新米武装派フリーランスプログラマ男子(0x1d歳)

ブラック★ハケンプログラマー 第1夜「あとどれだけ叩けばいいのだろう」

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あとどれだけ叩けばいいのだろう
あとどれだけ直せばいいのだろう


 よろよろ……コロッ、スッテーン!

「大丈夫?」

「赤……」

「え?」

「あ、いえ、なんでも! 大丈夫!!」

「あの、(LANケーブルを示して)それ素敵!!」

「……自分で作ったの」

「そんなの、自分で作れるの!?」

「簡単よ……ただの……『より対線』」

「『より対線』……」


もうやめて ビルドはもう通らない
いつか夢見た終電でんしゃが過ぎる


『ああ、ご飯軽くでいい……え、カレー? カレーがあるの!? となると話は違う 冷蔵庫にあるすべての残り物がカレーの上に立ち上がってくる』

「(ケータイにつけられたストラップを見て)あっ……それ!!」

「えっ?」

『Programming Perl: Unmatched Power for Text Processing and Scripting』!!」

「ええっ!? 知ってるの!?」

「わたしも……(スマホを見せる)」

「ああっ、『ラクダ本』の待受け!! ええっ、こんなのどこにあったの?」

「自分で自炊したものなの……」

「うそっ、すごい!! あ、でも、そうだよね、オライリーのページには、こんな色のなかったし」

「もしかして……持ってるの、初版じゃない方?」

「初版には……この色のがあるの?」

「そうなの……初版のは、表紙が違ってて」

「えええっ! そうなの! 見てみたい!!」

「…………あっ」

「(wktk)」

「……見てみる……?」

「えっ?」

「うちの会社にあるから……初版……」

「わあぁぁっ!!」

「ふふっ……」

……

「うわあ、広いね!! サーバラック組み立てとかできそう」

 カシャーッ(ブラインドを閉める)

「? どうかしたの?」

「いえ…… なんでもないの……」

 ピンポーン ピンポン ピンポン ピンポン ピンポーン

「主任……部長さんが……」

「待って!!」

「こんにちは」

「部長……」

……

「実装して この機能」

「り、了解です」

「要件定義、やって」

「わかりました」

「非機能要件」

「……はい……」

「システムテスト計画」

「…………え」

「進捗管理はわたしね 主任はアーキテクチャ」

「…………」

「とにかく泥臭い仕事、全部(ポイッ)」

「…………………」

「ベンダさん……あの……無理……しないで……」

「ううん……わたし、やります!」

「……………………」

……

「うーわぁー! このサーバすごーい! ラックなんて会社のロゴが入ってるー!」

「はい あなたはこれ(Thinkpad X30)

「あ…… い、いいマシン……」

「…………」

「……あ……」

「……ねえ『ジョブズ』?(最新型Mac Book Air) この見積もり、いつまでこの値段なのかなあ?」

「えっ?」

「まだ安くならないのかなあ?」

『サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ!』

「…………」

「……っ、部長……!!」

「わたしが言ってるんじゃないよ? 『ジョブズ』がそう言うの」

 『サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ! サーゲーロ!』


真っ暗で明かりもない 牢屋じみたこの開発室へや
再現するはずもないあの時のバグが見えた気がした

どうして


 産業カウンセリング室。

「そっか…… 嫌われたかな?って、思ってる?」

「…………(コクリ)」

「私……あなたを最初に見たとき思ったんだよね……『ひとみがとっても綺麗だな』って」

「えっ……?」

「たぶんね、あんまりお客さんを嫌ったり、嫌われたりしたことのない、ひとみ」

「そんな……」

「敵対関係を作らないことは、いいこと。 でもね、知らずに敵対関係を作ってしまうのも、当たり前のこと」

「当たり前の……?」

「そう。誰しもそう。『当たり前』は受け入れてしまえばいいの」

「……うん……」

「胸に、ドス黒いものが溜まるでしょう? こんな仕様で本当にいいのかって……こんな期間と工数で、本当に実現できるのかって……」 

「…………(コクリ)」

「でも、胸がね……たとえ吐き気がするくらい不愉快でも、胃に穴が開くことも、会議の前に手の震えが止まらなくなることもない」

「…………?」

「誰かがね、あなたの代わりに、その設計で実装してくれる」

「誰かが……?」

「うん。だから大丈夫。どれだけ腐っても、怒鳴られても、本当の本当に実装するのは、あなたじゃない」

「………………」

「だからミルク、もっと入れる?」


ブラックハケンプログラマー 懐かしい記憶
ただ楽しかった研修あのころ


 (誰かが、わたしの代わりに実装してくれる……? 誰かって……誰だろう……?)

「また残っていくの?」

「はい」

「残業しすぎないようにね」

「はい」

「……アーキテクチャ検討、始めたんだね」

「…………っ」

「(IDEを覗き込んで)やっぱり、きれい!」

「……わかったでしょう? 私とステークホルダーになろうとしても……ムリだから」

「……だから……」「勉強会!」「えっ?」

「一緒に行こう!!」

「べ、勉強会……? ……ダメよ……」

「どうして?」

「だから……ムリだから……ベンダさんを、苦しませちゃうだけ……だから……」

「苦しまないよ!」

「えっ?」

「どんなに苦しくたって、わたしは……本当に本当には、苦しまないよ!」

「ベンダさん……」

「だから行こう! 開発しよう!」

「一緒に、いろんな設計をしよう!」

「いろんな……技術……!!(ホロリ)」


ブラックハケンプログラマー でも動かないよ
シェルを駆けるmakeに願いを もう一度だけ流すから

参考資料: ブラック★ロックシューター

Comment(2)

コメント

embedor

まさかの黒ミク。

誰かが異世界でやってくれる仕事は
残念ながら現実世界には反映されないかと・・・。

だから、誰か代わりに実装して下さい。

terukizm

あ、妖精さんみたいなもんじゃないんですか。ならしかたないね

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