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BUG008 - 祝開通!新幹線で行こう!シリコンバレー発ロサンゼルスの旅3泊4日~さていったいおいくら?

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 さぁ、来週はサンクスギビング、一年間必死に働いたITエンジニア達に木曜から4連休です。月火水に有休を取って一週間で海外に行くって手もありますが、この国民的連休は航空運賃が信じられないほど高いので無難に近所で過ごすか、せいぜいロサンゼルス(以下LAです)のテーマパークやアウトレットへ小旅行というのが家族持ちエンジニア的には無難なチョイスでしょう。サンノゼからLAまでおよそ550km、高速道路I-5号を車でかっ飛ばせば休憩を入れても6時間です。この時期、少し肌寒くなるシリコンバレーから常夏のLAへ、ミニバンに荷物を満載にして一路南を目指す家族、ありがちな姿です。

 ご存知の通り、このルートにカリフォルニア新幹線が計画されてます。550kmというと東京から新神戸くらいですが、ドクターイエローをパクったような黄色い車体がこの砂漠地帯を時速300kmで貫通すれば、サンノゼからLAまで2時間半も夢ではないかもしれません。ディズニーランドやアウトレットの滞在時間が増えたら子供達も奥様もきっと大喜びでしょう。何せ相手は天下のシリコンバレー、カリフォルニアです。その経済波及効果は計り知れません。日本が官民あげて新幹線を売り込むのも当たり前でしょう。

 しかし、ここから冷静になりましょう。まず所要時間です。カリフォルニア新幹線計画は度重なる予算削減でサンノゼ、LAなどの大都市近郊では在来線を走ることになってしまいました。いわゆるミニ新幹線ですね。おまけに当初の計画を変更して建設費削減&環境保護のため峠を迂回することになりそうです。まさかディーゼルの在来線のCaltrainと軌道を共有するとは思えませんが、残念ながら2時間半は難しそうです。そしてその在来線ですが、日本ならどの新幹線の駅でも多数の地下鉄、私鉄が機能的に接続していますが、アメリカではそういうものはほぼ皆無か、あっても日本のようにまともに機能してません。つまり自宅からサンノゼ駅で新幹線に乗るまで、それとLA駅からディズニーランドのような目的地までは自動車以外の交通機関がまるでないのです。

 シミュレーション的には、おそらく空港を使うように、自宅からサンノゼ駅までは自家用車を使い、駐車場に止めてシャトルバスで駅へ移動。きっとやたらと厳重なセキュリティを通過して新幹線に乗り、LAで降りたらレンタカーを借りて目的地まで移動、ということになるのでしょう。こういった両端の時間が結構バカにならず結局、自宅を朝7時に出てもスペースマウンテンに乗って外に出てきた頃には11月下旬の太陽はすでに傾いて本物の星空になっているかも知れません。

 次に費用をざっくり計算しておきましょう。新幹線の料金がJRの東京~新神戸とだいたい同じだと仮定すると、大人15,000円、子供7,500円、大人二人子供一人で往復75,000円です。これにサンノゼ駅の駐車場が4日分で5,000円、LAでのレンタカーが4日分で25,000円、ガソリンはLA滞在中だけなので5,000円として、合計11万円。けっこうかかります。これにホテル、食事代、おっと忘れてましたディズニーランドの入場料もかかりますが、これは自家用車で行っても同じなので省略します。

 さて一方、自家用車です。朝7時にサンノゼを出れば事故渋滞でもない限り確実に午後1時にはLAのほぼどこへでも到達できます。シャトルバスやセキュリティを待つ時間、レンタカーを待つ時間、そういういかにもアメリカ旅行で想定外のトラブルに巻き込まれそうなことは心配無用です。片道550kmとLA周辺を燃費15km/LくらいのファミリーSUVかミニバン(たぶん日本車)で走ったとして往復80リットル少々。最近安くなってきたガソリンが1ガロン2.9ドル、ハイオクでも3ドル、ということは現在の為替で1リットル90円くらいですから、ちょっと多く見ても合計でたった10,000円です。もちろん高速道路はすべて無料。つまりお父さんさえがんばって片道6時間運転して、滞在時間が少し短いのを我慢すればたったこれだけの費用で済んでしまうのです。それなら有休取って、浮いた費用でもう一泊しちゃえ!ということになるわけで、普段の連休はじっとして年末に有休をまとめて取るという行動パターンに繋がっていると思われます。

 少なくともこの例では新幹線が自動車に対し費用では完敗、時間ですらほとんどメリットないのが明確です。日本の新幹線は、日本の高いガソリン代、法外な高速料金、そして接続する在来線の利便性といった日本固有の条件が重なった上での優位性といえます。さらに都市間の平均距離とか、一人あたりの旅行者の平均移動距離といった値もアメリカより全然短く、新幹線に有利なはずです。また、ここでは計算しませんでしたが、サンノゼ~LA間ですら飛行機がじゃんじゃん飛んでますし、そこにも新幹線は優位性を示さなくてはいけません。一方、さらに距離が長くなると、例えばサンノゼからラスベガスはおよそ1200km、自家用車なら9時間以上掛かりますが、こうなると新幹線の敵は自家用車ではなく俄然、飛行機でしょう。新幹線の最高かつ最後の訴求点は安全でエコな乗り物であるということですが、それがどこまで「シリコンバレーな人々」に浸透するかはわかりません。

 こんなに予算使うのだったら、同じ金額でサンノゼに地下鉄でもモノレールでも建設して日々の通勤を改善してほしいのですが、、。そんな愚痴を言いつつ家族サービスの最後にLAでの家族サービスを終えて帰りの新幹線で駅弁をつまみに一杯やろうかというお父さん、残念ながらサンノゼについてからも車で自宅まで帰らないと行けないので飲むのは家についてからですよ。それではまた。よいサンクスギビングを。

Comment(1)

コメント

elcaminoreal

すいません。肝心のガソリン価格の計算、間違ってました。現在なら、1リットル90円前後ですね。ちょっと余計に走ったとして残りの計算はそのままにしておきます。大変失礼いたしました。

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