今、話題の人工知能(AI)などで人気のPython。初心者に優しいとか言われていますが、全然優しくない! という事を、つらつら、愚痴っていきます

P31.人事一課監察係(6) [小説:CIA京都支店]

»

初回:2020/02/05

登場人物

これまでのあらすじ

 CiA京都支店に人事一課監察係の大河内という人物が現れた。P子とデバイス開発室の室長と佐倉課長が独自調査の為雲隠れし、城島丈太郎と浅倉南と佐倉課長が別に独自調査を行うことになった。P子は人事一課長に直接会うために東京まで出かけたのだった。

13.プチ切れ

 P子は、別室で待機するように言われた。人事一課長は、キャリア採用の面接を801会議室で行っており、P子はその隣の802会議室にいた。ちょうど窓からゆりかもめが走っている姿が見えた。

 CiA日本法人本社は、東京ビッグサイトからほど近い場所にあり、ビル名もテナント名も公表されていない。実態を把握しているのは、内閣官房の一部の組織だけだった。

(「ゆりかもめってタイヤだから鉄道って言わないのかしら」)

 日本では『新交通システム』という呼称が普及しているが、本来は「自動案内軌条式旅客輸送システム (AGT) 」の呼称の普及を進めている。

 AGTのゴムタイヤは鉄道に比べて負担過重が小さく転がり抵抗も大きいが、駅間の距離が短い場合の加減速に有利であり、勾配の激しい箇所では摩擦の大きなゴムタイヤでしか対処できない場合もある。とは言っても急こう配を登れるという事ではなかった。(ゆりかもめが一回転する理由)

(「そういえば...」)

 P子は、ほんの数日前の出来事を思い出していた。

 大阪出張から京都に帰る際、京阪電車から近鉄電車に乗り換えるのだが、京阪電車の駅から出る時に、ICOCAの残高が 6円 と表示されていた。近鉄電車の先発がすぐだったので急いで入ろうとすると、チャージ不足で入場できなかった。自動券売機でチャージして急いで入場したが、ちょうど電車が発車した所だった。

(「チャレンジせずにチャージしてれば間に合ったかな?」)

 そう考えたが、次の電車が来るまで15分以上待つ必要があった。この時期、密閉された待合室で15分も待つなんて考えただけでもぞっとする。なので寒空の下、ホームで待つことにした。

(「JR東日本では初乗り運賃以上ないと入場制限を受けるが、JR西日本では 1円以上チャージがあれば入場できる...」)

 関西では『いらち』が多いので、ギャーギャー言われないようにとりあえず入場させとこ...という事だと思っていたが、鉄道各社で対応が異なっているのを知らなかった。

 どうも、関西圏私鉄でも PiTaPaなら残額に関係なく入場できる様だった。

(「大体、カードがいっぱいあって、相互運用するくらいなら統一すればいいのに...」)

(「相互運用するのにルールが各社でばらばらって、無駄でしょ...」)

(「カードを統一して、プログラムも統一するかオープンソース化すれば無駄が省けるのに...」)

 今考えると、ほんの些細な事だったが寒空で一人待つ間、だんだんと世の中の仕組みの理不尽さに腹が立ってきた。といってもブチ切れるほどの怒りではなく、ほんの少し(プチ)だけ切れたのだった。

14.人事一課長の狙い

 ノックと同時に「お待たせ」といって人事一課長が会議室に入ってきた。元々会議室のドアは開けっ放しにしていたが、礼儀としてノックしたのだった。

「大河内君を送り込んだのは昨日だったのに、もうここまで来たんだね」

 大河内君というのは、人事一課監察係の大河内の事で、昨日京都支店長と城島丈太郎に面会に来た人物だった。その姿を見たデバイス開発室のミスター"Q"が、その日のうちに、P子に連絡してきて『大衆食堂』で昼間っからビールを飲んでいたのだった。そして今日、P子はここに来ていた。

「私が監察係にマークされていると聞いたものですから...理由をお伺いしたくて」

「まあ、マークしていると言えばしてるけど、マーカーに理由を言える訳ないでしょ...と言いたい所だが...」

 人事一課長は、少し歩きながら窓の方に近づいた。ゆりかもめの軌道が見えていたが何も走っていなかった。

「簡単に言うとバックグラウンドチェックだね」

「採用調査?」

「名目としては、君の情報漏洩調査としているが、ターゲットは君と城島丈太郎君の二人だ」

「え?」

「簡単に言うと、今回大規模なシステム開発案件があって、日本各地のSEから数百人規模で人員が必要になってね」

「それって、スパイとしての能力じゃなくって技術者としての能力が問われてるんですか?」

「そうとも言い切れなくって、普通の技術者も募集しているが開発案件の会社でスパイ活動もしてもらいたいから、SE枠とスパイ枠で人員を選定中なんだ」

「で、私たちはどちらの枠なんですか?」

「どちらもスパイ枠で評価中だよ」

「何なら、SE枠で早坂さんを推薦しましょうか?」

「君も人が悪いね...」

 人事一課長は、そういうと視線をP子から窓の外に向けた。ちょうどゆりかもめが走っている姿が見えた。

「彼はSEとしては一流かも知れんが、チームで開発とか派遣とかは無理でしょ」

「そんなことは無いと...いえなくもない事もないような気がしないでもありません」

「まあ、君のスパイとしての能力は認めざるを得ないが、ギャグと人事課員としての評価は落第点だね」

「構いませんよ。じゃあ、これで調査は終了と言う事で...」

「いやいや、そうはいかんよ。城島君のスパイ能力は継続調査の対象だから...」

「でも、私はまだ東京での任務を受けるって言ってませんけど。それにギャグの能力も足りないそうですから」

「結構根に持つタイプなんだね。でも、二人とも京都支店長の推薦だよ」

「はあ?」

 P子は、今すぐにでも京都に戻り、支店長をとっちめてやろうと、プチ切れした。

≪つづく≫

 ※ 時系列の整理
P子ミスター"Q"城島丈太郎
1日目 AM: 派遣先(黒井工業) 京都支店 来客用会議室
   PM: 大衆食堂 大衆食堂
2日目 AM: 東京出張 二日酔い(休み) 浅倉南に電話
   PM: 人事一課長と面接 午後出勤 大衆食堂(夕方)
Comment(0)

コメント

コメントを投稿する