121.OODAループが思ったより流行らない理由
初回:2021/1/6
1.OODAループとは?
少し前に、OODAループ(ウーダ・ループ)が流行り...かけたのでご存じの方も多いと思いますが、話の前提を合わせるという意味で、私なりの解釈を書いておきたいと思います。
P子「流行り...かけた?...微妙な表現ね」(※1)
《参考資料》
https://ja.wikipedia.org/wiki/OODA%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97
OODAループ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
OODAループとは、意思決定と行動に関する理論です。
O:観察(Observe) :外部状況に関する「生のデータ」の収集を行う
O:状況判断(Orient) :観察結果を基に状況判断を行う
D:意思決定(Decide) :状況判断の結果、具体的な行動の
方針・計画を策定する
A:行動(Act) :実際の行動に移す
ここで再び観察に戻るのでOODAループと言います。
よく話題に上がるのは、PDCAサイクルでしょう。ここでも、一通り私なりの解釈を書いておきたいと思います。
《参考資料》
https://ja.wikipedia.org/wiki/PDCA%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB
PDCAサイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
PDCAサイクルとは、生産技術における品質管理などの継続的改善手法です。
P:計画(Plan) :業務計画を作成する
D:実行(Do) :計画に沿って業務を行う
C:評価(Check):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する
A:改善(Act) :実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする
面白いことに、OODAループのActはAction(行動)ですが、PDCAサイクルのActはAct(行為)だったりAction(改善)だったりしますが、ある解説では、Adjust(調整)が良いと言われています。
P子「どうりで。PDCAのAがActionなら、Doとの区別がつかないもんね」
個人的には、PDCAより、PDS(Plan-Do-See)の方がしっくりきます。あえて改善を強調するなら、Actionじゃない別の単語が良いのでは?と思ってしまいます。Act(行為)もピンときません。
2.OODAとPDCAの違い
まず、OODAループが流行らない理由を考察する前に、PDCAサイクルとの違いを明確にしておいた方が良いでしょう。
PDCAサイクルはご存じのように、品質改善などの継続的に物事を進める場合に有効な方法論だと思います。今では生産管理だけではなく、人事の目標管理などにも適用されている手法です。
一方、OODAループは『意思決定と行動に関する理論』と説明されているように、もっと一般的な理論...考え方と言えます。OODAループが力を発揮するのは、現場で発生する計画的でない(突発的な)出来事に対処する方法という事になります。つまり、現場での即時の判断で行動を起こすような状況で力を発揮します。
すでに見えてきたと思いますが、企業活動において、突発的な出来事への対処よりも計画的に物事を進める方が組織的ですし、何より現場に判断を任せるというのは、組織的ではありません。いや、社員一人一人が信頼に足る人物でないと、状況判断から決定権まで与えるという事は、企業としてはなかなか容認できないでしょう。
OODAループは、航空戦に臨むパイロットの意思決定を対象にしていました。つまり、現場で即時に状況を判断して行動に移す必要がある場面での理論です。空中戦で本部と連絡してどうするかを幹部会議で決定するなんて出来ないですから。その代わり、一人一人のパイロットには厳しい訓練を行い、正しい状況判断と意思決定が出来る人材育成が行われることでしょう。
さて、これらのOODAループの特徴をまとめるとどういうことかというと
1.突発的な出来事に対処する方法である
2.決定権が現場の個人の判断力にゆだねられ
3.現場の個人にそれだけの訓練を行い、必要な能力がある
例えば、次の例では、東日本大震災(突発的な出来事)の時に、若き店長さんたちの自主判断(現場の個人の判断力)が、日ごろからの経営者の「言葉」(日頃の訓練と必要な能力)により人々の信頼を得られたお話です。
《参考資料》
https://limo.media/articles/-/20574
震災時「5000円の弁当」で儲けた店が3カ月で閉店した理由
2020.11.29 00:00
三科 公孝
こういう話が取り上げられるという事は、それだけ実際にはなかなか見られない事例だという事でしょう。
PDCAサイクルは、継続的であり長いスパンであり、計画(Plan)は経営幹部で策定することが可能で、結果の成否は現場の責任であり、改善(Act)は無茶な計画についてではなく計画通りに実行できなかった現場に問題があるから是正しろという、非常に経営者にとって都合の良い理論だという事です。
P子「また、権力者に対する不満?」
まあ、OODAループはスパイ映画では定番の理論で、そもそも現場が優秀でないと実現できないため、なかなか実践できないんでしょう。
P子「平々凡々な計画通りに物事が運ぶスパイ映画なんて退屈よね」
3.130年前から実践されているOODAループ
観察し、状況を判断して意思決定し行動に移す。これを130年前から実践している人物がいます。ご存じ『シャーロック・ホームズ』です。
P子「そこに行くんですか?」
『緋色の研究』が1887年に発表されていますから、今から134年前になります。もちろんホームズみたいな仕事の進め方を組織で行うと、大抵揉めるでしょう。仕事を進めるうえで、突発的な出来事がしょっちゅう起こってもらっても困りますから。
《参考資料》
https://president.jp/articles/-/24000
2018/02/24 11:00
米海兵隊が"PDCA"より"OODA"を使うワケ その目的は「知的機動力」の向上
https://data.wingarc.com/what-is-ooda-11126
2018.09.03
《図解》 PDCAとの違いは?現場に強いビジネスメソッド「OODA(ウーダ)ループ」とは?
ただし、最近、PDCAの悪い一面を垣間見ました。ある部内の研修会で、年12回の予定でした。少し進め方に問題があるように感じた為意見したところ『すでに年初に部門長の承認を得ている』の一点張りで、途中で進め方を見直すことはありませんでした。計画を年1回策定して上司承認をもらい、それを進める。翌年の計画前にはそれまでの問題点の洗い出しや修正箇所を決めるそうですが(昨年もそうして改善はされています)PDCAサイクルが1年単位というのは少し悠長な気がします。
つまり、PDCAサイクルを回すのは非常に良いことだと思いますが、その中に、OODAループも加味して、現場で微調整が効くような組織が、本当に強い組織になるのではないかと感じました。
4.結論
『OODAループが思ったより流行らない理由』は、OODAをウーダと読めないから。
P子「むっちゃ長い前振りね」
ほな、さいなら。
======= <<注釈>>=======
※1 P子「流行り...かけた...微妙な表現ね」
P子とは、私があこがれているツンデレPythonの仮想女性の心の声です。
スピンオフ:CIA京都支店『妖精の杜』
ここはCIA京都支店のデバイス開発室。安らぎを求めて傷ついた戦士が立ち寄る憩いの場所、通称『妖精の杜』と呼ばれていた。 P子:CIA京都支店の優秀なスパイ。早坂さんにはなぜか毒を吐く。 早坂:デバイス開発室室長代理。みんなから『妖精さん』と呼ばれている。
P子:「早坂さんは、業務年間目標って立ててるんですか?」
早坂:「今年はPythonでシステムを組めるように...」
P子:「それって趣味でしょ。じゃなくって仕事の目標」
早坂:「ん-と。RaspberryPiでIoTエッジAIシステムを組む...とか」
P子:「それも趣味でしょ」
早坂:「じゃあ、Javaのフレームワークの機能強化を図る」
P子:「すべて趣味じゃない? 仕事の目標は?」
早坂:「...仕事を趣味にする...ってのは?」
P子:「やっぱり妖精さんね」