BUG023 - 【レッドビーシュリンプの憂鬱】カスミさん、エヌ氏、よろしければシリコンバレーでお待ちしてます
年末年始、エンジニアライフで話題のリーベルGさんの「レッドビーシュリンプの憂鬱」を読ませて頂きました。どこにでもありそうなIT企業の職場を舞台にした恐らく日本文芸界初の本格小説でしょう。現役エンジニアならどのシーンにも親近感たっぷりで作品にのめり込んでしまうこと間違いなしです。かくいう私は日本のオフィスワークからだいぶ遠ざかって浦島太郎状態なのですが、作中に何度も繰り広げられる打ち合わせの激しいやりとりから給湯室での本音トークにコンビニのメニューまで、往時の記憶がよみがえりあっという間に楽しく読んでしまいました。
IT業界が日本のメジャーな産業としてすっかり定着している割にはこの業界がいまだかつて小説の表舞台になることはいまだほとんどなかったかと思います。銀行や大学病院あたりは人気の映画やドラマがたくさんありますがこれを機にぜひ次はドラマに進出してこの業界にもっと日差しがあたればと思います。
さて、本作品の投げかけた大きな論点は、イニシアティブというコンサルからやってきた五十嵐さんの「エンジニアは技術力がすべて」という少々過激な主張が正論かどうか、というところのようです。そりゃ、エンジニアを馬のように働かせて客先からお金をもらう会社側からしてみれば全員が飛田のようにコードに命を懸けてせっせとプロジェクトをこなしてくれる社員の方が役に立つに決まってます。
一方で最先端IT企業といえどもエンジニアの誰もが自分の24時間すべてを会社に捧げられるわけではありません。カスミさんのように自分ではどうにもならない家庭の事情をかかえながらなんとか仕事を続けざるを得ない人も相当数いるはずですし、またエヌ氏(実は私が最も親近感を覚えたのはこの人物だったのですが最後にもう一回くらいセリフだけでも出てきてほしかったです、残念)の言うようにどこかの時点で会社の大人の事情を理解し自らをシフトした人も多いはずです。
問題はその左右両極端な両者の中間のどこに線を引くかということになりそうです...が、でも本当にそんなことできますか?どこに線を引いてもどちらか一方が他方を犠牲にしなければならず、結局会社全体が納得できる線の位置なんか決められっこないんじゃないでしょうか?だから箕輪さんのような中間管理職は苦悩し続けるんですよね。
IT企業としての高い生産性を追求しつつ個々の社員の幸福を確保する、という両方を満足するためにはこの線をどうやっても縦にひくことはできない ― そう、縦に引けないなら横や斜めに引くということもできるんじゃないかと思います。つまりイチかゼロではなくて、高い生産性を追求するという目標を共有しながら、個々の社員の制約は職制や給与で調整するということも不可能ではないはずです。
世界中からエンジニアの集まるシリコンバレーは外から見るとイニシアティブのような奴ばかりでギスギスした職場かと思われるかも知れませんが、それは大きな誤解です。私の周りにはカスミさんのように事情を抱えたりエヌ氏より老けてもエンジニアを続けている人はたくさんいます。会社組織、上司、それに職場の同僚、すべてが少しずつ理解を深めればそういった社会は十分実現可能だと思います。私がシリコンバレーでいまも働きつづけられている理由はここいら辺にあります。今年もそういったお話を少しずつしていけたらと思いますので、ご意見ご質問などなど@elcaminoreal255まで頂けると嬉しいです。それでは今年もよろしくお願い致します。
コメント
匿名
家庭の事情があるカスミさんは、引っ越しをしてまで海外で仕事はしないと思う。
在宅勤務であればするんじゃないかなぁ?
elcaminoreal255
そんなこと言わないでカスミさん、待ってますよ―。