「メルマガ」って、もう古いですか? ~“情報流通技術者”の喜怒哀楽+α その3
【+α】メルマガって、もう古いですか?
引きこもりを抜け出そう。
そういった動機でメールマガジンを始めた知人がいます。よちよちと進みかけた彼の夢は、【怒・哀】編で取り上げたような濡れ衣メールに襲われ、残念ながら潰えてしまいました。結局は別の形で社会に出ていけたそうなので、まだ救いがありますけれど……。
……それにしても、「引きこもり状態から社会復帰するきっかけに」とは。
そのような大きなきっかけになるんじゃないかと、託されるだけの魅力を持っていたメルマガ。最強の営業ツールとして 熱い視線を注いでいた企業にも覚えがあります。現在の期待値は、かつての何分の1、何十分の1にまで落ち込んでいることでしょう。
と言いつつ、わたしは今でも「託す人」。
もう胡散臭いと思う人の方が多いでしょうか――「ITがもたらす豊かな未来」「インターネットの可能性」――そんな言葉が心の核を離さないまま、何か自分にできることはと手当たり次第に探る日々を送っています。
伝えたい人と受け取りたい人の間にある障壁。人はもともと100%理解し合えるようにはできていない、なんて前提があるにしろ、IT/ICTはその障壁を常に下げようとしてきました。
より早く、より安く。まるで2つの想いが、隣同士にあるかのように。
それって素敵! ――率直なこの感情が、大部分を支えています。意外と体力勝負な情報処理技術者という仕事も、たまにスパム業者に間違われながらのメールマガジン発行も。
だから、【怒・哀】編で少しお話ししたような商品は、見かけると本当に悲しい。
「あなたも明日から稼げます!」と謳ったメールマガジンのテンプレートが、数万円で売られているサイトを目にしたことがある。実際に、その類のテンプレートを使ったとおぼしきメールも受け取ったことがある。なぜ分かるかって……? 同時に、まったく別の送信元から、判を押したように9割がた同じ内容のメールが大量に届いたからだ。
(前回のコラムより)
もちろんこうしたテンプレートを「ビジネスとの一部として」使って稼ぐのだと理解して行動すれば、結果は違ってくるでしょう。けれど販売サイトの説明はそのようになっておらず、メールマガジンの役割を歪んだ形に誇張して書いてある。
そして、これらの文言を信じて購入してしまう人々がいる。結局は(今のところは)0と1しか分からない機械なのに、そうした方々の中では「何でもできる魔法の箱」であるコンピュータ。「ITであなたも明日から稼げますよ!」と煽られてしまえば、「ああ、そういうことも可能なのかな」と思ってしまう。
入口さえ違えば、情報発信の真の喜びを味わっていたかもしれない人たち。理解不足に誤解が接がれ、結果として生まれた不誠実な行動は、彼ら自身の信頼度も、メールというツールに対するイメージも傷つける。
ネット上のことなので、彼ら自身のマイナスの信頼度は、ほぼ問題なくリセットできる。でも「メールマガジン」そのものに生まれた不信感は、受信者それぞれの中で生き続ける。繰り返されれば終いに「ITって……」というイメージに発展しても不思議ではない。
幾つもの問題が重なり合っています。はじめにITに対する理解不足があること。それを利用しようとする人たちがいること。オンラインで「誰を信頼すべきか」1人ひとりが考える気力をなくしているように見えること。本来は信頼度がマイナスの人々も簡単に前科を隠し、ニュートラルな立場で出入りできてしまうこと。逆にプラスの信頼を積み重ねた人々が、きちんと「目立てる」仕組みがないこと。
さあ、もう笑うしかない。これだけ問題点があって、そしてわたしは技術者なのだから、もう何かやるしかない。やりがい満載の仕事の予感を前に、愚痴に終始する気はどうしても起こらない。
――メールマガジンは、もう時代遅れのメディアか?
――わたしの答えは「分かりませんし、どちらでも構いません」。
実のところ時代なんて言葉に意味はない。そこに生きる人々のうち、まずは1人が何らかの意志をもって立ち上がり、その後どれだけの人々を巻き込んでいけるかの問題だと考えています。
わたしはメールマガジンが好きです。人と人をつなげるITが好きです。人生の流れの中でたまたまそうなっただけかもしれませんが、とにかく“何か”譲れないものを感じます。だから その気持ちに従って行動をします。
……なんだか単に頑固な人の口調になってしまいました。でも喜怒哀楽のうち「怒哀」まで確かに経験したはずの今でも 気持ちが切れないということは、やはり何かあるのかなあ、と感じるのが事実です。
メールマガジンの発行について、全3回のエピソードにお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後になりますが、あなたが今まで専ら情報受信者だったなら、ぜひ少しずつでも発信を始めてみてください。自分の好きなことを見つめなおしたり、仕事とは違った切り口での専門分野が見えてきたり。楽しいことばかりとは言えませんが――それこそ喜怒哀楽があり得るので――世界が広がることは保証します。
手段はいろいろ。もちろんメールマガジンでも良いでしょうし、今はブログが主流でしょうか。そうそう、この「エンジニアライフ」もお勧めですよ(応募ページはこちらです)。
では今度こそ本当に。ありがとうございました。