テストエンジニア時代の悲喜こもごもが今のわたしを作った

イ・ムジチ合奏団に思う、真の顧客満足とは何かということ

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 先週、イ・ムジチ合奏団という室内楽団のコンサートに行ってきました。バイオリンを始めた高校生のころから好きだった楽団の演奏を生で聴くことができて、とても幸せなひとときを過ごしてきました。それと同時に、彼らの演奏から、スキルを伸ばすことと顧客満足との関係について深く考えさせられました。

 今回は、イ・ムジチ合奏団の演奏に触れて考えたことをまとめたいと思います。

■イ・ムジチ合奏団とは

 イ・ムジチ合奏団とは、クラシック音楽界でもっとも有名なイタリアの室内楽団です。おもにバロック音楽を中心としたレパートリーを持ち、日本でも人気のある楽団です。これまでに何度かメンバーの交代を経て、今年で結成60周年を迎えました。

 ちなみに「イ・ムジチ」とは、イタリア語で「音楽家たち」という意味です。指揮者は置かずに楽団のメンバーが自発的に音楽を作り上げていくというスタンスを取る、という意味で名づけられたそうです。

■イ・ムジチ合奏団といえば、やっぱり「四季」!

 今回のコンサートで、わたしが最も楽しみにしていたプログラムは、ヴィヴァルディの「四季」でした。「四季」はイ・ムジチ合奏団にとって代名詞ともいえる重要なレパートリーです。コンサートマスター(第1バイオリンの、楽団を引っ張るリーダーのような役割の人)が変わるたびに新しいCDを出すことからも、楽団のこだわりようがわかります。

 クラシック音楽関係の書籍や雑誌にも、「四季」の名盤といえば必ずイ・ムジチ合奏団のCDが挙げられていますし、わたしも好きな演奏なので、クラシックをこれから聴きたいという方に「『四季』のおすすめのCDは何?」と尋ねられたら、迷わずイ・ムジチ合奏団のCDをおすすめしたいと思っています。

 「○○といえばこの人、この組織」と言われるようなコアスキルがあることは、競争の厳しい世界で生き残るために必要不可欠なことです。それは音楽の世界でも、エンジニアの世界でも変わらないことだと思います。

■「四季」以外のレパートリーも大切に

 先に、イ・ムジチ合奏団のレパートリーはバロック音楽が中心、と書きましたが、決してバロック音楽しか演奏しないというわけではありません。

 今回のコンサートでは、「四季」以外にもいくつかの曲目が演奏されました。それらはすべて現代曲で、イ・ムジチ合奏団の結成60周年を記念して書き下ろされた、あるいは編曲された曲ばかりでした。

 重要なレパートリーに磨きをかけることも大切だと思いますが、同じ曲ばかりではすぐに観客に飽きられてしまいます。コアとなるレパートリーを大切にしながら、新曲にもチャレンジしていく。そうすることで観客に対して常に新鮮な驚きと感動を与え続けてきたからこそ、60年という長きにわたって活動を続けることができたのかもしれません(もちろん、他にもいろいろと要因はあると思います)。

 エンジニアも同じです。コアスキルを磨き上げることも大切かもしれませんが、それだけでは応用が利かなくなってしまいます。コアスキル以外のスキルもあわせて伸ばしていく、特に未知の領域にも果敢にチャレンジしていくことも大切です。むしろ、他のスキルがあるからこそ、コアスキルがますます輝くのかもしれません。

■相手の言葉で話してる?

 このコンサートのアンコールでは、楽団のメンバーの方が日本語で曲を紹介してくれました。カンペ片手に日本語で曲を紹介する姿に、観客席からは暖かい笑いと拍手が起こりました。アンコールは全4曲と盛りだくさんでしたが、そのなかには、日本人にとって馴染み深い「赤とんぼ」も含まれていました。

 自分たちの得意な音楽だけ演奏すればそれでいい、ではなくて、観客が理解できる言葉で話す、観客が知っている音楽で伝える。このような謙虚で親しみやすい姿もまた、世界中のファンを惹きつけてやまない一因なのでしょう。

 文字通り「相手の言葉で話す」という場面を目の当たりにして、果たして普段の自分は相手の理解できる言葉で話しているか、理解できる表現をしているかどうか、思わず胸に手を当てて考えてしまいました。

 一流と呼べるほどの高いスキルと、相手の言葉で話す心遣い。このふたつがそろうことで、真の顧客満足が実現できるのかもしれないと考えてみた、秋の夜長のことでした。

Comment(6)

コメント

こんばんは。

イ・ムジチ合奏団の『四季』は初代(Felix Ayo)もしくは2世代目(Roberto Michelucci)コンサートマスターの演奏が素晴らしいです。

演奏者それぞれの全く乱れのない"丁寧"な演奏。澄んだ音色、はっきりと伝わるニュアンス。

はじめから最後(CD全体)まで通して乱れのまったくない息の合った完璧なほどのアンサンブル。バランスのとれた和音。


初代と2世代目で演奏スタイルは全く異なりますが、演奏者、いや「音楽家」としての共通している精神がそこにあります。

プロとしてのスキルを持った人たちが、さらに練習を重ねたんだろうなぁ、と想像します。その人たちが生み出した世界を体験できます。
私が目指す「アンサンブル」のカタチのひとつがあそこにあります。


あ、コラムの本題と違ったコメントを...。^^;

第3バイオリン

tataさん

コメントありがとうございます。

>初代と2世代目で演奏スタイルは全く異なりますが、演奏者、いや「音楽家」としての共通している精神がそこにあります。

>プロとしてのスキルを持った人たちが、さらに練習を重ねたんだろうなぁ、と想像します。その人たちが生み出した世界を体験できます。
>私が目指す「アンサンブル」のカタチのひとつがあそこにあります。

もちろんプロですから日々の練習は欠かせないものだと思いますが、
練習を通して、個々人のスキルを伸ばすだけでなく、イ・ムジチらしいサウンドを追求する、
その姿勢こそが本当のプロとしてのあるべき姿なのかもしれません。
しかもそれを60年間続けてきたわけですからね。

学生の頃は「四季」は有名すぎて、好きな曲というのも少し抵抗のある時期がありましたが、
この年になって聴いてみると、やはり軽くみてはいかんなと思いますね。

>あ、コラムの本題と違ったコメントを...。^^;

いえいえ、全然問題ありません。

ohym

「むしろ、他のスキルがあるからこそ、コアスキルがますます輝くのかもしれません。」は名言ですね!
ぼんやり、「そうかもなぁ」と考えさせられました。
はたして、自分は実践できているかわかりませんが・・・。
相手のわかる言葉・・・まずは英語からか!?w

レイコ

先日イ・ムジチ合奏団のコンサートに行ってきました。
四季はもちろん、追加演奏の「赤とんぼ」にとても感動しました。
音楽はこんなに魅力があるんですね。またコンサートに行きたい。

第3バイオリン

ohymさん

>「むしろ、他のスキルがあるからこそ、コアスキルがますます輝くのかもしれません。」は名言ですね!

ありがとうございます!
音楽のプログラムと同じように、スキルも組み合わせが大事だと思ったものですから。
私も実践できているかと言われたら、「はい」と即答できる状態ではないのですが、
ちょっとでも前進していきたいと思っています。

>相手のわかる言葉・・・まずは英語からか!?w

あ、それ私もですわ^^;

第3バイオリン

レイコさん

コメントありがとうございます。

>四季はもちろん、追加演奏の「赤とんぼ」にとても感動しました。

私も、「赤とんぼ」は良かったと思います。
ちょっと聴いたことのないアレンジでしたが、こういうのもいいなと思いました。

>音楽はこんなに魅力があるんですね。またコンサートに行きたい。

私も久々のコンサートでしたが、やっぱり生の演奏に触れるというのはいいですよね。
今回のコラムも、家でCDを聴いているだけでは決して生まれなかったと思います。

自分が生きているうちに、あとどれだけコンサートに行けるのか、ときどき考えてしまいます。
あと、好きな演奏家が生きているうちに自分はコンサートに行けるのか、も同時に考えてしまいます。

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