ゼロにならないもの
51歳になりました。
50歳の1年間は久々に動きが少なかったですね。職場も住居も移動しなかったし、入院もしなかったし......って、どれも頻繁にやるもんじゃない......めんどくさいしお金も減るし。
まだフリーランスのままですけど不満も不安もあまりないです。ネットを眺めていると「派遣は底辺」とか「フリーランス残酷物語」とか非正規雇用はつらいよ的な話がよく流れてきますが、派遣だった頃もそんなにつらいことはなかったんですよね。まあ、イヤなことがあったら速攻辞めてたからで、そういうのに当たったことがないってわけではないんですけど。
次の職場を決めてから辞めたことがほとんどない(つまり、次のあてがないのに辞めてる)わたしですけど、これまで借金をせずに生きてこれたのはプログラマという職業ゆえだと思っています。年がいってるといろいろと厳しくなりますけど、仕事がまったくない、ということはないようです。
わたしがまだ20代だった頃、父親に「会社はどれだけ変えてもいい。だけど職業は変えるな。変えたらゼロからやり直さなきゃいけなくなるぞ」と言われたことがあります。
プログラマをやめたい、と落ち込んでいる時にいつも思い出したのはその言葉で、「ゼロになるのはさすがにまずいかな」とわたしをこの職業にとどまらせてきました。というか、わたしの場合ゼロどころかマイナスになるんじゃないか、と危惧してたんですよね。
というのも、失業してハローワークでの面談がセッティングされた時、杖でよろよろ歩いてるわたしを見た相談員さんとこんな会話をしたことがあったんですよ。
「障がい者手帳はお持ちですか?」
「持ってません」
「それは残念です」
「なんで残念なんです?」
「............申し訳ありません!」
「怒ってるんじゃないんですっ。意味がわからないからきいちゃっただけですっ。責めてないですから謝らないでくださいっ」
「その......一定規模以上の企業にはそういう方をできるだけ雇いなさい、という枠みたいなものがありまして」
「ああ!」(←この時点でようやく察した)
「提出していただいた書類をみたところ、どの企業さんも必要としているスキルをお持ちのようで、そのうえでその枠を埋めることができる人材は少ないですから、手帳をお持ちであれば大企業から引く手あまたなのではないかと思ってつい......」
「でもそれだと、障がいがあるようにみえるのにその枠を埋めてくれないわたしみたいな人が一番不利になりませんかね?」
「............申し訳ありません!」
「怒ってるんじゃないんですっ。思いついたから言っちゃっただけですっ。責めてないですから謝らないでくださいっ」
そんなエピソードがあって、「ゼロどころかマイナス」を実感して、ちょっとびびったんです。
でも、実際のところ本当にマイナスになってるのかはわからないです。だって、採用を断られた理由がそういうところにあったとしても、それをわたしに伝えるとは思えないじゃないですか。
ちなみに、転職エージェントの方と話をした時に、そういう可能性はあると思いますか? と尋ねてみたことがあるんですが、その方は「あると思います」と断言しました。プログラマの仕事に悪影響が出るとは考えないだろうけど、なにか面倒事を起こすんじゃないかと心配される可能性はあるし、そういうリスクを嫌う会社さんはあるでしょう、と。
でも、わたしはそのことをそんなに悲観的に受け取ってなくって、足が悪かったからプログラマをやめられなかったけど、プログラマを続けてきたから自分の稼いだお金で生活ができてるし、イヤだと思った職場に次に仕事に就けるか不安だからという理由でしがみつかなくてすむし、結果としていい感じに生きてこれたじゃん、と思っています。
ですから、「職業は変えるな」という父親の助言はわたしにとってはかなり正しかったんでしょうね。プログラマであることをやめない限りゼロにもマイナスにもならない、という気持ちがわたしをここまで支えてきたんですから。
でも「会社はどれだけ変えてもいい」まで忠実に守ることはないよね(苦笑)。正社員やめようが、派遣になろうが、フリーランスになろうが、一度もネガティブなことを言わなかったうちの父親が、正社員になった、という話をした時にとてもうれしそうだったので、この人にも「正社員の方が安心」という思考はちゃんとあったんだなあ、と思ってちょっとだけ申し訳ない気持ちになったもの。
でも、それでもうちの父親はせっせとわたしをほめるんですよ。娘が職場をふらふら変えようが、50を過ぎようが、わたしが小学生だった頃と変わらぬテンションでほめ続けるんですよ。
「おまえはえらいな! 職業を変えずにここまでがんばってきた! おまえは本当にすごいな!」って。
だから応えるわけです。
「うん! がんばってるよ! ちゃんと自分の稼ぎで喰ってるよ!」って。
そんなこんなでプログラマを続けてるとうれしいことが多いので、まだプログラマやっていこうと思っています。
コメント
ななし
素敵なお父様ですね。
愛されている人は強い。
匿名
私は今46歳ですが未経験からプログラマーになろうと動いています。やっぱりプログラマーになりたいと思います。
ぶぅすか
今年、61になりますが、
まだプログラマやってます。
仲澤@失業者
老人プログラマの仲澤です。
もうすぐ還暦ですが派遣でやってます。
調べてみたら1970年代の定年は55歳だったようで笑えません。
自分が20代のころに「プログラマ35歳定年説」というのがありましたが、
信じるどころかバカにしてました。
体力的にも頭脳的にも楽チンで収入も大きいのにやめるわけなかろう、という訳ですね。
最近の開発プラットホームは当時よりずっと至れり尽くせりで、ますます楽になってます。
重ねると約1mの高さになったマニュアルも必要ありませんし、
秋葉まで解説本を探しに行く手間もありません。
しかも自身が作ったアプリを自宅から世界に発売できてしまいます。
こういった意味においては、プログラマはネット社会上では
特権階級にあるのかもしれないとなぁと思います。
まったく、プログラムを仕事に選んだ自分ってばエライと、しみじみ感じる今日この頃です。
elcaminoreal255
お父様、素晴らしいです。うちの親にも爪の垢を。
匿名
自分もプログラマで人生を終わりたいです。辛いことも少なくないですが、この仕事がとても好きです。いろいろな理由で職場を変えることはあっても、仕事は変えずに続けていこうと思います。
すがり
良い親父さんですね。
まき
私もPG寄りのSE(もしくはSE寄りのPG)をしていますが
30歳にして既に3回転職を経験していて、「これでいいのか」と不安になる事もあるので
ひでみさんの記事に励まされました。ありがとうございます!
ひろ
僕も一人親方やってます!
プログラマーで良かったとよく思います!
記事を読んで、死ぬまでプログラマーでいようと思いました!ありがとう!