筆者は1970年生まれ。先輩から、情報技術者を目指す若い方へ生きてゆくためのコラムです。

デジタルネイティブ

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 システムエンジニアは、まるで鉄道員に似ているなあ、と感じるのです。お客さんからあまり見えないところにいても、お客さんと深くかかわるし、手を抜いたらダメ。情報も鉄道も同じインフラストラクチャなので、止まっては困る。なので、インフラストラクチャ分野のエンジニアは、なくてはならない存在だと思うのです。

【デジタルネイティブとは】

 「デジタルネイティブ」とは、2008年11月10日、午後10時より、NHK総合テレビで放送された(ちなみに僕はラジオのNHKジャーナルを聞いていて見逃した)テレビ番組です。公式サイトから引用します。

 インターネットが一般の家庭に普及するようになって10余年。子どものころから、インターネットを「水」や「空気」のように使いこなしてきた「デジタルネイティブ」とも言うべき若者たちが登場している。「13歳でインターネットを駆使して起業し全米中の注目を集める少年」「ネット上に200カ国の若者が参加する"国際機関"を作り出した若者」「仮想空間で仕事を請け負って月に5000ドルを稼ぐ高校生」……。デジタルネイティブは、「自ら情報を発信し共有することで成立するネット・コミュニティ」を自由自在に使い、見ず知らずの人々と瞬時につながって、次々と常識に縛られない「価値」を生み出している。アメリカでは、既存の価値観や従来の組織のあり方に捕らわれない彼らの考え方や行動力が社会をどこに導くのか、詳細な研究も始まっている。番組では、台頭しはじめたデジタルネイティブの素顔に迫り、世界のデジタルネイティブから寄せられた動画も紹介。世界を変える可能性を秘めた若者たちの"今"を多角的に見つめていく。

 ……ここで大阪の方向からツッコミ。「欧米か!!」(笑)。

【デジタルネイティブは、切符を買った乗客に過ぎない】

 デジタルネイティブな彼らは、たとえば「電車が何であるかを知っている」「電車を生まれた時から使っている」「電車を上手に乗り降りすることができる」だけの話であって、内部的にどんなギアが使われているか、どんなモーターで牽引しているか、電圧は何ボルトで、耐荷重は何トンで、軌間は何ミリで、整備状況は……ということを、ほとんど気にしないで、単に「便利な乗り物」として使っているだけです。我々が整備した鉄軌道の上を走る、我々が整備した電車の座席に座っている、単なる「切符を買った乗客」に過ぎないのです。

 マニアックに「電車」について語ることができても、我々エンジニア目線とは違い、あくまで「電車マニア」の域を脱していないのです。だから混同して欲しくないのは、鉄道マニアと、鉄道員とは厳然として違うというところです。純粋に情報インフラを楽しむお客さんと、日夜、情報インフラを守るエンジニアとでは、緊張の度合いが違います。インフラは動いていて当たり前。ちょっとでも止めたら、お客さんからガミガミ怒られる。ここへ来て、情報技術者と鉄道員とが、だぶって見えてきました。

 だからひとこと言ってやりましょう。「デジタルネイティブの分際で威張るんじゃない」ってね。「お前らに情報インフラの何が分かる」ってね。胸を張って言いましょう。「僕たちは、インターネットができる前から、情報技術者だったんだよ」って。

【デジタルネイティブは「銀河鉄道999」の若い乗客たち

 一方で、デジタルネイティブには、新しい商習慣を生み出すチカラがあると思うのです。新しい分野を開拓する、年齢や国境を超えて商売をする、といった面においては、ベンチャーの立ち上げ方の新しい手法として、アタマのCPUが古い日本の「ベンチャー融資担当のおぢさまたち」に、もっともっと見習って欲しいところです。

 例えば、「不動産担保ローンという発想をやめる」「小中学生にもお金を貸す」だとか、そういうことをもっともっと考えて欲しいのです。年齢や社会階層を超え、純粋に新しいビジネスに対して価値を認め、自由な商取引ができる。デジタルネイティブたちの活動に期待するのは、大人が作り上げた「悪しき既存の商習慣」に抗って、ぜひともブレイクスルーして成功して欲しいというところですね。

 もし、それら事業を本気で成功させたいのであれば、おぢさんは「デジタルネイティブ」が走るための線路を、現場でしっかりと守るよ。おぢさんは、君たちの夢に向かう電車を頑張って走らせるよ。今の情報インフラストラクチャが、それら「新しい商習慣」を切り開くのであれば、おぢさんは君たちのために「特等席」を用意するよ。ただし、生半可な気持ちで始めるのであれば、容赦なく「途中下車」してもらうけれどもね(笑)。

 その昔、「銀河鉄道999」というアニメがあったことを思い出しました。主人公「星野鉄郎」はまだ若い少年でした。仮に、デジタルネイティブ世代が「星野鉄郎」だとすると、インフラストラクチャ系システムエンジニアは「銀河鉄道の運行責任者」なのかも知れないですね。

【僕たちもかつては「銀河鉄道999」のお客さんだった】

 エンジニアライフのコラムニスト、後藤和彦さんから、コラムニスト用のメーリングリストでこのようなレスを頂戴しました(許可をいただいて掲載しています)。

 デジタルネイティブは「銀河鉄道999」の若い乗客たち、というのはロマンがありますね。「銀河鉄道999」は、私も好きでした。私はこの原作漫画が出たころ、ちょうど受験に失敗して仙台の予備校に通うために家を出ようとしていましたので、特別な感慨があります。ご存知のように主人公鉄郎は、母親を機械人間の伯爵に殺されて、機械人間に恨みを持っているにもかかわらず、機械の体を手に入れるという矛盾した目的のために999に乗ります。

 自分の不幸な境遇から抜け出すために、何もかも捨てて、まったく得体の知れない未来に向かって旅立つ主人公が、当時の自分と重なるようで、今でも胸がきゅんとします。999のデザインが昔の蒸気機関車の形をしていることにも、作者のメッセージがこめられています。鉄郎の旅は過去への旅でもあるわけです。その旅路の果て、結局鉄郎は機械の体を手に入れることの愚かさを悟って地球へ戻ることになるのですが、このストーリーにはどんな寓意があるのか、今でも考えてしまいます。

 わたしたちもまた「機械の体を手に入れる」ために999に乗った乗客の1人なのだと思いますが、わたしたちの旅はいったいどのような結末で終わるのでしょうか。現在のデジタルネイティブたちは、果たして「銀河鉄道999」をどう見るでしょうか。彼らも同じ気持ちで乗ったのでしょうか。「銀河鉄道999」になつかしさをおぼえてレスしました。

 後藤和彦さん、ありがとうございました。では。

 (まだまだ続きます)

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