デジタルネイティブとパーソナルナラティブ(1) Born to be Digital
「デジタルネイティブ」。NHKの番組です。テレビなど見るものか。大見栄を切って脱テレビ宣言をしたにもかかわらず見てしまいました。ゴメンナサイ。
今回は情報収集です。目的を持ってテレビを見るのはかまわない。新しいルールを追加いたしました。たった今から適用されます。自分に甘いですか。もっとも、デジタルネイティブに、このようなこだわりなど必要ありません。
あらためまして、こんにちは。スキルネイティブのはがねのつるぎ(旧姓:鋼乃剣)です。
■デジタルネイティブなのでしょうか
「えー。うそやん。例外って」
毎日のようにパソコンとおしゃべりを楽しんでいます。間違いなくデジタルネイティブでしょう。決してアブナイ人ではありません。ネガティブな言葉が多いのは気のせいです。あ、バグが……。
■デジタルネイティブとは何でしょうか
世代論の1つ。アメリカでいうジェネレーションYの次だとか。Xの次だからY。Yの次がデジタルネイティブです。これは数学の授業ではありません。ケータイ世代の次と読み替えたほうが分かりやすいでしょう。
大まかに1990年以降の生まれ、およそ18才以下の子供たち。ある特定の環境で成長してきた世代を指して定義されます。英語圏で生まれた人間が自然に英語をしゃべれるように。日本で成長した人間が普通に日本語をしゃべれるように。子供時代をデジタルワールドですごせば何をしゃべることができるのでしょうか。
デジタルネイティブたちの母国語はパソコンだけではありません。広くデジタル機器全般を包括しています。ネットやパソコンが当たり前のように存在する世界。当たり前のようにデジタルを使いこなす世代。「ビデオの録画に失敗した」という状況などありえないに違いありません。そもそも録画すら必要ないのですから。デジタルネイティブたちは、ソフトウェアを自由自在に操り、サイバースペースを縦横無尽に駆け巡ります。
文章を書くときはテキストエディタ。原稿用紙には書かない。絵を描くときはお絵かきソフト。絵の具を混ぜない。「アナログ」という発想がないのです。楽器を演奏したくなれば? 演奏家は聖域なのでしょうか。いや違う。サウンドスペースには別のネイティブがすでに存在していました。このお話はまた後ほど。
Web 2.0、マルチメディア、ネチズン。ITに絡むキーワードはどれも激しく短命です。デジタルネイティブ。この言葉もまたバズワードとして流され、消費されていく運命なのでしょうか。
デジタルとネイティブ。何気に特別な響きを持つ2つの単語。言葉の力に振り回されていてはデジタルネイティブの名が廃ります。フレーズの解体からはじめましょう。
デコラティブを剥ぎとり、2つの言葉が組み合わさったとき。1+1は2以上になり得るのか。価値観のシナジーを見つけることができるのでしょうか。
■デジタルとは何でしょうか
デジタルという接頭語がつくと奇妙な胡散臭さを感じてしまいます。懐かしい感傷とともに。
10年ひと昔と言いますが、ドッグイヤー、ラットイヤーの世界で生きていると10年前はもはや歴史、伝説です。当時は非ネイティブではなく、非デジタルが多数派。パソコンが使えるだけで仕事がある。平和な時代でありました。
デジタルデザイナー。デジタルアーティスト。デジタルな技術を駆使したデジタルな作品たち。たしかに、表現の技法は新しい。しかし、表現の欲求が新しいわけではありません。
たくさんのPhotoShop、Illustrator使いがいました。デザイナーとなるために難しいことは必要ありません。ソフトウェアさえ使いこなせていればよかったのです。もしかしたら、デジタルネイティブの先駆者だったのかもしれません。
かつてのわたしも、そんなデジタルクリエイターの一員でした。エンジニアだかデザイナーだかよく分からない駆け出しのころ。スキルといえばHTMLと少々のJavaScriptだけ。それでもWebデザインの仕事がたくさんありました。現在の水準では、とてもありえない状況です。
狭義のデジタルとはシステム的な言葉の1つ。より生のコンピュータに近い部分を指していています。いっぽう、広義のデジタルとはデジタルデータで扱うもの全般を指しています。デジタルアイテム、デジタルグッズの省略形。デジタルネイティブのデジタルは後者のデジタルでしょう。
オーディオの世界だとノイズが少ないピュアさ。若干のゆらぎを切り捨てたクールさ。そんなイメージも一緒に追加されるのかもしれません。
■ネイティブとは何でしょうか
デジタルネイティブたちはシステム内部を知る必要のない人たちなのでしょう。しかし、アプリケーション使いネイティブと呼ぶのに抵抗はありませんか?
エンジニアはプログラムを通してコンピュータを理解しようとします。プログラム言語でシステムを理解できる人をネイティブと呼びたい。それも、Javaのようなオブジェクト指向使いに対してではありません。Cのような構造化言語使いに対してでもありません。
アセンブラやバイナリが理解可能な人をネイティブと呼びたいのです。尊敬の念をこめて。音響カプラで会話可能な人であれば間違いなくネイティブです。驚嘆の念をこめて。
デジタルネイティブはGUIを通してシステムを理解します。それは単なるスクリプトキッズなのでしょうか。
数多くのソフトウェアに触れる。結果、コンピュータ的な考え方、センスを獲得したのなら。GUIの向こう側にあるロジックを本能的に感じとることができるのなら。ネイティブと呼ぶに相応しいのかもしれません。
デジタルネイティブたちはプログラマではありません。エンジニアでもありません。必要なのは技術そのものではなく、技術の成果なのです。
■エンジニアとは何でしょうか
デジタルとネイティブ。エンジニアとしてどちらも機械側に近い意味で使いたい言葉。しかし、世間的には最上位層の意味で使われる言葉なのでしょう。ほんのわずか、嫉妬のような感情を覚えました。ネイティブという称号はわたしたちに欲しかったのです。
わたしたちはデジタルではなくエンジニアネイティブです。本当は、ネイティブという接尾語すら不要なはず。わざわざ、ネイティブを名乗る必要もありません。エンジニア、それでじゅうぶんではないですか。
うかつにも新しい言葉に反応してしまいました。まだまだ修行がたりません。
■デジタルネイティブとは何でしょうか。再び
デジタルネイティブとは
- 現実とネットを区別しない
- 情報は無料
- 年齢・肩書き・所属を重視しない
番組の定義です。なんだかすっきりしません。次回は定義を解体します。
遠くからレベルアップを告げるアラート音が聞こえてきました。
【本日のスキル】
- コラムニストスキル:レベル9
- デジタルネイティブスキル:レベル1
- 対PCコミュニケーションスキル:レベル9
- アナログスキル:レベル3
- 音楽スキル:レベル6
- デザインスキル:レベル2
- リスペクトスキル:レベル1
- やきもちスキル:レベル1
- 自己紹介スキル:レベル0