BUG024 - 日本の生産性が先進国中最下位とか、どこそこの国に抜かれたとか、どうしても信じられないんですが
生産性、最近よく聞きますよね。日本の生産性が何位に落ちて先進国で最下位とか、どこそこの国に抜かれただの、いやいや一人あたりにすればまだまだどうだとか。雰囲気からするとこんな感じのグラフですかね。
いや、どう考えても昔より効率化してるでしょ
本当に信じられますか?昔に比べればPCの性能もネットワークの速度も格段に向上して、紙と電卓でやってた業務はすべてオンライン化され、外出先からでもスマホでサクサクメール処理して直帰できたり、電話とFAXでピーヒョロロやってた昔に比べれば今の仕事はかなり効率化されています。
仕事だけじゃないです。新しい地下鉄ができて通勤が楽になったり、役所へ行かなくてもコンビニで何でも手続きできたり、スマホでショッピングに何でもかんでもホイホイ予約したり、どう考えても日本の生活はここ10年くらいでかなり効率的になったのではないでしょうか。
これ以上、何を効率化しろってのよ
ところがどっこい。日本の生産性が低い、それどころか年々低下して先進国中最下位とか。いままで発展途上国だろと思ってた国に次々抜かれるとか。どうして?これ以上どこをどう効率を上げろというのでしょう?だいたい「よその国」ってこれ以上何が効率的なのでしょうか?ひょっとしてスマホで歯が磨けたり、ドローンがラーメンの出前したり、AIがコラム書いたりしてくれるんでしょうか?何かおかしくないですか?
さてこの生産性って、いったい何なのでしょうか。労働生産の効率性?でしょうか。それなら、生産性=労働のアウトプット÷労働のインプット?ITエンジニアにしてみれば、アウトプットはお客様に納品するプロジェクトの大きさ、ソースの行数、ドキュメントのページ数、そんなところでしょうか。これが分子ですね。対してインプットの分母は総労働時間、人月数とかそんなところでしょうか。これ以上残業できないのにもっとコード書けと、そういうことなのでしょうか。
生産性=効率性、ではなかった
もうお気づきかと思いますが、間違いですね。生産性=効率性ではなかったのです。タイトルのニュースソースにあった日本生産性本部の資料によれば、労働生産性=GDP÷就業者数(または就業者数☓労働時間)だそうで、分母は人月数でもいいみたいですが、分子は金額、しかも単位は米ドルです。だからエンジニアがいくら最速でコードを書いてもお客さんからもらう金額が同じで、実人月が同じなら生産性は変わらないんですね。
エン・ジャパンという会社が最近行ったアンケートの結果がありますが、ここでも「どうすれば生産性を上げられるか」という問に対して、多くの人が「◯◯を効率化する」と回答していて、「売上を上げる」とか「人月単価を上げる」という金額に直結する回答は見あたりません。ほとんどの回答者が生産性と効率性を混同しているようです。
分子を増やすか分母を減らすか
この生産性の定義に従って数値を上げるには分子にあたる金額を増やすか分母にあたる労働力を減らす、しかありません。無駄を省いて労働時間を短縮しろ、って正論ですが、限界があります。1位のアイルランドを抜くには生産性を2倍以上にしなければなりません。分子がそのままなら分母の人月数を全国全産業で半分以下にしなければならず、絶対無理な話です。
さて「シリコンバレーの生産性は日本の◯倍」、とか言ってる意識高い方々、いやー、これはいかにもカラクリが多そうな感じがしてきました。まだ今年も始まったばかりですがこのテーマについてちょっと真面目に考えてみたいと思います。ご意見ご質問などなど下のコメント欄、またはTwitterで@elcaminoreal255まで頂けると嬉しいです。それではまた。
コメント
仲澤@失業者
デービッド・アトキンソン氏の指摘にある
・日本は「GDP世界第3位」の経済大国であるであるが、1人あたりのGDPに換算すると先進国最下位(世界第27位)
の事ですね。
これに関して言うのであれば、GDP=国内総生産はざっくり言うと「市場で取引された総額」であるので、これには株式取引や通貨取引などの「実質的には何も生産しない額面」も含まれます。
また、壊れやすい商品が大量に消費されると総額面が増加に寄与します。
一方、日本は低価格高品質高耐久を旨としています。
いずれにしても、GDPを生産効率の指標にするのは本質的な誤りが含まれていると考えてよいと思います(笑)。
まりも
経済学という分野全体を車輪の再発明しようとしてませんか?
elcaminoreal255
そうですよね。人口一人あたりかどうかにかかわらず、売上が分子にある以上、生産性のランキング?と生産効率の指標がごっちゃになってるのは誤解を招くと思います。
elcaminoreal255
>まりもさん
そうですね、生産性、って数値自体が再発明かとも思います。
amat
あまりに考察がひどいので突っ込んでおく。効率(生産性)が上がることと、便利になることはイコールではない。例えばあなたが挙げているコンビニで手続きの話は、あなたの労力を誰か他の人が肩代わりしているだけだ。どんなに便利になろうと、それに関わる全体の労力やコストが減少しなければ生産性が上がったとは言わない。テクノロジーの発達は生産性を上げる環境を整えたけど、結果が伴っていなければ(生産物の量あるいは価値の増加か労力の削減)やはり生産性が上がったとは言えない。
また、株式取引や通貨取引で金銭的価値を生み出している人は多くいるし、それを生業としている人だっている。更に、実体を持つものを生産している会社の殆どが株式会社であり、株式取引がそれらの生産を支えているという側面が見えていない。
あなたの仕事関連でこれ以上効率化が無理というのは私では判断できないけれど、その事実がすべての業種に適用される訳でもない。実際、私が働いている環境ではどう考えても非効率な仕事のやり方がまかり通っている。そして、全ての職種においてもうこれ以上効率化の余地が無いとはどうしても思えない(もちろん農業など限界がある職種はあると思う)。
また、コストパフォーマンスで考えれば、例えば過剰な品質を求めずに、今の生産物の9割のクォリティしか保てなくても、労力を3割カットできたならそれも生産性が上がっていることになる。それが許されるかどうかはまた別の問題だが。
但し、当該調査の結果日本の順位が最下位だったとしても、即日本が他国より生産性が低いとは言い切れない。極端な話金銭的な価値が高い分野だけに絞って生産し、それ以外の分野を切り捨てれば生産性はある程度は簡単に上げられるはずだけど、日本でそんな事はまずできないしするべきでもない。逆に、EU圏で上位に入っている国の特に人口が少ない国や経済規模の小さい国は、その割り切りを大胆に行っている為生産性が高く、割り切ったところはEUに依存して凌いでるだけ。規模的にOECDランキングの中で比較する意味があるのは、アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス位。
最後の方の疑問は上で書いた通りだけど、そもそもアイルランドやシリコンバレーと日本の経済規模や市場規模および分野が違い過ぎる。特にシリコンバレーは金銭的価値が高い分野に特化して生産している地域であり、そんな一地域と多種多様な分野で生産している日本を比較してもシリコンバレーが生産性が高いのは当然。そんな比較で「だから日本は~」とかいう人は鼻で笑えばよい。
elcaminoreal255
鋭いコメントありがとうございます!