トレーナー事件簿
早いもので、トレーナーの仕事を始めてから10年がたとうとしています。その間にはいろいろなことが起こりましたが印象に残っていることを挙げてみたいと思います。
■日本語が読めない外国人さん
Windowsのセキュリティ研修を行った際のことです。その時は10名以上の参加者がいて、そのうちの1人がインド出身の方でした。その方は遅れてきて自己紹介の時にはいませんでしたので、どのような仕事を担当しているはわかりませんでした。
この研修は実機を使用した操作が多くあるため、皆さんに手順書を配り、それ見てもらいながら演習を進めていくというスタイルで行いました。
しかし、そのインド人の受講者は一向に演習が進まないのです。話してみると、その人が行っている仕事はAD関連の操作だということが分かりました。日本語を話すことはできても、読むのはかなり厳しいようでした。これはもう、わたしにはどうしようもありませんでした。まさか、常に日本語を読んで対応するわけにはいきません。彼に頑張ってもらうことにしたのを、今でも鮮明に覚えています。しかし、予想通り、演習はほとんど行っていませんでした。
このような時、トレーナーは大変です。1人に対応することによって、講義全体に影響が及ぶ場合があるからです。
最後のアンケートには、しょうがないのかもしれませんがオール1(1が一番悪い)をいただきました。
■新人研修での強烈なアンケート
某企業の新人研修でのことです。その企業では4月~9月くらいまでひたすら研修を行っており、カリキュラムには「マイクロソフトのMCP試験に合格するための研修」というものが盛り込まれていました。
わたしが担当したのは、「SE歴が2~3年あって、ネットワークの基礎知識を持っている」ことが前提となるコースでした。このコースを新人研修で行うのはかなり無謀だと思うのですが、これもお仕事なのでしょうがないです。
前任者から聞いていたのですが、知識レベルが前提に達していないので、かなりのフォローが必要だとのことでした。
そしていざ講義を行ってみると、なかなか厳しい状況でした。時間をかけて丁寧に説明したのですが、やはり新人には難しかったようです。質問なども常に受け付けてはいたのですが、内容を消化しきれていないので、質問も少なかったことを覚えています。
そして何とか研修を終えて、アンケートを見てみると、ある1人の新人のコメントに、こんなことが書いてありました。
「講師が悪い。しかし、それを反面教師とします」
う~ん、さすがにへこみました。
その生徒は、特別出来が悪いというわけではなかったようでした。ただ、あまり印象に残る感じではなかったですね。
これを機会に、新人研修においては普段の研修よりも注意深く行うよう心がけています。
■クラスの一体感がある講義
先の2つはネガティブな出来事でしたが、ポジティブな出来事も多々あります。その中で最も印象に残っているのは、「研修を行っているクラスがやけに一体感があった」講義です。
確かセキュリティに関する研修だったと思いますが、ある1人の方がキーとなって生徒同士が仲良くなり、日本人が苦手とするディスカッションが頻繁に行われたことを覚えています。そして不思議なことに、そのような雰囲気に飲み込まれ、テンションが上がって講義していたことを思い出しました。研修が終了して、数日後にお礼のメールが来たときは、この仕事をしていて良かったと感じましたね。ただし、このような研修は滅多にありません。
ほかにもいろいろありますが、上記の出来事は今でも鮮明に覚えているので、書かせていただきました。