筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

PHPビジネス新書 『伝える力』/池上彰

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 どうしてもわたしたちは、知ったかぶりをしてしまいがちです。真の理解が得られていなくても、さも理解したかのように振る舞いがちです。しかし、池上彰著『伝える力』では「知らないということは、恐ろしいことだ」という内容がつづられています。また、わたしたちは、ある一定の境地まで達すると、「オレさま」的な態度を取ることがあります。反省も弁明もしない。しかし、池上彰さんは不遜で、偉そうなそういう人の成長は「そこまでだ」というご意見をお持ちです。

■新書のPHPも見てね!!

 池上彰著『伝える力』、100万部を突破した新書です。池上さんは「週刊こどもニュース」で、初代司会を務められた方です。「こどもニュース」以前にも、警視庁記者クラブでの取材経験、首都圏ニュース845などの司会などで活躍されていました。

 僕が何で800円もする本を買ったのか。それには理由がありました。まず、近くの書店でかきふらい著『けいおん!』の漫画が置いてなくて、ハートブレイク状態で帰路に就こうとしたときに、本書が偶然平積みになっていたのです。書店員さんオススメのPOPもあり、思わず(過失ではないのですが)、買ってしまったわけです。普段、こんなマジメな本は手にしないはずなのですが……。常々、マンガを読み、マンガに萌え、マンガに生きる……っと、そこまでオーバーじゃありませんが(苦笑)。

 僕は、日ごろからずっと悩んできました。どう話せばいいのか。どう書けば相手の心に響くのか。そして、相手の話を聞くときの態度はどうすればよいのか、と。例えば、このコラム1つ取っても、学生さんにきちんと伝わっているだろうか。僕より学問が上の人が見て、恥ずべき文章になっていないだろうか。お子様のお手本とまではいかないまでも、誰が見ても手を打ち納得できる文章になっているだろうか。コラムを書くときに、いつも考えてきたことです。偉そうな文章になっていないだろうか。お仕着せがましい文章になっていないだろうか……。

■ディスコミュニケーションの打開策として

ikegami
『伝える力』/池上 彰著 ISBN978-4-569-69081-0

 さすがに60年生き、報道業界で謙虚に40年近くキャリアを積んでこられ、かつ、不遜にならない、池上さんの文章には説得力があります。結果的に、売れるはずです。仕事に直結し、生活に密着し、仕事のオン・オフ、どんな場面でも利活用できるからです。

<もくじ>

  1. 「伝える力」を培う
  2. 相手を惹きつける
  3. 円滑にコミュニケーションする
  4. ビジネス文書を書く
  5. 文章力をアップさせる
  6. わかりやすく伝える
  7. この言葉・表現は使わない
  8. 上質のインプットをする

 ……と、ご覧になっただけで、この方の努力家ぶりが伺えます。普通、60歳にもなったなら、人様から謙虚に学ぼう、なんて考えないはずです。一般的には、自ら反省しようと努力もあまりしなくなるでしょう。ただし、池上さんは違います。常に内省をし、還暦を迎えられたいまもなお、自らの襟を正し続けているのです。

■無駄なプライドや自信家は、そこで成長が止まる

 NHKという組織の中で、不遜な人を観察し続けてきたら、案の定、出世しなかった。中央官庁のキャリア官僚との付き合いの中で、不遜な人を観察し続けてきたら、案の定、どこかへ消えてしまった。反対に、ざっくばらんな性格で、こちらの話をきちんと聞いてくれる人は、どんどん出世して、官僚のトップである事務次官にまで上り詰めたりしている。――第1章「『伝える力』を培う」より抜粋――

 僕には、学歴が少なく、常にコンプレックスを抱いてきました。なので、いつまでたっても、こんな40歳のオッサンになっても、いいや、まだまだだ、まだ足りない、まだ未熟だ。そう心に刻んで来ました。よき人に学び、悪しき人には見習わず、相手から見たら、自分はどう見えているのだろうか、と常に問い続けてきました(当該コラム、2009年3月分「立ち居振る舞いとセルフモニタリング」ご参照)。

 もうしかってくれる人もいません。僕が常に正しいかはさておき、少なくとも、僕は僕を省みることをあきらめて来なかったんだなあ、ということだけはハッキリしました。

■「話す」「書く」「聞く」能力は、パーソナリティ

 何がいいたいのかと申しますと、情報を受発信する能力の高低は、その人のパーソナリティを表している、ということです。社会経験に乏しい人は、自分のことばかりをべらべらしゃべる。書き方が稚拙な人は、若いころ、文章で恥をかいてこなかったから。聞く能力に乏しい人は、相手に聞かれてうれしいことを想像することに乏しいから……などなど、具体例を挙げればきりがありません(それこそ、1冊の本が書けます)。

 池上さんに無断で行うと、どこかのルートを通じて後からしかられそうですが、ぎゅっと凝縮すると本書は以上のような感じです。詳しくは本を読みましょう。オススメです。若いうちは、どんどんコミュニケーションをして、恥をかいて、アタマ打って、嫌われて、好かれて、そうやってめげずに、立ち直って、それでも、世間にもまれて大きくなれよ。そんなメッセージが伝わってくる1冊でした。

 なので、プログラム言語としての“PHP”も大いに結構なのですが、ビジネス新書の“PHP”も読んでみてくださいね、というお話でした。

 (さあ、伊丹まで出かけて「けいおん!」を買うぞ!!)

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