奥深く悩ましく、そして楽しいソフトウェアテストの世界

テストチームは帰らない

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少し更新が開いてしまいました、HOLLYです。
実行委員長として取り組んでいたソフトウェアテストシンポジウム関西(JaSST'21 Kansai)が無事に終わって、しばらく燃え尽きていました。
しかしまだ火種は消えていないようで、また燃えたい欲がブスブスと出てきたようです。

この感覚はマラソンに似たものがあります。
マラソンは(私感ですが)走っている最中は1秒も楽しいことはなく、なぜこんなに体を酷使するんだ、今すぐ止めたい歩きたい、などと思ってるのですが、完走した後しばらく経つとまた走りたくなるんですよね。あんなに苦しい時間なのに不思議なものです。

この"しばらく"という休息の時間はモチベーションの維持には必要なのかも知れません。

さて今回のコラムは、日々の休息に直結する『残業』をテーマに書いてみようと思います。
つまり、帰らないテストチームについてです。

帰らないテストチーム

開発プロジェクトにおけるテストチームを幾つも見てきたわけですが、いつも思うのはテストエンジニアって"帰らない"人達が多いということです。
もちろん"帰れない"状況下での話ではなく、帰れる状況でも席を立とうとしない。その理由は、だいたい以下の2つのような気がします。

(1) 給与が低いので、少しでも働きたい
(2) 開発チームが帰らないから、帰りにくい

理由の(1)ですが、これはテストオペレータつまりテスト実行メインの要員には切実な問題でもあります。つまり、実行要員の単価の低さに起因しています。
私もテストエンジニアになりたての頃は給与は低く、残業代は重要な収入源でした。
とにかく給与が欲しかったので休出OK!残業喜んで!と社畜まっしぐらだったわけです。
ただ、PLになり売上や利益を管理しだすと、気持ちがわかるからいくらでも残業していいよ、とは簡単には言えなくなるし、無駄に時間を引き延ばそうとしているメンバーとうまく折り合いをつけていかなくてはなりません。
低単価で人を集めるチーム戦術を取るとこうした問題にあたりがちなのではないでしょうか。

理由の(2)は、口には出さないものの、大半がこれだと思います。
テストリーダーが「帰っていいよ」と言っても何か気まずそうにしている。そんなテストリーダー自身も帰りにくさを感じている。根底に開発チームへの遠慮や、テストチームとしての卑屈さが見え隠れしているようで、これが非常にどうかと私は思うわけです。

テストチームが帰るために必要なこと

開発チームとテストチームが分かれているプロジェクトで、開発チームが頑張ってコーディングしているのを尻目に帰ることへの気まずさの原因は、以下のようなものでしょう。

「私達テストチームはコードが書けません。書いてくださってありがとうございます、あなた方がいないと私達は仕事ができません、そんな中でどうして先に帰ることができるでしょう、できるはずがありません」

かなり卑屈的に書きましたが、本当にこう思っているなら考えをあらためなければなりません。

まず、気まずいと思っているだけで行動していない点。
開発を加速させるため、テストチームとして柔軟に行動することは可能なのに、そこまではせずリリースを待っているだけ、という。開発チームとテストチームにある見えない壁、コミュニケーションの問題でもあります。

次に、テストは誰でもできると思っていて、プログラマーより下だと思い卑屈になっている点。
本当に誰でもできるようなテスト活動しかしていないならば仕方ありませんが、今のテストプロセスは上流(シフトレフト)~下流(シフトライト)と広く捉え、分析と改善を繰り返すよう高度に進化しており、テストの重要さも認知されてきています。
テストエンジニアとしてのプライドを持って(高い技術で)仕事をしていれば、卑屈になる必要は全くありません。
どちらが上とか下という話ではないのです。

お互いの立場の理解と、テストチームとして本当に必要とされる行動が伴った時、テストチームは帰るべき時間に帰れるようになるはずです。

メリとハリのエンジニアライフ

「今月は残業160時間突破しました...え、Aさんは200時間ですか、凄いですね!」などと酒席における残業時間のマウンティングも今は昔。
テストエンジニア/QAエンジニアのスキルセットは範囲が広く、とにかく時間を作り、スキルアップし続けなくてはなりません。

帰らないテストチーム、というのは自分たちは成長しない!と言っているようなものです。

残業はすべき時にして、必要のない時にはしない。シンポジウムやカンファレンスへの外部イベントに参加する、研修/勉強会の時間をしっかり確保する、などチームメンバーの成長戦略も立てながら、メリとハリのあるエンジニアライフを考えていきましょう。

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