この箱の中身は一体何だ(1)
毎回毎回、片腹痛いどころか、全身激痛なコラムにおつきあいいただき、どうもありがとうございます。いや、もっと言えば話芸の一種だと思ってご覧いただけると、それほど荒唐無稽なことは申しておりません。
■ラジカセを鉄くずにした子供時代
さて、そもそも、何で工業高校の情報技術科に入りたかったって? それは、幼児の頃から、メカがあれば、何でも分解して、中身を見てやろう、という、好奇心のかたまりだったからです。まず手始めに、弱冠3歳にして、父親のステレオを粗大ゴミにしました。レコード針がくっついている、アームをもぎ取ったらしいのです。「これは何だろう」。ただそれだけの理由からです。それからというもの、ラジカセを鉄くずにすることは、ほぼ日常茶飯事。親にしたら、さぞかしカネのかかる、迷惑な子供だったことでしょう。それは9歳頃まで続きました。
根底には、子供の好奇心があります。例えば、このボタンを押せば、音が出る。そういう結果が出ることはわかった。でも、中身は一体どうなってるの? といった、無邪気な好奇心からです。もしそのとき、Java言語があったなら、オブジェクト指向に走っていたのかも知れなかった。しかし、そんなものはなかったので、ラジカセの一切合切をバラバラにしてみる。
例えば、それが磁気ヘッドという名前であることや、磁気記録の原理を知らなくても、そこがテープをこすって、読み書きしているのだと想像がつく。バリアブルコンデンサという名前は知らなくても、そこがラジオのチューナーのダイヤルと連動して動くので、おそらくラジオの選局に関わる部品だろうと想像がつく。スピーカーのコイルがどんな電磁力を受けてウーハーを動かすのか分からないものの、そこから音が出ることだけはわかる、といった具合にです。当時のラジカセは、国産で、かつ、ものすごい実装密度だったので、ふたたび部品を集めて組み立て直そうにも、二度と組み上がらないという、プロでも難しい代物でした。
■飽くなき好奇心の追求
今でも思うのです。「デバイスドライバを入れ、USBでつなげば、機能することは分かった。でも、実際のところどうなん」といった、素朴な好奇心が、この歳になっても抜けません。なので、またぞろ「トランジスタ技術」1月号を購入し、その特集「USB機器を作るためにはなにが必要?」という記事に目が釘付けになります。最近のトラ技は、イラストや図説が多く「デバイスマネージャさま」のお墨付きがないと、パソコンの配下にしてもらえない、ということが大雑把にわかります。デバイス・ディスクリプタをもとに、デバイスマネージャさまが、INFファイルを照合し、どのカテゴリのデバイスの配下にしていただけるのか。大雑把に分かりました。それだけでも、もう満足です。おなかいっぱい。
また、高校3年の大事な2学期に、マイコプラズマ肺炎を起こして3カ月も入院していたおかげで、職業訓練校で習い直しても、なお、すっぽり土台から抜け落ちているC言語。知ったかぶりは格好悪いし、わかったふりをするのも気色悪いので、初心に返って、技術評論社の「C言語スタートブック」や「プログラミングのセオリー」という本をかじっています。なぜみなさんがC言語を使いたがるのか、わかった気がします。振る舞いは機械語に近く、プラットフォーム間の移植性に優れ、(ライブラリ関数は別として)予約語が少ない。その気を出せば、きれいに書こうと思えば書けるし、関数を自分で作ることができるということも魅力ですかね。まあ、僕はあまりプログラミングを仕事にしたくはないですが。例えば、COBOLで病気になった人を、何人か知ってるし。
■この箱の中身は一体何だ
例えば、機動警察パトレイバーの、熊耳武緒巡査部長が、もうすでに、立派なレイバー免許を持っているのに、なぜ最新型に合わせて免許を毎年取り直すのか。そこに、自己研鑽のヒントがあるように思います。今で言う、MCPやLPICなどの資格に当てはまりますね。でも、僕は、一度受かった自動車運転免許をふいにするようなもったいないことはしませんが……。また、太田功巡査が、「どうしてレイバーが動くのか、気にしたことがあるか。得体が知れないから不気味なんだ」などと、主人公たちに問うシーンがありました。
確かに、ペダルを踏めばレイバーは動きます。でも、そこにどんな仕掛けがあって、ブラックボックス化している箇所はどういう仕組みなのか、という問いかけでもあるようです。同様に、確かにパソコンは、キーを叩けば文字が出ます。でも、なぜ、どのようにして文字が出力されるのか。つまり、この箱の中身は一体何だ……。15歳のとき、N5200や、MZ-2000に触れた僕が、一番知りたかったことです。
クルマはアクセルを踏めば加速する。ブレーキを踏めば減速する。これ、世界の決まり。でも、何でクルマがアクセルで加速し始めるのか。そのからくりが知りたくなって、ついにメカニック、自動車整備工になった方もおられるようです。同様に、パソコンは、キーを叩けば、画面に文字が表示される。これ、世界の決まり。でも、何でパソコンはキーを叩けば、画面に文字が表示されるのか。これが知りたくて、趣味が高じて、ついにメカニック、パソコンの修理工にまでなったというわけですよ、僕は(ついでに、CEからフィールドエンジニア、インフラ系SEになっちまったわけですが(汗))。
(後半に続きます。では次回!!)