キャリア20年超。ずっとプログラマで生き延びている女のコラム。

「そうは言っても」

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 プロジェクトマネジメントに関するセミナーに参加した社員の報告会があり、そこで「NGワードを定めて、会議で発言したり報告書に書いたりすることを禁じる」、という方法が紹介されました。

 例えば「頑張ってオンスケにします」(←どう頑張るんだよ!)とか「次のフェーズで挽回する予定」(←その予定を具体的に示せよ!)とかいう、曖昧(あいまい)もしくは根拠が提示されていない言葉をメンバーに意識させることによって、プロジェクトの進ちょく状況を明確にさせる、という意図があるらしいです。

 それを聞いてわたしは「自分を戒めるためのNGワードを決めるとしたらどんなものがいいかなあ」と考えました。いい感じの言葉をずっと探していたんですが、数カ月も経ってから唐突にひらめきました。

 「そうは言っても」にしたらどうだろう!

 「そうは言っても」は、わりと便利に使えちゃう言葉です。

 例えばリーダーさんが「そうは言ってもスケジュールはどうするんだ」とか言うときは、たいてい「スケジュール的にムリ!」という意味だったりします。「そうは言っても」という枕詞がつくと、「相手の言葉を飲みこんでから拒否あるいは反論する」という感じになって、否定的なイメージが薄くなるので使いやすいんだと思います。

 そういう人間関係をムダにこじらせないための使い方はいいと思うんですが、たまに、あんまり深く考えず、脊髄反射的に「そうは言っても」と使っちゃってる場面があるような気がするんですよ。

 「そうは言っても忙しい」とか言うときは、きちんと内容を検討せず「これ以上忙しくなるのはヤダなあ」という気持ちを無意識のうちに優先してしまい、とはいえ「イヤだ」というのはさすがに大人気ないので「そうは言っても」で粉飾してる場合があるんじゃないか、と。

 その時点ではいいかげんなことを言ってるつもりはまったくないんですが、その日の帰り道で「あれ? もしかして、あれをああすればどうにかなったんじゃない?」とか思いついてヘコむことがあります。

 言葉的にはやわらかいかもしれないですけど、やってることは「拒否」なんですよ。

 だったら、それなりの誠実さをもって対応しなければいけないのに、安易に相手の気持ちや期待を拒絶してしまったのかもしれない、と思うとめちゃくちゃ恥ずかしいです。

 とまあ、そういったことで反省モードだったときに、「『そうは言っても』という言葉のやわらかさに甘えて『否定している』という感覚を薄れさせるのはよくないよなあ」という考えにいたり、いっそNGワードにしてみようか、と思いついたわけです。

 「そうは言っても忙しい」とか言う場合、それは忙しさを理由に否定してもよいものなのか? その忙しさをなんとか調整してでもやった方がいいことなんじゃないのか? と冷静に検証する。これを怠ると、「忙しい」という理由で断ることに慣れてしまって、簡単なことや優先度が高いものも「忙しい」で拒否してしまうことになりかねません。

 「そうは言っても」に限らず、なにかを否定するような言葉を使うときは、より慎重にならなければいけないと思います(もちろん肯定する場合でも慎重さは必要です)。

 なので、「そうは言っても」は「NGワード」というよりは、誰かの言葉を否定するというのはとても重いことなんだから軽く扱ってはいけないぞ! と自分を戒めるための「おまじない」みたいな感じですかね。

 そうは言っても、なんかうっかり安易に使っちゃいそうだよなあ(苦笑)。

蛇足:

 エンジニアライフに書かせていただくようになってから丸1年になります。意外と長続きしてるなあ。もうちょっと続ける気ですので、よろしければお付き合いくださいませ。

Comment(10)

コメント

鬼塚

キャリアが20年もある方が「そうは言っても」なんて今までいってたのですか?

はっきり言って社会人1年生が言うような言葉でUNBLIEBABLEです。今までのリーダーがよっぽど甘かったとしか思えません。

ベテランなんですから最初からできること、できないことをリーダーにはっきり伝えましょう。

大空あゆむ

エラーダイアログで
「そうは言っても致命的エラーなので復帰できません。リスタートしますか?」
とか表示されたら怖いなぁ(笑)

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


鬼塚さん。

ええ、本当にいい年してお恥ずかしい限りです。
周囲のみんながやさしくて本当にありがたいと思っていますが、それにあまえてはいけませんよね。


大空あゆむさん。

> 「そうは言っても致命的エラーなので復帰できません。リスタートしますか?」

なんか本当にそんなエラーメッセージをつくりたくなりました(笑)。
って、さすがにお金をいただいてるプログラムにはそんなことやりませんよっ!

E.I

> 「そうは言っても致命的エラーなので復帰できません。リスタートしますか?」

こんなのも怖い。

削除しますか?[Yes/No]
 ↓
[No]
 ↓
そうは言っても削除しちゃいました。

閑話休題。

実際に言ってた内容はさておいて普段何気なくやってることを反省して
行いを正すというのは貴重な資質だと思いますよ私。

# ところでUNBLIEBABLEってのはどういう意味なんですかね?(いやマジで)

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。


E.Iさん。

> そうは言っても削除しちゃいました。

これは本気でユーザーさんに怒鳴り込まれそうです(笑)。

> 普段何気なくやってることを反省して行いを正す

何気なくやってることだからこそコワいなあ、とか思いまして。
この年になると注意してくれる人が少なくなるので、自分でなんとかしないとっ。

こんばんは。ちょびちょびです。元気になったので、旅に出てました。って、新年度から新規のお客様のところで、バタバタしてただけですが。今回は県境を越えての出稼ぎではなく、地元になりました。Webプロデューサーとでも言ったらいいのか、漠然とした作業です。居候してるお部屋の職員さんがピンチ! ということで、先日データ入力を手伝いました。記号や文字を規則に従って変換する作業は、マクロでサクっと片付けるより、一項目ずつ手入力する方が尊いとされる、なんか釈然としない職場です。そうは言っても、みんないい人だしな。どうしたもんか……。

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。

ちょびちょびさん。

手間ひまかけた方が尊ばれる職場ってありますよね。それで手間ひまかけた結果の方が正確ならまだいいんですけどっ。そうは言っても、本人たちが「こんなにがんばった!」と満足気なので、そっとしておいてやりたい気持ちもあったりします。

よみこ

こんにちは、ひでみさん。いつも楽しく読ませていただいています。

NGワードになるものは結構普段使いしていたりしますね。
ひでみさんの様に深く思い至る言葉ではありませんが、私は「逆に」って使ってしまいます。
「逆に」と言っっちゃったあとで、全然”逆"じゃないし。
と訂正することも2、3回ありました。(駄目だねこりゃ)

ユーザーさんの要求にいかに答えるか、答えられない時の理由や代替案は多角的考えるのは必要ですね。
NGワードを定める事で意識できるなら、良い事だと思います。
わたしもなにか考えようと思います。

全然関係ないのですが、コメントでは辛口なコメントが寄せられたりしますが
人の文章見て辛口コメントを的確にかける人は凄いなあとちょっと思ってしまいます。
私は、書いてある事に納得する事が多いので。
後で、この人はこう言ってるけど私はどうだろうと思うとズバッと否定できない場合がほとんどです
学生の頃「銀河鉄道の夜」読感文で作品に対して否定的な事を書いている人がいて単純に銀河鉄道の夜は好きな作品思った私には衝撃的なものでした。
そんな考え方があるのか~と・・・なんかその時の事を思い出します(笑)

ひでみ

こんばんわです。ひでみです。

よみこさん。いつもありがとうございます。

私は天邪鬼な性質なのか、人の文章を読んでると「逆の考え方はできないか?」とか「他の考え方じゃダメなの?」とか考えちゃいます。
で、他のルートも考えてはみたけど、この人の書いてあることの方がすっきりするよね、とか思って安心してます。

ズバッと否定できることなんて、そんなにはないと思います。
人間のやること感じることですから、否定も肯定も、納得も反感も、まじりあってるのが自然なんじゃないんですかね。
コメントとして書く時には、それのどこかをクローズアップすることになるので、だいぶ斬り込んだ印象になるんじゃないかと思います。

最初っから別視点がないから、迷いがない分ズバッとしているという可能性もありますが(苦笑)。

よみこ

>ズバッと否定できることなんて、そんなにはないと思います。
そうですね

>最初っから別視点がないから、迷いがない分ズバッとしているという可能性もありますが(苦笑)。
なるほど、視野の狭い意見は一見、整っているようでも胡散臭さかったりかっこ悪くなっていることがありますね
私も気をつけないといけないな、と思いつつコメントはいつもドキドキしながら書いてます(底(知識)の浅い人間なのでどうでもいいコメント書いてたり)
だったら、コメントを書かなきゃいいのに・・・なのですが、
「そうはいっても」ひでみさんの文章に触発されて、なんかコメント入れたくなるわけですね(笑)

・・・しかし、私のコメントは誤字脱字だらけです。反省しています(汗)

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