いろいろな仕事を渡り歩き、今はインフラ系エンジニアをやっている。いろんな業種からの視点も交えてコラムを綴らせていただきます。

とりあえず休め

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疲れて失うのは予算だ

以前、新人君と二人で緊急対応をやっていたことがある。分からないことも多いし、空気も緊迫している。新人君がすごくしんどそうな表情で仕事をしていたのを覚えている。かなり負担が大きいと判断したので、私は新人君に帰って十分に休むように指示を出した。一旦仕事のことは忘れて、ゆっくり休んできてくれと、誤解を生まぬように笑顔で伝えた。

実際問題、教えながら仕事するのは私がしんどい。こんな緊迫した空気の中で教えたところで、新人君の頭の中に記憶は残らない。自分一人で全力で対応を終わらせて、翌日にでもゆっくり説明した方がよっぽどためになる。新人君が残るにも残業代はかかる訳だし、残業代払ってしんどい思いだけさせても意味が無い。

結局、新人君は帰らなかった。私はむしろ帰って欲しかった。翌日、私が疲れているのに、隣の新人君にまで疲れた顔をされたら気が滅入る。せめて、新人君ぐらい元気でいろよと。万全な体制で教えたことを覚えるのが新人の仕事だろうに。余裕もないのに背伸びするくらいなら、しっかり休んで笑顔で出社しやがれ。

私にとって休むことは戦略だ。体力は資源だ。新人君に教えたかったのはそれだ。ある意味、金では買えないのでプロジェクトの予算より大事だ。無駄に体力を無駄に消耗すると効率が落ちる。効率が落ちた分、多くの時間を消費する。結果、プロジェクトの予算も無駄に浪費する。疲れることで間接的に予算を消費していることは、もっと認知されてもいいはずだ。

疲れたままだと気づかずに損をする

当たり前だが、疲れると頭が回らなくなる。ミスも増えるし、地道な思考の積み重ねがやりにくくなる。頭では分かっているが、意外と自覚症状が無い。確かに、意識はしっかり保っているつもりだが、PCの操作を重く感じたり、落ち着けば整理がつきそうな理屈もうまく整理ができなくなる。

怖いのは、疲れていても突っ走ることができてしまうことだ。あくまで経験則だが、ある程度疲れてくると、逆にハイになってしまうポイントが存在する。疲れているのに、逆に冴えているかのように思えてしまうのだ。こういうポイントが他の人にもあるらしい。そういうハイになる気分を楽しんでいる人もいるように見える。

疲れを自覚するのは難しい。義務感にかられていると、疲れよりも義務感を優先する。自分が疲れていても、それを否定しがちになる。疲労している状態で何かを達成すると、疲れることと達成感をセットで考えるようになる。こういう勘違いをすると、自分の身を省みなくなってしまう。

自分の状態を知ろうと思わなければ、疲れを自覚することは難しい。だからこそ、休むことをもっと戦略として考えるべきじゃないだろうか。「まだいけます!」と応える方が確かにカッコいいが、チロルチョコに千円払うレベルの損をすることになる。疲れを省みないのは、失敗した時の言い訳を想定してのことじゃないかと勘ぐってしまう。

意外な損失

疲れると人間は思考が短絡的になる。最近、そのように感じる事例が身の回りで多くあった。まず、残業や無茶の多い現場は、必ずと言っていいほど、情報の管理がおろそかになっている。管理表の更新が抜けたり、作業履歴がずさんだったりする。記録を残すところまで気が回らなくなるのだろう。

疲れると使える脳みそのリソースが劇的に減る。しかし、それが普通だと思われると、長期的に凄まじい損失が発生する。さらに悲惨なのが、損失が発生しても気付けないことだ。苦労に対する成果の率が低くなるので、仕事の満足度も劇的に下がる。こんなに頑張っているのに、何で結果が出ないのか?という状態に陥ってしまう。

頑張りを評価していいのは小学生までだ。なぜなら、小学生くらいならどんなに疲れても、一晩寝れば十分に回復して元気になれるからだ。アラフォーのおっさんが同じことをやると回復に三日かかるので、頑張りでは結果が出せなくなる。今までの経験や知恵で勝負しなければ身体もついてこない。

頑張りに頼り過ぎると、疲れて考える余裕が無くなる。その分、伸び代がどんどん減っていく。休まずに働くということは、将来の伸び代と引き換えに今の結果を出していることに他ならない。大げさかもしれないが、疲れたまま仕事をするということは、将来と引き換えに今を乗り切るようなものなのだ。

万全な人に太刀打ちはできない

最後に、疲れているかいないかでどれだけ仕事に差が出るか書いておく。私は立場上、色々な会社に行って作業することが多くある。その中で、必ず18:00に仕事を終わらせる会社というのがいくつかあった。そういう会社の動きを客観的に見たことを書いていく。

きちんと休む会社の人たちは、非常に落ち着いている。不思議と無茶を言ってこないのだ。多分、定時で仕事を済ますために、無茶ではなく手段を見直すことで問題に対応しているからだと思う。仕事の流れが非常に円滑だ。社員さんの定着率も良いためか、現場にきちんとノウハウが残る傾向もあるようだ。

よく、残業しなければ仕事が回らないという人を見かけるが、最初に残業という手段ありきで仕事を組み立てている。これは、定時で帰っている会社の人たちの動きを見ると断言できる。確かに、個人の力だけで定時で帰れるように仕事をするのは難しい。定時で帰る会社の人たちは、18:00に帰れるように仕事の段取りを、組織的な積み重ねで実現しているからだ。

定時で帰る人たちというのは、能力自体は普通の人だ。しかし、持てる力を最大限発揮できる仕組みを持っている。定時で帰る人たちと比べると、残業頼りな働き方が、いかに無謀で無計画かよく分かることだろう。どんなにスキルが高くても、疲れていると能力を発揮しきれない。そして結果を残せない。それに尽きる。

Comment(2)

コメント

匿名

変えるための工夫をしろ。


それはその通りだと思うが、新人君が変えるための工夫は果たしてしたのか?
新人君だって、「先輩」に任せて帰っても仕事が終わると思ったら、帰るだろう。
新人君なりに、なんか手伝わないととてもじゃないが問題解決しそうにないし、
終わらないと思うから残るのだろ?


詳しい状況がわからないが、
ただ、帰っていいといっても、終わる見込みがなきゃ納得できないから帰れない。
今日のめどはここまでにしようとかそういう指針が出せてない「先輩」に問題があるんでは?
本文の字面だけ見ると、新人君の行動はむしろほめるべきとも取れる。

Anubis

> 変えるための工夫をしろ。
申し訳ないが意味が分からない。
新人君と自分の両方が無駄に疲れないように工夫したという話なのだが。


コラムに書いたようなメッセージが伝われば、別に新人君が帰らなくてもいいんだよ。


とりあえず、コメントが浅はかなのでそこは指摘しておく。
単純に"「先輩」に問題があるんでは?"これが言いたいという事しか伝わらない。
結構失礼に思ったので、あえて晒させて頂いた。

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