小説大好き!!
僕自身は、友人からサイトを受け継いだので、特段、自分で小説を書こうだとか、そういった欲望や野望はなかったのですが……。ともあれ、2000年3月の時点で、すでにブロードバンド時代を見通していた友人の先見性はすごいなあ、と思いながら。今では、片手間にオンライン小説更新チェックサイト「小説大好き!!」の管理人をしています。
【始まりは、CATVインターネットと56Kモデムの料金差から】
今からおよそ9年前。2000年3月。当時は、インターネット接続といえばダイヤルアップ56Kでして、従量制の課金をするアクセスプロバイダが多かったのです。一方、当時珍しかったCATVインターネットを使っていた彼は、ある1つの思いつきをしました。つまり、従量制56Kユーザーの接続料金負担を軽減するために、つなぎ放題の彼自身が「小説サイトの検索代行」をボランティアでしてやろう、と思ったのが始まりです。僕自身は、1999年4月1日から既に、個人のホームページを持っていたのですが……。
「なあ、みんな、僕は今日からホームページを始めたんだ!!」
「田所さん、冗談は抜きにして、仕事しましょうよ」
ガーン……みんな冷たいよ……。まさに4月1日はエイプリールフール。職場の誰にも信じてもらえませんでした……。それから約1年、彼がホームページを新しく作るというので、どういうアイデアか聞いてみることにしました。
「オンラインノベルの更新チェックサイトですよ」
「……はあ?」
……僕は一度聞いただけでは、意味が分かりませんでした。「まあ、見ていてください」と豪語する、彼の「裏付けのない」すごい自信。はて、サイトデザインは僕より下手なはずだけれども、何か秘策でも?
【出来上がったサイトの、驚くべきアクセス数】
2000年3月。出来上がったホームページは「小説大好き!!」というものでした。彼は常時接続のパソコンでネットとつながっていて、 Dreamweaverほどのプロフェッショナルなオーサリングツールはなくても、彼にはホームページビルダーがありました。当時の「更新作業」は全部手作業。小説サイトが更新されたら、WWWCと呼ばれるフリーウェアのメタタグチェッカーを立ち上げ、お客さんのHTMLヘッダには更新情報を書いてもらい、それをWWWCで拾い、手作業で情報をアップする。当時のカテゴリーは「アニゲー」「エヴァ」「オリジナル」「18禁小説」の4種類(現在ではコンテンツプロバイダの規制により、R18要素は抜いてあります)、および「投稿小説」でした。
「お前ねえ、そんなもん流行らんやろ」という僕の予想を裏切るかのように、情報はインディーズのライトノベル作者たちに瞬く間に広がり、登録者とアクセス数はうなぎ登りに上昇していきました。当時は「18禁小説」を標榜し掲載していても、プロバイダからお咎めなしのおおらかな時代だったので、よけいにアクセス数が伸びていきました。
【彼自身の網膜剥離により、後継者へ】
彼は先天的に糖尿病で、インシュリンが手放せません。インターネットの端末にかじりつく作業は、彼自身の眼の網膜を致命的に痛めてしまいました。そこで、ボランティアにCGIを組んでもらい、更新を「半自動化」しました。それから2名の管理人を経て、印刷所時代の先輩である僕が受け継ぐことになりました。
ですので、僕はいま「初代番頭」であり、「4代目総支配人」でもあります。なぜいちいち「温泉旅館用語」で呼ぶのかと言えば、発足当初は「なにわの温泉旅館風味」を標榜していた名残でして、支配できていないのになぜか僕はいま「総支配人」という立場です。
【良いお客さんとスタッフに恵まれて】
おかげさまで、インディーズの小説サイトとしては、ある一定の評価をいただいています。時代は移ろい行き、皆が常時接続になってからも、ネームバリューからか、1日あたり1800ページビューは頂戴しています。また、サイト運営開始から9年を迎えるというのに、いまだに新規登録サイトさまがおられます。更新作業に携わるマンパワーが極端に足りない中で、小説が好き、というだけで集まってくれた更新スタッフにはアタマが上がりません。コミュニティ活動というのは、こういうのを言うんだろうな、と思いました。
ご参考:小説 大好き!!【本館】 http://sd.kiss-mfg.com/
【どんな環境にあっても、その気を出せば修行になる】
外部的には普通のHTMLに見えますが、内部的には実に多くのCGIを使用しています。他人が作ったソースプログラム。これを読み解くだけで、PerlやPHPの分厚い本を何冊もめくって、紐解かなければなりません。管理人=総支配人たるもの、サーバの挙動、Linux OSの振る舞い、CGIの振る舞いを、ある程度理解していないと務まりません。じゃあ、お前が今すぐ独自のCGIを組め、と言われても、無理なことは分かっていますが、どこで何をやっているかは把握しておく必要があります。時間があれば、そういったサーバサイドの言語の習得も、いずれはやってみたいですね。
【雇い止めはこんなところにも】
新年元旦から、初代総支配人「ゆーき」が失職しました。僕は、H印刷倒産直前にリストラされて、彼はF印刷に救済されたのですが、僕はポリテクセンターを経て情報技術の職業へ。ゆーきは、DTPオペ→輪転工に移っていたのですが、彼もまた僕と同じようにリストラされ、現在、4月からのポリテクセンターでの訓練を希望しています。
まあ、本人は弱そうで案外しぶとくてタフなので、したたかに生きていくと思います。会社都合ですので、1週間の待機後、即失業給付が出るようなので、本人曰く「まあ、ゆるゆるまったり過ごしていきますよ」とのことです。
職業訓練説明会には出るみたいなんですが、パソコンが(網膜剥離で)ダメので、多分「ビルメンテナンス科」に行くと思います。
彼からの返信がまだだなあ、と思ってメールしてみると、「新年あけました。おめでたくないです」とのことでした。商業印刷は廃れる一方ですね。まーあかん。大日本や凸版なども、普通のオフセット印刷より、付加価値のある産業に移行しつつありますし。
(次回に続きます……)