テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

第3バイオリン 戦力外通告のお知らせ

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 わたし、第3バイオリンはエンジニアを引退するべく退職しました。タイトルだけ見ると「戦力外通告? もしかして会社クビになったのか?」と思われるかもしれませんが、そうではないです。自分で自分に戦力外通告をしました。「代打、俺!」ならぬ「戦力外通告、俺!」です。

■なお35歳には間に合わんもよう

 退職を考えた最大の理由、それは今話題の「妊活」です。

 あまりこういうところでお話することではないかもしれませんが、わたしと夫は不妊治療に取り組んでいます。不妊治療ではストレスや疲労をためすぎないようにすることが重要です。しかし、エンジニアとして働いていると、どうして残業や休日出勤は避けられません。しかもわたしの場合、客先常駐の仕事が多かったので勤務時間をお客様の都合に合わせることが多く、ストレスと疲労はたまる一方でした。

 わたしは現在34歳、一般的に高齢出産といわれる35歳はもう目の前です。あまり悠長にしているとタイミングを逃してしまうかもしれません。だったら今、自分の心身をいたわりつつ不妊治療に専念しようと思い、決断しました。

■辛いです、テストが好きだから

 今だから言いますが、実はここ1~2年ほど前から退職について考えていました。そのころから、自分のテストエンジニアとしての能力の限界を感じていました。勉強したり社外活動に取り組んだりして得たことを実務にうまくフィードバックできないと悩み、自分より若く優秀な人をたくさん見て「自分はこの境地にたどり着くことはできない」ということにもうすうす感づいていました。SNSなどで技術の話題が議論されていても、いつの間にか同じテンションで話に加わることができなくなってしまいました。

 「だったら、優秀な人の2倍も3倍も猛勉強して少しでも近づけるようにすればいいじゃないか。自分の限界を自分で決めてしまったらそこでおしまいだ。だいたい、エンジニアなら勉強するのは当たり前、優秀な人だってものすごく勉強したから今があるんだ。それをやる前から『無理』とか言うのは甘え。気合いが足りない。その程度の気持ちでエンジニアになったのか」という意見もあるかと思います。

 ええ、わたし自身、ずっと悩みました。他のエンジニアの方々は勉強して、学んだことを現場で実践してどんどん先に進んでいます。同じように頑張ることがどうしてわたしにはできないのか。かといって自分に他に何ができるでもないし、生活するためには働かないといけない。いつも自分を責めて、苛立ちを抱えて、夫と口論になることもしょっちゅうでした。

 毎日のように苛立ち、落ち込み、残業で疲れたうえに家事もろくにできない、夫とも口論になる、こんな状態になってまでエンジニアを続けたいのか、ずっと考えていました。ちょうど同じ時期に不妊治療に本腰を入れることになり、また将来的に夫の地元に帰るかもしれないという話もあったりして、これが区切りになるかと思って夫とも相談のうえ、退職を決意しました。

■僕自身IT業界を出る喜びはあった

 退職前の有給消化期間も含めて、エンジニアの職から離れて1ヶ月ほどが経ちました。今ではすっかり落ち着いています。退職したことに後悔はありません。テストエンジニアとしてはたいした実績は残せませんでしたが、それでもできる限りのことはやったと思っています。

 とはいえ、いつまでも夫に経済的に頼ってばかりもいられないので、何か別の仕事を探そうと思っています。確かにテストエンジニアとしては終わってしまったのかもしれませんが、人生はまだまだ続くのです。

■わがエンジニアライフは永久に不滅です!

 エンジニアをやめるにあたって、このコラムはどうしようかとも考えましたが、ひとまずこのまま置いておきます。エンジニアをやっている方、エンジニアを目指す方が読んで面白いと思えそうなネタがあれば書くようにしようかと考えています。そのときは、「元エンジニアが何か言っとるわい」程度にとらえてくだされば幸いです。

 まあ、少なくともコラムのタイトルは変えようと思います。「感謝されるテストエンジニアになる」とか言っておきながら、誰からもたいして感謝されることなく退職するなんて情けない話かもしれませんが、それが現実なのですから仕方ないです。

 最後に、テストエンジニアとして働きながらこのコラムを書くことができて良かったと思います。普通に働いているだけではできない経験もできたし、出会うこともなかったであろう人とも出会うことができました。これまでわたしのコラムを読んでくださった読者の皆様にも感謝しています。これからは書く頻度は下がってしまうと思いますが、ときどき読んでくださると嬉しいです。

Comment(10)

コメント

仲孝浩

お疲れ様でした。
今の時代は家庭が大事な事を分かってくれる旦那さんが
少ないですが、いい旦那さんですね。
誰からも感謝されてないということはないです。
少なくとも、旦那さんと私も感謝しています。
ありがとうございました(^^)

Syou_n

私も第3バイオリンさんには感謝しています(直接お会いすることはありませんでしたが)。
第3バイオリンのコラムは、私がテスト技術に興味をもったきっかけの一つです。
まあ、そういう人間もここに居ます。
ひとまず、お疲れ様でした。

abekkan

お疲れさまでした。

第3バイオリンさんは「JaSST Niigata」などでも活躍されていたし、十分に感謝されるテストエンジニアだったのではないでしょうか。

今後は、私たち若手が気持ちを引き継いで「感謝されるテストエンジニア」を目指したいと思います。


あっ、私は若手じゃなかった(^_^;)

第3バイオリン

仲さん

>今の時代は家庭が大事な事を分かってくれる旦那さんが
>少ないですが、いい旦那さんですね。

ありがとうございます。
夫としても、私が毎日落ち込んだりイライラしたりするのを見るのは辛い、と、退職という選択をすすめてくれました。

仲さんのコメントがJSTQB AL受験の後押しになったこともありました。私のほうこそ感謝しなくてはいけません。
コラムは書き続けたいので、また読んでくださると嬉しいです。

第3バイオリン

Syou_nさん

>第3バイオリンのコラムは、私がテスト技術に興味をもったきっかけの一つです。

そう言ってくださると嬉しいです。
私も書き続けてきた甲斐がありました。

ソフトウェアテストの世界、テストエンジニアという職業にもっと興味を持ってもらいたい、そんな気持ちで書き始めたコラムでしたが、
微力ながらSyou_nさんのお役に立てたようでよかったです。

第3バイオリン

abekkanさん

>第3バイオリンさんは「JaSST Niigata」などでも活躍されていたし、十分に感謝されるテストエンジニアだったのではないでしょうか。

テストにもこういう世界がある、ということをエンジニアライフという場で
発信することができて、私の役割は果たせたかなと思います。
若いテストエンジニア、テストエンジニアになりたいと思う人たちが後に続いてくれると嬉しいですね。

>あっ、私は若手じゃなかった(^_^;)

いえいえ……

吉政忠志

お疲れ様でした!

吉政でございます。

子育ては一生事ですので、万事を尽くすべきと思っています。

良いお子さんが授かることをお祈りしています!

コラムですが、私もエンジニアではないので、是非、非エンジニアの視点でコラムを続けられてはいかがでしょうか。非エンジニア仲間として応援します!!

追伸 その1:うちも子供ができるまで時間がかかりました。(4年くらい) 先輩が、逆さまにして振るとよいよということで、実践し、授かりました。先輩に報告したところ「ばっかじゃないのww」と言われましたが、授かったので万事OKです。人事を尽くして天命を待つ通り、全てやったほうが良いと思います。

追伸 その2:女性の方だったのですねww ずっと男性だと勝手に思っておりました。(どうでもよい話ですねww)

第3バイオリン

吉政さん

>子育ては一生事ですので、万事を尽くすべきと思っています。
>良いお子さんが授かることをお祈りしています!

ありがとうございます。
吉政さんのコラムや、オルタナの記事のご家族のお話を読んでいると、本当に素敵なご家族だなと思います。
うちもそういう風になれるといいです。

>コラムですが、私もエンジニアではないので、是非、非エンジニアの視点でコラムを>続けられてはいかがでしょうか。非エンジニア仲間として応援します!!

技術のことはあまり書けなくなりますが、
エンジニアを辞めてはじめて見えてくるものもあると思いますし、書きたい気持ちがあるうちは書き続けます。
よろしくお願いします。

>追伸 その1:うちも子供ができるまで時間がかかりました。(4年くらい)

そうだったのですね。
なかなか子どもができないと、ちょっと怪しげな都市伝説を信じてしまうこともありますよね。
いろいろな情報があるなかで、自分たちにとって良いものを無理せず取り入れていきたいと思います。

>追伸 その2:女性の方だったのですねww

ええ、それよく言われます。オフ会や勉強会などで他のコラムニストさんや読者の方にお会いして「男性だと思っていた」と言われることがよくあります。
たぶん、私のコラムは文体が硬めなので男性に見えるのかもしれませんね。

リタ

本当におつかれさまでした。
私は一度WACATEで第3バイオリンさんとご一緒したことがある者です。
直接お話しすることはかなわなかったですが、女性のテストエンジニアという立場は同じでしたので、このコラムを読んで勝手に親近感を感じていました。
私も出産を機に色々悩んだ結果、テストエンジニアを退職し、今は違う仕事に就いています。
ただ、テストエンジニア時代に培った経験は今の仕事でも色々なところで活きているので後悔していません。
第3バイオリンさんの今後のご多幸と妊活成就をお祈りしてます!

第3バイオリン

リタさん

コメントありがとうございます。

>私は一度WACATEで第3バイオリンさんとご一緒したことがある者です。
>直接お話しすることはかなわなかったですが、女性のテストエンジニアという立場は>同じでしたので、このコラムを読んで勝手に親近感を感じていました。

おおっ、WACATEでご一緒したことがあったのですね。
コラムを書き始めたころ、「私と似たような立場や境遇の人が読んでくれて、少しでも何かの役に立ててくれたら」と思っていたので嬉しいです。

>私も出産を機に色々悩んだ結果、テストエンジニアを退職し、今は違う仕事に就いています。
>ただ、テストエンジニア時代に培った経験は今の仕事でも色々なところで活きているので後悔していません。
>第3バイオリンさんの今後のご多幸と妊活成就をお祈りしてます!

ありがとうございます。
エンジニアを辞めても、エンジニアならではの目線や論理的思考ができるということは人生において大きな強みになると思います。
どんな経験も無駄にはならないし、生きているうちはチャレンジの連続です。

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