、「かもしれない」じゃなくそう思っているのじゃないですかね?

その雰囲気が出ると、部課長以上の人なら厳しい判断をすると思います。

会社が権利を行使しているなんて言えるのは、上位2割ぐらいのものです。
http://el.jibun.atmarkit.co.jp/g1sys/2009/06/28-46e1.html

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