法律ギリギリの経営について
忙しいのと、書き溜めていたのがなくなったので、更新が滞ってしまいました。
今回も昔から書いているネタです。
ライブドアは、元のオン・ザ・エッジという社名からも、違法ギリギリを攻めることをいわば社是としていたわけです。
この違法ギリギリってやつは、幼稚園の先生が「スカートめくり禁止!」って言ったのに対して、「わざとコケて覗く」みたいな感じですかね。
100分割(実際には何回かやってるので数万分割)についても、MSCBについても、夜間取引についても、粉飾といわれた利益の付け替えにしても、「わざとコケて覗く」のと同じ、「確かに法律には明記はされてないグレーゾーンだけれど……」という内容のものです。
わたしは一瞬考えたけど、そこまでできずに見てる同級生みたいなものか。
「あいつは馬鹿だ!」と思いながらも、本心ではうらやましいと思っていなくはない。
しかし、一事が万事、違法ギリギリなら幼稚園の先生(司法側・世の中)も、「いつかは懲らしめないと」と思うのも当たり前の話です。違法ギリギリがあってもよいかも知れないけれど、全部がそれでは「合わせて一本」でしょう。
例えば、「100分割について流動性を高める」(100分割とファンドでのライブドア株売却の関連性について、続・100分割とファンド株売却スキーム)というもっともらしいイイワケをしているけれど、結果、22万人も議決権を持った株主がいたわけで、その経済的不合理は、彼の今までの言動からは説明がつかない。
なぜなら、それはスピード重視のベンチャーとして真逆の方針です。逆に、公共事業がスピードをもってできないのは、議決権(投票権)を持った株主(有権者)の合意を得なければいけないためです。
例えば、駐車場の足りないところに格安の駐車場を作ろうとする。
交通渋滞も緩和され、公共事業として一見良いことに思えるけれど、近辺で駐車場を経営する人にとっては死活問題になりますから反対が起きます。
駐車場を経営する人が社会的強者か、弱者なら公共事業は潰れます(中途半端なときは、公共性が優先されますけれど……)。
同じように、何かしようとすると対立する業界団体から「民業圧迫!」という理由の抗議が起きるので、抗議が起きない当たり障りのない政策しかできなくなるわけです。
企業経営に置き換えると、株主が多くなればなるほどベンチャーと真逆の経営方針を採らざるを得なくなるので、ベンチャー経営者なら避けたい経営方針です(22万人というのは、ちょっとした地方都市の有権者数を軽く超えている……)。でも、今、どうしてもキャッシュが欲しいベンチャーがやることはあるでしょう。
新聞、雑誌などが彼を責めている「売り抜け」うんぬんの根拠は知らないけれど、当時のネットバブルという状況や、「時価総額世界一」というよく分からない目標を考えると、分割によって株価を吊り上げて同時にアドバルーン(M&A)を上げれば、何倍にも注目が集まって株価を維持し易い(高止まりする)と考えた。
その高止まりした株価で、さらに価値の高い会社を買収していけば良い。
「実際の会社の価値は後からついてくる」と考えたんだろうと思う。
つまり、彼が言ってた目標の「時価総額世界一」を手っ取り早く実現しようとすると、安くできるアドバルーンはいくらあっても良いわけで、その1つと考えれば合理的に説明がつく。
「次のアドバルーンに、選挙にでも出るんじゃない?」って思ったら、本当に出てびっくりしたぐらい。
ニッポン放送の買収に使ったMSCB(引き受け先は今はなきリーマン)も、リーマンが大量に市場で売却し続けるので、通常は株価が暴落する。
ニッポン放送の買収というアドバルーンと一緒にやったから株価は維持できたけれど、その利鞘を全部リーマンが持っていったわけです。
このようなギリギリの行為は、その時期は、やらざるを得なかったか、勢いでやったのか。
とにかく、彼がそんなことが分からないはずがなく、分かってやっているだけ罪は重いと思う。
そんな彼の大胆さがうらやましいというのは、例えば、わたしも未だに「前例がない」「できるわけない」で一蹴され続けるのは、本当に腹立たしく思っているからです。
「裏技でも通したろうかい!」と思わなくはない(わたしが言ってることは極めてベーシックなのですけれど)。新しいことをしようとすると正攻法ではなかなか勝てない。
わたしでも、好き勝手な暴れ者に見えるかもしれないけれど……、社内外で暴れるのも、このような公なところで実名さらして煽って書くのも、かなり迷った(ヤケクソの)結果で、実は大変なんです。
「既存の枠組みを壊したい!」と考えているのは、わたしも同じですが、ギリギリの線引きがかなり違う。ホリエモンと一般との中間ぐらいなのでしょうか。
せいぜい、アクセスを稼げそうなネタ(ホリエモン)を持ってくるぐらいしかできない。
ホリエモンは、正直あまり好きではなかったわけです。
しかし、
なぜなら、そういう大きな事業は時に発想が早すぎて一般には理解されないことが多いからです。昔は王様がいて、そういう無謀な投資をしたものですが、今は事実上民主主義共和制の国家がほとんどなので、そうはいきません。国家予算をそういう海のものとも山のものともわからないものに投資することに対して反発する人は多いでしょう。そういう人はこういいます。「そんなことやっている場合か。福祉や社会保障、世界中の飢えている人々に施すべきだ」と。もちろんそれも大事ですが、夢も大事です。停滞した後ろ向き、現状維持の世界に、若者はどういう希望をもって生きるのでしょうか?私は、そういう意味で無謀な、ほとんどの人に理解されないであろう、投資をするためにせっせと稼いでいました。
(落合弁護士ネタ|六本木で働いていた元社長のアメブロ)
私は嫌な努力をしたいとは思いません。ですが、夢を実現するための努力は厭いません。人によっては、その努力を「命を削って」と表現したくなるのかもしれませんが、私はそれくらい大変なことをしていても、「いやー、簡単だったよ」とかいって平気な顔をしていると思います。好きなことをやって稼げているということ自体がハッピーなわけで、それが客観的に大変そうにみえようが、私にとっては「適当に」なわけです。
「額に汗して」とか、のうのうと言える人間が逆に私は良く理解できません。好きなことをやる、夢に向かって突き進む人は、人一倍苦労して「額に汗して」仕事をするのが「当たり前」です。そして、そういう人は自分の努力している部分をひけらかしたりしません。
(田中角栄元首相とタクシン元首相|六本木で働いていた元社長のアメブロ)
この感覚は近いんですよね~。
「努力してる!」って大げさに言うときは、実はしてないときだったりするし(苦笑)。
何をもって努力とするかは人によって違う。イチローは努力しているのだけれど、イヤイヤやっているわけではないでしょう。
努力と苦行は違う。
おそらく、多くの人は努力を苦行と勘違いしてみるのだろうけれど、やっている方は苦行とは思ってないから、「たいしたことはない」と言うために、偽悪的になってしまうのかな。
堀江: 「僕も『モノ書き』になりたいと思ったことがありましたね。山口瞳さんの『草競馬流浪記』( 新潮社) を読んで、こんなふうなのを書いて適当に食っていければいいなって。」(後略)
(「だから、結局、ホリエモンなんだ。 - ショウちゃんのエーガな日常」で引用された「朝日ジャーナル」4月30日号の文章:「堀江貴文氏と浅尾大輔氏の対談」)
わたしも、天邪鬼で素直じゃないから……、照れ隠しか何か知らないけれど、似たことを口にすることはよくあるが、あらためて他人が言ってるのを聞くと「ヤダな~」と思ってしまう。
同属嫌悪(そんな言葉はない)と言うには、わたしは何も成し遂げていない。
何とかしたいのですけれど、若くして成し遂げるには(もう、若いとは言えない?)、ギリギリの無茶もしなければならないのでしょうか?
とにかく、そんな世の中はヤダなと思うのです。
コメント
インドリ
今日の記事も面白いです。
私もこの事件には色々考えさせられました。
私は会計課に所属していた事もあるので、帳簿が案外いい加減なのも知っています。
ですから、この手の手法は出来るかもしれないと考えた事がありましたが
(日本の仕組みはセキュリティが甘すぎる!)
私は根っからの職人気質なので、それをやっちゃあ技術者でなく犯罪者になるので嫌だなと思ってニュースを見ていました。
という事で私は彼が大嫌いなのですが、その一方でフリーゆえに色々企業犯罪を受けてきましたので、彼がそうしないと儲けられないと共感できる部分もあります。
今から思えば、私は職人を目指しているので犯罪者になるぐらいならば死んだ方がましと考える人間ですが、彼は経営者なのでその判断もありなのかもしれないと思います。
世間は偽装されたら怒るのに、偽装会社を優遇したり色々な矛盾をしますしね・・・
しかしそれは、国のシステム不備を許容する事を意味しますので、認めたくはないですがね・・・
ギリギリの線引きは非常に難しいのです。
例えば、最近、資金繰りがつかず破綻した経営者が何人もいます。
そうなったとき社員も大変ですが、経営者はもう本当に洒落にならないぐらいボロボロになってしまいます。
で、その破綻した経営者達が、数年前に払っていた税金は数億だったりするんです。
払ってきた億の税金を、この不況下に貸してくれたら、首つったりなんてことは起きなかったのに……。
それを見ている経営者は、儲かったときに何とか税金を払わないように考えるでしょう。
わたしは残念ながら脱税するほど儲かってないので、考える必要もないのですけれど、ギリギリの線引きは技術以上に幅があって難しいと思うのです。
インドリ
成る程、経営者からみれば、私以上にこの国の矛盾が見えてきますものね。
それに、社員を抱えている以上は、それだけ責任も重大ですし・・・・
私はそういった国の矛盾をなくして、経済活動を合理的なものとし、経営者も技術者も犯罪のボーダーラインを考えずともまともに商売できる国になって欲しいです。
この国自体が可笑しい事だらけなので、世間は不景気などと騒がずに、もっと冷静に足元から見つめ直して欲しいと願わずにはいられません。
実はこの国って、国家システムさえまともであれば、不景気なんてあまり関係ないのではないでしょうか?
生島さんはどう思われますか?
是非に経営者の生の声を聞きたいです。
生島さま
尼崎市武庫之荘(というか、ほとんど伊丹)の田所です。はじめまして。一応、大商の個人会員です(年間1万円の無駄遣いという説も;)
大阪でIT企業をされている、ということで、なかなかしんどい面もあるかと拝察いたします。大阪は、モノ作り&食いモン&衣料品が中心で、なかなか融資もしんどい、エンジェルを口説くのも大変だろうなあ、と感じています。(コラム内にあります通り、中小機構の起業準備セミナーを受けた経験があります)
このクレイジーな時代に社員をやっている方も大変ですが、このクレイジーな時代に社長をされている方も、大変だなあ、と思う次第です。船員も船員ならば、船長だって大変なんですよ。きっと。
ここでは貴重な、大阪発のベンチャー情報をお待ちしております。それでは、もう少し、このコラムを読み進めさせてください。失礼しました。
インドリさん
日本は総合的に良い国だと思っています。
しかし、日本の一番悪いところは、結果平等主義じゃないですかね。
結果が平等にならないと不満を言う人がたくさん出るので、結果を同じにするような不合理な政策が増えるのだと思います。
国の所為というより、みんなの所為じゃないかと思います。
ちなみに、赤字になったら1年前の法人税をある程度返してもらえる制度が、今国会で通るかもしれないそうです。
全国の商工会議所が中小企業経営者の声として長く訴えてきた結果らしい。
田所さん、おはようございます。
クレージーな時代ですね。
本当に大変な状態です。
それでも生きていくしかない。
何も出来ない社長ですけれどがんばっていきます。
同い年ですね。
田所さんもがんばってください。