296.ラズパイ無双[25 OPC-UA はじめに]
初回:2023/1/25
Raspberry Pi (ラズベリーパイ、通称"ラズパイ")で何か作ってみようという新シリーズです。これから数回に分けて、ラズパイ上にOPC-UAサーバーと、クライアントを入れて、通信させるところまで行ってみたいと思います。まずは、OPC-UAって何? という所から始めたいと思います。
P子「少し退屈な話ね」※1
OPC-UAに関係していない人にとっては意味のない話ですし、ご存じの人にとっては知ってる話なので退屈です。さらに、ラズパイに興味のない人、使う予定の無い人にとっては、OPC-UAに興味があっても、その先につながりません。
P子「ターゲットがマイノリティーなのね」
とは言うものの、自分自身の情報整理を兼ねていますので、ご興味のある方は先に進んでください。
1.OPC-UAとは
ザックリ言うと、機械...特に産業機械同士や、PCなどと通信する場合の標準規格という事です。
P子「ザックリ過ぎない?」
≪参考1≫
https://jp.opcfoundation.org/about/what-is-opc/
OPC とは?
『OPC は、産業オートメーション分野やその他業界における、安全で信頼性あるデータ交換を目的とした相互運用を行うための標準規格です。プラットフォームから独立し、多くの製造ベンダーのデバイス間で、シームレスな情報の流れを確保します。OPC Foundationは、この標準規格の開発と維持に責任を負っています。』
OPC以前は、各社独自規格で通信させていたので、それらを標準規格として通信できるようにしたのが、OPCです。当初は、Microsoft社のDCOM技術を使用していたため、Windows専用の規格でしたが、オープンプラットフォームに対応し、各種課題を解決すべく策定されたのが、OPC-UAという事です。昔のOPCを、OPC-UA と区別するため、OPC Classic と呼んでいます。
OPC UA は、国際標準「IEC 62541」として、2008年に発表された仕様なので、何で今更?という疑問もあるかもしれませんが、これが注目を集めるきっかけになったのが、次に説明する『インダストリー4.0』という事になります。
2.インダストリー4.0
Industrie 4.0 というのは、ドイツ連邦政府が推進している製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す昨今の技術的コンセプトに付けられた名称で、一般に第四次産業革命として言及されています。
≪参考2≫
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1902/21/news005.html
インダストリー4.0で波に乗る、OPC UAの普及動向
[大釜亮介/マクニカ,MONOist]
2019年02月21日 11時00分 公開
この中で、『Industrie 4.0』が最重要課題と認識しているのが『標準化』であり、OPC-UAが、その推奨通信プロトコルとして、指定されたことが注目度を高めたという事でしょう。
インダストリー4.0は、ドイツ政府の戦略的施策の1つであり、VDMA(ドイツ機械工業連盟)やVDW(ドイツ工作機械工業会)なども積極的に推進しているので、欧州ではOPC UAを採用する動きがかなり進んでいるそうです。...≪参考2≫の2019年時点で...
P子「政府も民間も協力して、進めているのね」
では、日本ではどのように進んでいるのでしょうか?
3.Connected Industries
日本版インダストリー4.0 と言われるのが、「Connected Industries」です。
≪参考3≫
https://www.ntt.com/business/services/management/operations-management/global-management-one/column/industry-4-0.html#toc04
インダストリー4.0とは?
日本の製造業への応用やドイツの狙いをわかりやすく解説!
# 日本版インダストリー4.0「Connected Industries」とは
ただ、ドイツと異なり、日本の場合は、経済産業省が打ち出した概念ではあるものの、政府として推進しているというより、企業主体で推進しているため、余り進展していないような印象を受けています。
P子「産業機械分野でも、日本が取り残されているのね」
とは言うものの、特定分野においては、大々的ではないにしてもひそかに進展していると思います。まあ、その特定分野以外の分野については、よく知らないだけですけど...
その特定分野というのは、射出成形機関連のEUROMAPという規格です。
4.EUROMAP xx
EUROAMAPは、欧州のプラスチックおよびゴム業界の主要メーカーから成る非常に大きな組織です。
≪参考4≫
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/series/16111/
いまさら聞けないEUROMAP入門
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1910/15/news006.html
プラスチックやゴム用加工機で「つながる」を実現する「EUROMAP」とは何か
2019年10月15日 11時00分 公開
[篠田和伸/ベッコフオートメーション,MONOist]
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1911/29/news005.html
「K 2019」で見た、EUROMAPで「つながる」射出成形機の進化
2019年12月10日 11時00分 公開
[仲野雄三/ベッコフオートメーション,MONOist]
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2004/14/news001.html
「EUROMAP」で広がるオープン化の波、射出成形機の方向性
2020年04月13日 11時00分 公開
[篠田和伸/ベッコフオートメーション,MONOist]
例えば、『EUROMAP 63』は射出成形機におけるデータ交換インタフェースで、米国のプラスチック産業協会(SPI)と共同して策定されたもので、欧州で販売される射出成形機には、ほぼ搭載されています。
≪参考5≫
https://ja.wikipedia.org/wiki/EUROMAP63
EUROMAP63
https://www.nishipla.or.jp/index.php?action=iot
(IoT ミドルウエア紹介ページ)
西プラネット(一般社団法人西日本プラスチック製品工業協会)
日本では、一般社団法人西日本プラスチック製品工業協会によるEUROMAP63準拠の『ミドルウェア』が、射出成形機メーカー5社(住友重機械工業㈱、東洋機械金属㈱、日精樹脂工業㈱、㈱日本製鋼所、ファナック㈱(順不同))の協力のもと開発・提供されており、その5社以外にも、㈱ソディック、芝浦機械㈱(旧 東芝機械)なども、対応しています。
この『ミドルウェア』自体は、西日本プラ、中部日本プラ、東日本プラの会員企業なら、初期費用 5万円で入手できるのですが、各社の成形機側にも対応ソフトが必要であり、メーカー、機種ごとに料金設定が異なっているため、大々的な普及には至っていないようです。
5.OPC 400xx
この『EUROMAP 63』は2000年に制定された規格であり、ファイル共有のフォルダを介して通信ファイルをやり取りするという形式でした。これが制定された2000年当時の射出成形機やコンピュータにとっては取り扱いがしやすかったのかも知れませんが、IoTや、スマート工場のコンセプトとしてはどうしても時代遅れ感が否めません。
これの次世代規格として、OPC-UA対応されたのが『EUROMAP 77』『EUROMAP 83』という規格になります。この規格については、各社の独自判断で対応しているようです。ただし、先の『ミドルウェア』の通信部分をOPC-UA対応...またはアダプタやブリッジなどを導入する事で、管理画面がそのまま使用できるので、成形機メーカー側が『EUROMAP 77』を標準対応するようになってくれば、非常に安価にデータ通信が可能になります。
≪参考6≫
https://www.nisseijushi.co.jp/corporate/news0001.php?g=1&id=343
グローバル戦略機として、主力の電気式射出成形機「NEXシリーズ」をモデルチェンジ
2019年10月15日 新製品情報
日精樹脂工業
この、OPC UAをベースとしたEUROMAP規格が「OPC 400xx」として、純粋なOPCの仕様として扱われることになりました。
≪参考7≫
https://jp.opcfoundation.org/wp-content/uploads/sites/2/2022/09/OPC-UA-Seminar_Session5_Anotherware.pdf
EUROMAP及びベンダー独自情報モデルを活用したソリューションのご紹介
株式会社アナザーウェア
https://www.shi.co.jp/tech/tech_report/pdf/203.pdf
プラスチック機械特集
住友重機械技報 No.203 Apr.2021
6.まとめ
事の発端は、射出成形機関連の EUROMAP77 に採用されている OPC-UA の調査から始まった話です。OPC-UA が何者か判らないと、次に進めません。
という事で、今回は一般論としての OPC-UA の解説でしたが、やはりこれだけでは何が何だか分かりません。
そこで、色々と調べているうちに、ラズパイ上に、OPC-UAのサーバーとクライアントを構築するというサンプルがありましたので、やってみようというのが、今回のラズパイ無双です。
ただ、残念ながら、私が全く理解できていないので、実用に耐えうる実装は出来ないと思いますので、あくまで『こんな感じか』という所までになると思いますが、 ご容赦ください。
ほな、さいなら
======= <<注釈>>=======
※1 P子「少し退屈な話ね」
P子とは、私があこがれているツンデレPythonの仮想女性の心の声です。