技と名がつくと深入りしてしまうスキルマニアのエンジニア

太る宇宙

»

 恐る恐る、体重計に足をかけてみた。自重に反応するプレートが少し沈む。測定。デジタル表示のメータが動き出し、やがて安定した数字。前回の結果より大なり。太った。年末と比べて3キロも。

■身体最適化プロジェクト

 肩こり、腰痛。エンジニアは長い時間、机に縛られる。運動不足は職業病のようなものである。

 「このままではいけない」

 もうすぐ始まる大学院ライフのためにも体力は必要だ。膨らんだおなかまわりも、なんとかしたい。ダイエットを決意する。

 『いつまでもデブと思うなよ』という本がある。著者の岡田斗司夫は、117キロから67キロのダイエットに成功する。1年間で50キロ。そのダイエット法について書かれてある。これを参考にした。

 ダイエットは食餌系と運動系、ふたつの要素から構成されるという。カロリーを軸に需要と供給のバランスである。

 食餌系というのはいわゆる食餌制限。ダイエット食品や、流行のバナナダイエット。あるいは断食などである。運動系はその名のとおり、身体を動かすことだ。カロリーの入力と出力、双方から皮下脂肪に対して攻撃をしかけるのだ。

■ユースケースその1:アクターは食事を制限する

 食餌系のダイエットには、レコーディングダイエットが効果的だ。『いつデブ』で注目されるようになったダイエット法である。食べ物をひたすら記録する。あさ、ひる、ばんの三食はもちろんのこと、おやつやコーヒー、リフレッシュで舐める飴にいたるまで、ひたすらメモをする。水以外の口に入れるものすべて。それだけ。コンビニで売っているメモ帳とペンがあればスグに始めることができる。

 メモ変わりにレコーディングダイエットブログをひとつ作る。もちろん、誰にも教えない。秘密のブログである。食べるごとにケータイから投稿する。食べたものを写メで送信できるので便利だ。

 書いて終了ではない。そこからどうするか。データを収集して現状分析する。カロリー制限を行うのだ。

 分析は数日でじゅうぶんだった。ふだんが、平均して2500キロカロリー前後。週に数回は3000キロカロリー近い量を摂取していた。ふつうに食べているだけで、明らかにカロリーオーバーな生活をしていたようである。

 「食べすぎ」であれば、答えは簡単。ふつうに食べる量を減らせばよい。ストイックなことは得意なのだ。

■ユースケースその2:アクターはこまめに運動する

 平行して運動も開始する。気合をいれてスポーツジムの申込書にサインをしたのが去年の4月。週2、3回のペースで通い続けて、汗をかく。カロリー制限を行っているので、燃料切れが怖い。プロテインは飲むようにした。

 食餌系と運動系のシナジーが効いたのか、ぐんぐん体重が落ちていく。15キロマイナスで安定する。停滞期も乗り越えて、ダイエットは成功した。

 羽が生えたように身体が軽い。

■長期稼動試験

 「どれだけ食べてんねん」

 焼肉。ラーメン。デザート。お雑煮。正月は食べるのが仕事ではないだろうか。1年の健康を願いながら、おせち料理を食べすぎる。

 正月の罪。それは、ふだんの心がけを徹底的に壊してしまうこと。よい習慣だけが休暇をとり、悪い習慣ばかり残ってしまうのはなぜだろうか。日々、節制を行っているカロリー制限も、摂生をしている運動も、ことごとく正月休みをしてしまう。

 堤防はアリの一穴から決壊する。ドカ食いが始まった。まったく、とめられない。食べても食べても、食欲がおさまらないのだ。おなかがいっぱいでも、まだ食べる。食事がおわっても、デザートに手を伸ばす。とにかく甘いものが欲しい。餓鬼道に落ちてしまったようだ。

 なるほど、リバウンドする理由がよくわかった。これは過食だ。

■障害調査

 通常はダイエットを始めて、2~3カ月目で、停滞期がおとずれて、リバウンドがくるという。体重を落とすのに半年。その後、3カ月ほど、体重が安定していたので油断した。身体の機能は個人差が激しいという。スロースターターすぎるぞ、わたしの身体。

 ハードウェアよりの身体機能は、大昔の狩猟時代にプログラミングされたという。当時は、今のように、飽食の時代ではない。獲物を求めて狩りをする生活。いつ、食べるものにありつけるかわからない。獲物をしとめられない日もあるだろう。そのため、食物はできるだけ身体に蓄えようとする。特にカロリーを制限していると身体は「飢餓状態」だと勘違いをするようにできている。

 身体は安定を好む。体温維持や水分比率は常に一定である。この同じ状態を維持しようとする働きをホメオスタシスという。もちろん、脂肪も一定に保とうとする。ダイエットで燃焼した脂肪を取り戻そうとしているのだ。

 強烈に甘いものを欲しがるのも、皮下脂肪を作ろうとしているからにちがいない。身体は太れと言っている。身体の命令をねじ伏せなければならない。体型に反映されてしまう前に、早めのリセットがかんじんである。太古のプログラムをリファクタリングするのだ。

 「リバウンド・コントロール」

 今年の抱負は決まった。

■障害対応

 たくわえこんだカロリーは消費するべきである。毎日のように、ジムに通いつめるのだ。「毎日ように」ではない、「毎日」だ。今まで以上に激しいトレーニングを行うも、限界はある。

 ダイエットは出口よりも入口で調整する方が効率がよい。口に入れるものを見直すのだ。栄養不足にならぬよう、ビタミン+ミネラルを積極的に摂取する。甘いものが食べたくなったときのために、ダイエットクッキーも用意した。食べることが止められないなら、ひとつひとつの食べるものを低カロリーにする。

 自炊だと、ご飯をおかわりしたり、あまりモノに手を出す。お菓子が目に止まれば、デザートにと手を伸ばす。外食なら注文した以上を食べることはないかもしれない。それも選択肢のひとつだ。あえて、ウチごはんをやめてみる。

 正月休みというダイエットインシデントが発生した。起きてしまったことはしかたがない。フォローアップするのだ。習慣の建て直しである。そこで残るならホンモノだろう。

  • 心が変われば、態度が変わる
  • 態度が変われば、行動が変わる
  • 行動が変われば、習慣が変わる
  • 習慣が変われば、人格が変わる
  • 人格が変われば、運命が変わる
  • 運命が変われば、人生が変わる

 「行動が変われば習慣が変わる」ならば、壊れてしまった習慣を変えるためには行動あるのみ。ひたすら走り、脂肪燃焼。

■原因を掘り下げる

 ふと、思う。カロリーオーバーしているから運動する。ではなく、トレーニング量が多すぎてカロリーが不足しているのかもしれない。ゆえに、運動をやめたら過食もおさまる?

 どこか遠くからレベルアップを告げるアラート音が鳴り響く……。

【本日のスキル】

  • コラムニストスキル:レベル17
  • プロジェクトマネジメントスキル:レベル7
  • リスク管理スキル:レベル-7
  • 自己紹介スキル:レベル0

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する