技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

スタートはエンジントラブルによりローギアのままで

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 十二指腸潰瘍も少し落ち着く。多少の痛みはあるが、どうにか動けるカラダになるまでは回復したようである。と、思うまもなく、学校が始まろうとしていた。

 この春から社会人大学院に通うのは、ずっと前から決めていたこと。痛むおなかをさすりつつ、教室へと向かう。わたしの大学院ライフは腹痛との戦いからはじまるのだ。病気ごときに負けるもんか。

■ウォーミングアップ

 授業は前哨戦。入学式前の早期講座というヤツである。Linuxのコマンドとか、プログラミング基礎とか、そのあたりの内容である。正直「いまさら?」という気持ちもないではないが、顔見せと、学校の雰囲気にも馴れておきたかったので、参加することにした。座って話を聞くだけなら、カラダの方も問題ない。

 そんなノリで受けたものだから、あんまり期待もしていなかった。コンピュータの基本構造、五大装置のおハナシなんてのは楽勝。ノホホンと授業を聞く。

■Back To The Roots

 技術のコトバに触れる。楽しい。やっぱり根は技術屋だ。至福のときである。なんて、油断しているとすごいキーワードが出てくる。フツー、コンピュータの基礎でNUMAなんてコトバは出てこないぞ。どうやら、この先生は脱線するタイプのようだ。

 座して新しい知識を仕入れる。いまは、生徒というポジションである。以前、逆の立場をしていたことがあった。プログラミングの講師をしていた時代を思い出す。こんなに深いハナシができていただろうか。

■言い訳ですか

 手垢にまみれて、聞き飽きたフレーズがある。

 「教えるとは、教わること」

 ほんとうにそんなことが言えるのか?

 誤解を恐れずにいえば、生徒さんというのはお客さんだ。それぞれが、それぞれの思いで、けっして安くはない授業料を払ってその学校を、わたしのコースを選んだのだ。教壇から眺める顔ぶれはたくさんの熱意。

 彼らを前にしてそんなナメたコトバを言ってはイケナイ。

■集中砲火を浴びる

 プログラミングには自信がある。そこらへんのエンジニアより高いスキルを持っていると自負している。だからこそ、講師の声もかけてもらえたのだろうと思う。

 初めて教壇に立ったときは、ノープランだった。自分の技術に絶対の自信があったからだ。教科書を読んで、軽くイメージトレーニング。事前準備はそれだけであった。

 ボロボロの結果。なんとか授業の体裁は保ってはいられたと思う。しかし、教科書以上のことはまったくできなかった。「変数」なんて、コンピュータの素人にどうやって説明すればいいんだ。こういう人たちが生徒さんである。

 あたりまえだ。教科書を読むだけでスグにプログラムが組めるなら、学校なんて必要ない。それでもエンジニアになりたくて彼ら彼女らはここにきているのだ。それを忘れてはイケナイ。自分のあまさを思い知る。

 反省。猛勉強をしなければ。

■刃を磨く

 「教えるとは、教わること」というコトバは耳障りがいい。しかし、自分の知識が浅いことを優しいコトバでごまかしてはダメだ。時間の許す限りは「教わることなんて何もない」と言い切れるまで準備をするべきだ。それが、生徒さんに対する礼儀じゃないのか。

 その上で、彼らから「教わること」もある。真剣勝負の緊張感。事前準備をおこたらないこと。万全の体調を整えて授業を迎えること。そう、プロの仕事を提供することである。

■再び、検査室

 内視鏡の検査を受けたときに、お医者さんに言われる。

 「すぐに済む、準備がきっちりできているから、仕事は速いんだ」

 ハイ、先生。

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル29
  • 痛覚耐久スキル:レベル4
  • 慣用句を疑うスキル:レベル10
  • アドリブスキル:レベル2
  • プレゼンスキル:レベル1
Comment(2)

コメント

組長

こんにちはー。お邪魔致します。


>自分の知識が浅いことを優しいコトバでごまかしてはダメだ。

ご、ごめんなさい!!(涙)読んでいて「うぐっ!」って思いました。笑
精進、精進・・・・。

はがねのつるぎ

>組長さん

お邪魔されました。

合言葉は「ストイック」です。
悟りを開いたお坊さんはたいてい、サボり方も上手だったといいますけどね(^^;

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