P09.謎の新任課長 [小説:CIA京都支店]
初回:2019/06/05
CIA:Communication Intelligence Applications(通信情報アプリケーションズ)
P子:CIA京都支店の職員であり、現役のスパイ 兼 SES課営業 兼 SE 兼 教育担当
対外的には、"川伊"と名乗っている。主役のはずだが、最近出番が少ない。
Mr.J:城島丈太郎はSES課の新人SE。もちろんスパイ。
爽やかな笑顔と強靭な肉体の持ち主で、やるときはやる好青年。
Mr.M:CIA京都支店長
口が軽くオヤジギャグが特技。にやけた笑顔で近づいてきた時は要注意。
Mi7:Miracle Seven(ミラクルセブン株式会社)
373:浅倉南。Mi7滋賀営業所に勤務する派遣スタッフ 兼 スパイ。
Mi7とCIAはライバル関係であり、浅倉南とP子も良きライバル。
908:山村クレハ。Mi7のスパイとの連絡係(諜報員見習)
キュートな笑顔と人懐っこさで、男性職員の間では結構人気が高い。
830:矢沢部長。滋賀営業所では営業所長に次ぐNo2で、浅倉南の上司
CIA京都支店のP子や城島丈太郎は、ヨソノシステム様での"金"のフロアパネル事件や、カルイスチール様での機密情報争奪合戦など、Mi7の浅倉南や山村クレハとライバル関係だった。
そんな中、謎の新任課長とともに、新たなミッションが与えられることとなった。
1.謎の新任課長(CIA編)
「P子先輩、電子掲示板の人事情報を見ました?」
通称"J"こと城島丈太郎が、P子を見つけるとに爽やかな笑顔で近づいてきた。
「まだ、見てないけど...」
P子が答えると、当然と言った感じで丈太郎が答えた。
「アップされたのがつい2分前ですからね」
「たまたま見つけた...訳ないわね」
P子がそういうと丈太郎は少し照れた感じで「僕も秘密諜報員ですから」とだけ言った。
「それより...」
丈太郎が話そうとしたとき、通称"M"こと京都支店長が P子を見つけると声をかけてきた。
「P子ちゃん、いい所に。人事情報は見た?」
「いえ、まだ見ていませんけど」
P子が答えると、当然と言った感じで京都支店長が、にやけた笑顔で答えた。
「アップしたのがつい3分前だからな」
P子と丈太郎が顔を見合わせて(あらら)という表情をした。
「今度、川島課長(通称"K")が支店長補佐に昇格したので、代わりのSES課課長が本社から来るんだ」
P子は(本当?)という感情を込めた目で丈太路を見た。丈太郎も(本当だよ)という感情をこめて見返した。
「ただ、当面は本社の残作業を処理しなければならないので、こちらに来るのはもう少し先になるが、すべてメールで連絡が取れるので問題ないだろ」
謎の新任課長(※1)の名前は、佐倉ななみ(さくらななみ)、通称をチェリーと言ってコードネームは"S"だった。実際、支店長が言っていたように、新任課長とはメールのみのやり取りだけだったが、業務が滞ることはなかった。
「P子先輩、新任課長の事がだんだん判ってきましたよ」
翌日の夕方、城島丈太郎に会ったと思ったら、いきなりその話題を持ち出してきた。丈太郎にスパイの新しい任務はなかったが、SESとしての派遣業務は行っていたので支店に顔を出す必要もなかったはずだが、わざわざ戻って来てまで独自調査の結果をP子に知らせたかったのだった。
「佐倉課長ってチェリーって呼ばれてますけど、名前ほど可愛い人じゃなさそうです」
「どういうこと」
「暗殺チームの筆頭与力(※2)だったそうですよ」
「判ったような判らないような...」
「暗殺チームなだけに、誰も彼女も彼女のチームも見たことがないそうです」
「それって、実はプログラム課長じゃないの」
「本人がメールで『私は人工知能ではありません』って返信してきたんです」
「直接メール打ったの?」
P子もそれほど暇じゃなかったので丈太郎との『おふざけ』はこの辺で終わりにしたかった。
2.謎の新任課長(Mi7編)
「南先輩! 掲示板に張り出してあった辞令ってみました?」
山村クレハ(コードネーム"908")は、浅倉南(コードネーム"373")を見つけて小走りに近づいてきた。
「まだだけど...」
南が答えると、当然と言った感じでクレハが答えた。
「ついさっき、私が掲示板に張ってきたんですぅ」
(この娘は男女問わず甘えた口調で来るのね)と浅倉南は思った。
「で、何が...」
浅倉南がクレハに尋ねようとしたときに、矢沢部長(コードネーム"830")が『南君』と言って近づいてきた。
「南君、人事情報は見たかね?」
矢沢部長はちらっとクレハを見た。当然張り紙を依頼したクレハがそばにいたので、その話題を話していたのだと思った。
「実はまだ見てないんです」
「そうか。実は今まで課長不在で私が兼任していたんだが、やっと本社が新しい課長を雇ってくれることになったんだ。当面は向こうの残務があるから来られないが、メールでやり取りできるからこちらの仕事は問題ないと思うよ」
矢沢部長が言っていたように、謎の新任課長とは、メールのみのやり取りだけだったが仕事ぶりはほぼ完ぺきに思えた。
新任課長の名前は、七海さくら(ななみさくら)で、コードネーム"773"(ナナミ)だった。
「南先輩、七海課長の事がだんだん判ってきましたよ」
山村クレハは人懐っこい笑顔で近づいてきた。
「課長は特殊急襲部隊(通称 SAT)に所属していたところを引き抜かれたそうです」
「しかもしかも~超一流のスナイパーで、射撃の最長記録保持者なんですって」
(あれ、SATって女性も隊員になれたかしら...)(※3)
「しかもしかも~誰一人として彼女を見た人がいないんですって」
「でも射撃の最長記録を作った時には周りに誰かがいたんでしょ」
「それが遠隔操作(※4)だったらしくって...自宅のWifiからいつでも狙えるって、ちょー便利」
クレハといつまでも他愛のない会話を続けたかったが、南もそれほど暇ではなかったので、この辺で終わりにした。
3.新たな任務
「P子ちゃん、いい所に」
通称"M"こと京都支店長が P子を見つけると声をかけてきた。
(要するに悪い所にいたという事ね)
P子は、努めて笑顔で振り返りながら答えた。
「何でしょうか?」
「次の派遣先なんだが、マイケル・インターナショナル・テクノロジーズ社(通称MIT)に行ってもらいたいんだ」
「え?支店長自ら派遣先を指定するのって、初めてじゃないですか?」
「まあ、それと言うのも佐倉課長も一緒に行ってもらいたいんだ」
「良いですね。アメリカも久しぶりなんでお土産買ってきますね」
「何いうとんねん。ちゃうちゃう(※5)。MITの大阪支店に行くんやで」
「急に変な大阪弁を使わんといてほしいわ」
「ほな、頼んだで」
支店長が名刺サイズの小さな箱をP子に手渡した。
(???)
「何ですか、これ」
「佐倉課長にきまっとるやんけ」
『川伊さん(※6)、よろしくね』
突然、その小さな箱から声がした。(※7)
「え?あ?佐倉課長ですか?よろしくお願いします」
「二人とも仲良くしてちゃんちゃんこ」
支店長はそう言い残すと、意味不明に上機嫌で去っていった。つまり不吉な予感しかしないという事だ。
4.佐倉課長
(この小さな箱と一緒に派遣先で仕事するって、どうするの?)
P子は支店長の思惑も判らず、この小さな箱...いや佐倉課長をどうするかも判らないまま、とりあえず派遣先に向かうことにした。支店長が言うには、まだ派遣契約も派遣依頼も来ていないそうで営業活動から行うらしい。
(まったく意味不明ね)
先ほどの小さな箱はポシェットに入れてそのまま持っていくようにと支店長が言っていた。このポシェットは、バッテリーなど色々詰まっていたので女性が持つには少し重たく感じた。
マイケル・インターナショナル・テクノロジーズ社(通称MIT)は、今流行のAIとかRPA(※8)のコンサルティングを主業務とする会社だった。顧客のデータ収集やAIに渡すためのインターフェースや前処理(データクレンジング)などにSEが必要であろうことは判ったが、人員募集をしている様子はなかった。
MIT大阪支店のオフィスに着くと、人事担当の西田部長を呼び出した。事前に電話でアポイントメントは取っていたが、5分程度なら時間が取れると言われていた。明らかに『来たければ来れば』的な対応だった。
丸テーブルで待たされること10分、若くて切れ者と言う感じの人物が現れた。
「貴重なお時間、ありがとうございます。私CIA京都の川伊と申します。本日は準委任契約社員の営業に参りました」
「残念ながら、弊社ではそういう要望はございません」
「あ~、えーと。資料作成でも何でも構いませんので、どうでしょうか?」
「事務職ならすでに数名契約しているので大丈夫です」
『こんにちは。私、CIA京都の佐倉ななみと申します』
いきなり、ポシェットに入っている小さな箱から声がした。
「え? あの『佐倉ななみ』ですか?」
「え?」
驚いたのはP子の方だった。なぜ、MITの人事部長が『佐倉ななみ』課長の事を知っているのか?
「いや~、川伊さん...も人が悪い。『佐倉ななみ』を連れてきてるなら、初めからそうおっしゃってれば話が早かったのに」
西田部長はチラリと川伊の名刺を確認すると、打って変わって急に愛想よく笑顔で話してきた。ただ、よその会社の上司を呼び捨てにするとは...
「明日からでかまわないですよ」
西田部長はそういうと「私は次の会議があるので金額と就業条件は事務の女性に伝えておいてください」というとその場を立ち去った。
P子は狐につままれたように一人残されていた。
「佐倉課長。どういうことですか?」
P子が、ポシェットに向かって話しかけていると、西田部長が立ち去った方向から、一人の綺麗な女性が近づいてきた。
「初めまして。西田より話は伺っております。私は浅倉と申します」
P子は、名刺を取り出してにっこり微笑んでいる浅倉という女性を見上げた。
======= <<注釈>>=======
※1 謎の新任課長
情報システム部門のリアル 謎の新任課長
https://el.jibun.atmarkit.co.jp/sysadreal/2019/02/post_13.html
※2 筆頭与力
ウィキペディア(Wikipedia)より
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8E%E5%8A%9B
筆頭与力とは、どういう意味なのでしょう?
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1015734200
※3 SATの女性隊員
SATになる資格は警察官に採用されてからどうするのか?女性はなれるのか?
https://japanesedream80s.com/post-4818-4818
※4 遠隔操作で射撃
PC画面で狙撃OK、USBスナイパーライフルが発売に
https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/news/news/609332.html
欲しいんですけど、今は売ってないのかな?
※5 ちゃうちゃう
A「あれ、ちゃうちゃうちゃう?」
B「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうちゃう。」
A「え?!、ちゃうちゃうちゃう?」
B「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうちゃうちゃう」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q118891991
※6 川伊さん
P子が使っている偽名の一つ
※7 小さな箱
Raspberry Pi 3 Model B+ に、バッテリ、Wifi、スピーカ等を詰めていると仮定します。
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=raspberrypi
相変わらず、CIA京都支店は、低予算でやりくりしています。
音声はOpen JTalk+MMDAgentのメイちゃんの声です。
http://aidiary.hatenablog.com/entry/20131006/1381061297
※8 AIとかRPA
AI 人工知能(Artificial Intelligence)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD
RPA ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3