新世紀純愛伝説 リツコ ―Part2―
■問い合わせに縛られて
普段なら、ものの5分で済むはずの問い合わせだった。急いでLANケーブルを繋いでループしたとか、そんなところだろう。
しかし、今回は違った。Pingで疎通確認をしても問題はないし、特に変な事はしていないと言いはる。
5時59分、さすがに少し焦ってきた。おかしい。いつもならこんな事はないのに……。そんな律子を尻目に、須田は帰り支度を済ませている。
「お疲れさまです」
……須田は振り返らずに帰ってしまった。
問い合わせの相手は次第に怒りをあらわにする。なんだ、こんな事も解決できないのか。お金を出して、会社に雇ってもらってるんだろ? 次第に言葉はエスカレートしていく。30分ほど怒鳴られた挙げ句、歩いて10分ほどのオフィスまで足を運ぶ事になった。
■エロスの代償
律子は目を疑った。ネットが繋がらないとはこういう事だったのか。
“登録料、5万円が振り込まれていません”
がっくりと肩が落ちるのを感じた。ディスプレイには、半裸の女性がにっこり笑っている。この人は何をしていたんだ。波部はその場でLANケーブルを引き抜いて、反撃に出た。
「業務中、何を見てたんですか?」
問い合わせの男性はドキッとした。まじめに仕事してていきなりトラブルが起きた。そういう事にしておきたかったようだ。うやむやにしてレストアさせれば、業務終了前の息抜きで、こっそりとエロスを堪能していたことがバレずに済むと思っていたようだ。
律子は、その無知さにあきれかえった。彼には会社から相応の処分が下るだろう……。
■逃亡疑惑
PCを回収して自分の席に戻った。律子はウイルスソフトの管理コンソールのログを見て、何か違和感を感じる。検出時刻は5時四49分。しかも、もう確認誰かが確認した痕跡がある。
……もしや。
怒りを通り越して、胸が詰まるのを感じた。
引き当てたウイルスが危険度の高い物が含まれていたため、対応に追われた。結局、すべての対応が終わったのは夜の10時半。どんなに待っていてくれたとしても、もうデートには間に合わない。今にも涙のこぼれそうな目をこすりながら、携帯電話の着信履歴をチェックする。亜沼からの着信履歴が10分ごとに並んでいた。そして、最後にメールを確認すると、"まっていたよ"という表題でメールが来ていた。
「君を待っていたんだけど、東京の冬は寒かったよ。また、春が来たら会えるといいね」
もう、来年まで亜沼とは会えない。律子はその場で泣き崩れてしまったのだった……。
→続く