キャリア20年超。ずっとプログラマで生き延びている女のコラム。

チンプカ!

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 プログラマ(というかエンジニア全般)を対象に嫌いな言葉を募集したら、確実にランキング上位に来るんじゃないかと思う言葉「陳腐化」。

 初めて、職場でこの言葉を聞いたときは、漢字変換ができず「チンプカ」とカタカナで考えたものだから、「チチンプイプイ」的な魔法の呪文を想像して「なんかかわいい!」とか思った記憶があります(苦笑)。

 業界に入ったばかりのわたしにとって「陳腐」というと、小説やマンガで設定や台詞がありきたりでつまらない的な意味でしかなかったので、それがエンジニアの世界では主に「廃れた」的な意味で使われると知って、びっくりしたんですよ。だって、「ありきたりになるほど使いまわされている」と「廃れて誰も使わなくなった」じゃ、だいぶイメージが違うじゃないですか。いわゆる「枯れた技術」の方がわたしの中の「陳腐化した技術」の初期イメージに近いんですけど、エンジニアが言うそれは「無価値になった技術」の意味合いが強い印象があります。

 ありきたりはつまらないかもしれないけど、エンジニアにとっては大事です。それは基礎的な技術ということだから。

 でも、いろいろがんばって、この技術は自分のスキルシートに載せても恥ずかしくないレベルになったぜ! くらいまでいったものが、そんなもの世間ではもう必要とされてないし、な状況になったらつまらないぐらいじゃすみません。

 「あの時間を返せ~! そしたらまだ陳腐化してない技術の方を勉強する~!」と叫びたくなります。

 この仕事を長いことやっていると誰しも、これで仕事をもらうことはもうないな、と確信しているスキルのひとつやふたつやみっつやよっつは抱え込んでいるんじゃないんですかね。IT業界は流れが速いですから、短期間で廃れる技術も多いですし、それだけにITエンジニアは「陳腐化」という言葉に敏感なんじゃないかと感じます。

 わたしも昔は、「この言語、勉強してもちゃんと生き残るのかなあ」とか思っていましたが、途中から諦めがついた、というか、もうどうでもよくなりました(苦笑)。

 わたしにはどれが生き残るか生き残らないかなんて判断つかないんだから、余計なことは考えず、仕事をもらえた言語をマスターすればいいじゃない、的な。

 言語自体は廃れても、言語をマスターした、という経験は自分の中にちゃんと残りますし、OSでもツールでも言語でも、それぞれに思想みたいなものがあって、こういう考え方がある、こういうアプローチの仕方がある、という多様性を自分の中に抱え込むことは、これからまた新しい技術をマスターするときに、とても役立ちます。

 まあ、あれですよ。腐っても肥料になる、と思えばいいんですよ。そう思うしかないですよ。

 それに、何かが廃れる、というのは、それをしのぐ何かが現れた、ということです(←たまに政治的な何かで廃れるものもあったりしますが)。

 「陳腐化することがない」というのは、「何も新しいものが生まれない」とも捉えられるわけで、そういう状況になったら、かなりつまらないことになると思います。流れが速すぎるのはしんどいですけど、何も流れてない、井戸の底みたいなとこでじっとしているのなら、エンジニアになった面白みがまるでないじゃないですか。

 そんなことを考えていたら、プログラマとしてのわたしがもっとも恐れるべきは、わたしにとってプログラマという仕事そのものが陳腐化することなんだろうなあ、という結論に至りました。

 だって、プログラマという仕事がつまらなくなったら、本当につまらない!

 そう思えば、せっかくマスターした言語が廃れることなんて怖くない…… と言いたいところですけど…… やっぱり廃れたら泣くよなあ(←結局へたれる)。

Comment(8)

コメント

indouxp

こんにちは。

 古い言語(もうあんまり使わない)でも、新しい言語(流行ってる言語?)でも、結局はおんなじ仕組み(ノイマン型という意味で)のコンピューターで動作するので、根本的には同じなのでは。(同じというのは、言い過ぎですけど。)

 結局は新しい言語を覚えるとき、とてもよい土台となっているのではないでしょうか。

 でも、廃れたら、残念です。実は、私の場合は、マスターしたとまで行けなかった言語ばっかなので、大丈夫なんですけど。

ちょびちょび

こんばんは。ご無沙汰しております。ちょびちょびです。
相変わらずお江戸(現在は日本橋なもので)まで毎日出稼ぎに行ってます。それにしても地元には仕事がない……。
先日、コーディネーターさんから衝撃の事実を確認してしまったのですが、なんでもちょびちょびがこの職種で稼働しているダントツの最高齢なんだとか。男性では制御の分野で、もっと先輩が活躍しているそうなんですが。通うだけで、毎日何かの記録を更新していたんだ……。そしてレジェンドになっちゃうのかなー。
そもそも、ちょびちょびは三日坊主です。何事も長続きしません。公務員1年で辞めてるし。正直にスキルシートを書いたら何ページになることか。ブチブチ文句言いながらも仕事をしていられるのは技術を進歩させてくれる人がいるからでしょう。新しいものはちょびちょびにとって正義なんです。
そうは言っても、そろそろ周囲に迷惑かなーと、確率と統計を基にしたカウンセリング業へ移行する準備を進めております。どの職種も同じかもしれませんが、この仕事って愚痴を聞いてもらうにも前提条件の説明からとなると面倒じゃないですか。同じような職種で苦労している人の悩みだったら少しは上手に聞けないかな、とか考えています。

仲澤@失業者

チンプカしたものをあげてみましょう(vv;)。

1.BASIC(特にROM/Disk Basic)
 VBの基はこれですが、もはや無関係の別言語。
2.Pascalもご同様。
3.アセンブラ
 Z80と8086しか知りませんがもはやint3を使う程度。6809と68000は
 かじった程度ですがPowerPC含めてモトローラ系は完全に絶滅。
4.RS-232C(ナマの)
 PCに9pin D-SUBが付いてないし、USBやBluetooth変換はあるものの
 無手順というそっけない言われよう。
5.M$さんの「とりあえず」言語。
 J++、JScriptは絶滅。
6.HTML(初期の)
 もはや手で書くことはないかも。

ソフトがらみ、かつ自分で勉強したもののみをあげただけでもこんな感じ、
もはやスキルシートに載せても意味わかってもらえないかもしれませんね(笑)。

手は出してませんが
7.C/C++(CLI)とF#がレッドブック入りまっしぐら。
8.Windows Phoneは日本のベンダーからシカト状態で変化の兆し無し。

だったりするので、がんばってる人には本当に気の毒です(vv;)。

とりあえず今日の飯は、Windows + C++(+STL+MFC)で食えるので、
この明日の飯は iPhoneとAndroidに比重を移すつもり(大笑)。

真っ赤なレモン

腐ってもアルコールになって上質な香りを放ち人を酔わせるようになる、と思えばいいんですよ。熟成。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


indouxpさん。

> 古い言語(もうあんまり使わない)でも、新しい言語(流行ってる言語?)でも、
> 結局はおんなじ仕組み(ノイマン型という意味で)のコンピューターで動作するので、
> 根本的には同じなのでは。(同じというのは、言い過ぎですけど。)

ただのプログラム好きとしては、おっしゃる通り! なんですけど、職業プログラマとしては、せっかくマスターした言語が廃れると、職務経歴書のその言語の部分が「何もしていなかった期間」的な扱いを受ける可能性があり、大変な痛手になります。
なんともせちがらいことです。
採用を担当される方が、そこんとこがわかっている方ばかりならいいんですけどねえ(苦笑)。


ちょびちょびさん。ごぶさたしております。

技術の進歩は厄介なこともありますけど、おかげで飽きずに続けられる、というのはありますよね。

IT業界の方たち対象のカウンセリング業というのは、需要がありそうな気がします。
有料でお悩み相談サイトとかつくったら儲かるかしら(←私が相談者ではきっと無理)。


仲澤@失業者さん。

私のスキルの中で、チンプカした最大のものは多分、OS/2です。
BASICも「プログラマの基本スキルだ!」と先輩に脅されて勉強したのにチンプカしました。FORTRANはどこかに仕事があるらしいんですが、私の前に姿を現しません。

ところで、C/C++がレッドブック入りしたら、号泣するかもしれません。


真っ赤なレモンさん。

アルコールくさいと言われて逃げられそうな気がしますが(爆)。

仲澤@失業者

>私のスキルの中で、チンプカした最大のものは多分、OS/2です。

ぉぉっ、すっかり忘れてました。ワープでないPS/2のやつまでですが。
DOSxxxx()系とかの関数名がなつかしすぎます(とほい目)。

>ところで、C/C++がレッドブック入りしたら、号泣するかもしれません。

自分もへそが茶を沸かしちゃいますが、
OSと「にわたま」関係なので、まぁそれはないでしょう。
ネイティブコンパイラがないとOSを書けなくなるし(笑)。

indouxp

>せっかくマスターした言語が廃れると、職務経歴書のその言語の部分が「何もして
>いなかった期間」的な扱いを受ける可能性があり、大変な痛手になります。
>採用を担当される方が、そこんとこがわかっている方ばかりなら

それはありそうですね。長く同じ会社さんからの請負の仕事をしていたので、職務経歴書って、しばらくは縁遠かったのです。私も、経歴書の最初の方は、COBOLとかEasy Trieve PlusとかCSPとか、汎用機の言語が並んでます。私の場合は、もうすっかり忘れてますけど。

言語の種類のマッチングで採用する人もいるとは思いますが、そのような人事で成り立つ会社は、あんまりうまくいかないような気がします。面接というフィルターを通したのに、当たり外れが大きいという感じで。

この話題も前回のコラムとつながっていたんですね。返信いただいた投稿を見て、やっと気づきました。希望されるよい場所が早くに見つかることを祈ってます。

tarosuke

技術ってそんなに陳腐化するもんじゃないですよ?

技術の進歩自体は遅いもんです。普通に歩いてるくらいの感覚です。
なので当然技術の陳腐化もそんなもんです。
しかも技術は積層的に進歩するので過去の技術は無駄にはなりません。

急速に陳腐化するのは特定の実装とそれらに依存したノウハウですよ。
これは実装の速度で陳腐化します。次の版が出るとか、そういう速度です。
こういうのは身に付けるよりその都度調べるのが良いかと。

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