『エンジニアのためのExcel再入門講座』――コードだけでなく、Excelだってビューティフルにしよう
エンジニアのためのExcel再入門講座 吉川昌澄(著) 翔泳社 2010年1月 ISBN-10: 4798119474 ISBN-13: 978-4798119472 2310円(税込) |
■Exceにまつわるエンジニアの叫び
「Excelの方眼紙はやめてくれー!」
「遂にMac版のExcelで方眼紙テンプレートが標準搭載されたらしいぞ! ガクブル」
今日もTwitterのタイムライン上で、技術者の心の叫びがこだまする……。
かつて、上司によく小言を言われました。
「ソフトウェアの特性を生かした使い方をしろ。一般ユーザー向けソフトだからこそ、技術者としてきちんと勉強しろ」
「Excelは、表計算ソフトであって、表作成ソフトではない」
前述のように、Excel方眼紙に苦しめられているTwitterユーザーのつぶやき(もはや叫び)を時々見掛けます。私自身、現場で「なんでこんなことに!?」と思わず頭を抱えたくなるような使い方を目にします。優秀なExcelが泣いています。
もっと、使いこなして業務に生かしてあげてください。これはヘルプデスクとしての切な願い(もはや叫び)です。
■エンジニアだからこそ、Excel
さて、本書は「Excelの機能を知り尽くしている(はずの)優秀なエンジニアであるにもかかわらず、Excelを使って作成したドキュメントはなぜこうも見にくく、再活用が困難であるのか」という誰にとっても覚えのある疑問から出発します。本書のテーマはずばり「読みやすいドキュメントをいかにしてExcelで作成するか」。
Excelはあくまで手段であり、目的ではありません。目的(=ドキュメントを作りたい)を果たすため、手段・道具(=Excel)を使いこなす。その際に役立つ知識、すなわち
- 表のレイアウト
- データモデル
- 可読性の向上
- メンテナンス性をいかにして考慮するか
などのノウハウを解説しています。非常にシステマティックです。
また、表ドキュメンテーションのノウハウという観点だけでなく、データ分析やグラフによる「見える化」、業務の流れに沿った帳票の作り方にも言及しており、現場のメンバーから管理職まで、幅広い人材が読むべき内容が網羅されていると感じます。
巻末には、ドキュメント作成に有効なExcelの操作メモ、さらに章の間には筆者のコラムもあるという親切設計。あまり使う機会がない小技やTips、筆者の体験談などが書かれており、「Excel萌え」の私としては、非常に楽しく興味深く読めました。ここに記載されているExcelの操作知識は、エンジニアであれば押さえておきたいところです。
■まとめ:Excel萌えヘルプデスクの必読書
「入門」とタイトルについていますが、あくまで「エンジニアのための」本です。
Excelの操作知識が十分にあるエンジニアが、より良い「素敵ドキュメント」を作成するための知識や考え方、Excelの小技が網羅されています。決して「Excelの使い方」ではないので、Excelの知識が浅い人は、まずしっかり基本をマスターしてから一読することをお勧めします。
細かいノウハウを紹介することはあえて避けましたが、エンジニアならば読んでいて楽しくなってくるはず。日々、現場で「どうしてこういうことをするのですか?」と、作り手に詰め寄りたくなるExcel帳票を見ている私としては、「必読書」として自社で推薦したいです。
そして、ますますExcelの奥深さにハマりそう……。勉強、勉強!
●おまけ:編集部おすすめのExcelコラム
・次世代ソフトを提案する。 ―Microsoft編―
同じくヘルプデスクのコラムニストがつづる、次世代ソフト妄想。「ExcelとWordの究極合体「Exord」(エグゾード)」は必見。
Excelは使う人によって、驚くほどの差が出る。見た人が「格好良い!」と鼻血をふくほど華麗にExcelを使いこなせるエンジニアになりたいものだ。
(“アラサー”IT系女子の来し方行く末』コラムニスト 組長)