転職しました。
初詣のおみくじは小吉でした。今でも覚えているのは、今でも手元にあるからです。
次のようなこと、こまごま書いてありました。要約すれば「前半いろいろあるかもしれんけど、後半信じてファイト!」でしょうか。
「このみくじにあたる人は、初は心の思うまゝに何事も成し遂げ難しといえども、はげみて時節を待たば後にしあわせあるべし」
「病気は長引とも命にさわりなし」
「よろこびは初めは思うようにならず後よし」
「すべてこのみくじは初悪しく後よきかたちなり」
境内で一読し、どうしてだろう、何だかとても気に入ってしまったのでした。今年1年のお守りにしよう、と、生まれて初めて神社の木に結ばなかったおみくじ……。おみくじを持って帰っただけの話で「生まれて初めて」というのも、少々大袈裟なものいいですが。
2009年。実は早々に体調を崩し、この5月からは休職しておりました。前半が“心の思うまゝに何事も成し遂げ難”き状況だったかといえば、確かにそのとおりかもしれません。
他にもいろいろな出来事や思うところがあって(そのうち整理して文章にできれば良いな、と考えてはいます)、タイトルの通りですが、転職しました。
7月から、「特許翻訳家」として仕事をしています。
ひとくちに特許と言っても分野は多岐に渡りますが、わたしの専門はもちろん(?)コンピュータ及び情報通信技術。とはいえ、その内容も実にさまざま。ビジネスモデル自体の保護が目的と思われる、調達から納品までのITシステムを包括する特許の後は、マイコン内蔵の機械部品について、微に入り細に入り説明する明細書に取り組んで。技術的な知識の“幅”については、開発者として会社にいた頃よりも広く求められていると感じます。(“深さ”は、それほどでもないですが。というより、このうえ深さまで求められたら、倒れますが。)
既に5件ほどを英日翻訳しました。仕事をはじめてまず不思議だったのは、やたら英文がすらすら読めること。あくまで“当者比”ですけども。
もともと英語は、ハリー・ポッターの第1巻を原書で読んだくらい大好き。ただ技術文の雰囲気には、どうも馴染めないと思っていました。単語の意味や修飾関係は分かるのですが、まったく話についていけないのです……。学生時分、ネットで英文特許を検索して読解に挑戦したものの、10行あたりでギブアップした覚えがあります。
(あの時から、何が変わって、読めるようになったんだろう……?)
逆にいえば、こんな疑問。
(学生の頃に読めなかった1番の原因は、何だったんだろう?)
――ひょっとしたら、もう気付かれているかもしれませんね。会社員時代、語学に関して特別な努力をしたわけではありませんから、英語力はほとんど変わっていないはずです。
仕事で英文を読んでいるときの、頭の動きを思い返してみました。
すぐに分かりました。
知らず知らずのうちに、内容の先取り、つまり予想しながら読むことができるようになっていました。
例えば、(データなどを)“retrieve”(取得する)という単語にぶつかったとき。ほとんど反射的に、うっすらと“order”(整列/配列する)、“parse”(解析する)、などなどの単語と、そのイメージ映像が浮かんでいることに気づきました。いずれも「データを取得する」後に出てくると思われる処理で……明らかに、英語の勉強だけでは養えない連想回路。
SE生活を通じ、いつの間にかこんなところが育っていたみたいです。さらに組み込みSEだったおかげで、回路図の読み方や素子の名称に馴染めたことも、大きかった。ある部品名を目にした時、パッとその姿形が思い浮かべられることと、説明を文法的に正しく解釈できることは、一見つながりが薄そうなのですが……文章を理解する、という大きな視点でみれば、どちらも欠くことのできない要素なのでしょう。
考えてみれば幸せなことです。自分としては(ITつながりではあるものの)異業種に転向したつもりだったのですが、そこで技術者の経験が生かせているということ。また、前の仕事で――自覚こそなかったものの――ちゃんと成長してたんだよ、と、教えてもらった気がします。
他ならぬ自分自身の成長ですが……むしろ自分自身のだからこそ、たまには特別の時間を設けて振り返ってあげる必要があるのかも。
2009年後半、最初の1カ月が終わろうとしています。年初に立てた目標や計画を振り返って、前半の反省をされた方もいらっしゃるでしょう。反省というと、ついつい、達成できなかった項目や上手くいかなかった点に目を向けてしまいがちですが、まずは「達成できたこと」や「成功体験」を、心に並べてみてはいかがでしょう? ひとりでに“自然体の自信”が湧いてくること請け合いです。