人材育成、講師の視点から(2)
こんにちは、天野勝です。
わたしはコンサルタントという職業がら、人にものを教える「講師」という仕事をすることが多いです。現場カイゼンの導入教育や、C言語でのテスト駆動開発と、かなり多岐に渡っています。
この連載では「講師」をしていて気づいたことを、わたしの視点で発信していきます。
■「可視化」と「見える化」
ソフトウェア開発の現場にプロジェクトファシリテーション[*1]流のカイゼンを導入するという教育を行うことがあります。この教育の主要なテーマに「見える化」があります。ここでは「見える化」を、異常を見えるようにし、行動を誘発する仕組み、および活動のこと、と定義しています。
「見える化」に近い言葉に「可視化」があります。「可視化」は見えないものを見えるようにすることであり、「見える化」はさらにその次のステップになります。何でもかんでもただたんに見えればよいというのではなく、行動を誘発することまで含んで「見える化」なのです。
■失敗する「見える化」
「見える化」という単語は親しみやすいせいか、多くの場所で実際に取り組まれています。が、すべてが上手くいっているというわけではありません。失敗例を分析すると、失敗の主な原因に次の4つの特徴が見られます。
- いろいろ見えるようになったが、何を見ればよいか分からない
- 見えるようにするのに精一杯で、活用できない
- データの入力をさせられるが、どこにそのデータが活用されているか不明
- 正しいデータが上司に分かると、怒られそうだから嘘のデータを入力する
■成功する「見える化」
「見える化」の成功例には次の3つの特徴が見られます。
- 注目すべき事項の異常、および異常への傾向が分かる
- 仕事を進める上での仕組みと連動している
- 異常を解決することが自分達の仕事の成功に結びついている
ソフトウェア開発では、タスクボード(ソフトウェアかんばん)がこの「見える化」の好例です。ただし、タスクボードもタスクをボードに貼っただけで、仕事の進め方と連動しなければ効果は薄いです。進捗の遅れが分かっても、それをチームで自律的にリカバーしようと行動を起こさずに、他人事とそ知らぬふりをしていたら、それはただの共有ToDoボードでしかなく、まして進捗の遅れが見えるたびに、上司に怒られるような環境では、まったくもって効果は期待できません。
■「見える化」のその次
「可視化」⇒「見える化」とステップアップしたその次には何が来るでしょうか? わたしは、「よい文化」を次に置いています。目標に向かって互いが尊重し合い、互いを高めあう、そんな風土ができあがるのです。
ぜひ皆さんも、「見える化」のその次を考えて、「見える化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
[*1] プロジェクトファシリテーション
http://ObjectClub.jp/community/pf/