原子力の次に期待される新たな発電法
福島原発の事故の結果、「原子力が危ない」ということで、それに代わる発電法が最近、いろいろと議論されている。
原子力以外で将来有望な技術として、現在一番有力視されているのが、ソーラーパネルだ。太陽からのフォトンのエネルギー、つまりこれは地球上で現在使われているエネルギーのほとんどの究極の源だが、それから直接エネルギーを習得するというものだ。確かに期待できる。
しかし、現実として、今までのところそれほど、ソーラーパネルは普及していない。私が思うに、この「直接」というところが、逆に使い方を狭めている部分もあるのではないかと思う。
太陽の光は昼間しかない(発電時間の制限)。その光を受けるためにはその受光面全てを、高価なソーラーパネルで敷き詰めなければならない(場所やコストの制限)。化石燃料や水力は太陽エネルギーをいったん別の形にして貯めて、それを発電に使う仕組みだ。つまり、太陽光を間接的に使う仕組みのため、ソーラーパネルのように時間の制限や場所やコストの制限がない。そこらあたりが、化石燃料を捨てられない、原因があるのかもしれない。
コンピュータシステムを設計するとき、需要変動の幅が大きいものであればあるほど、リクエストを処理するサーバのレイアーを増やすように設計する。1人で使うデスクトップアプリケーションの場合、UIからのリクエストの処理から直接データベースを叩くようなプログラムを作っても問題はない。
ところが、Webの場合、UIからのリクエストは Webサーバがいったん受けてそれを処理キューにいれて処理を行うように作る。さらにもっとヘビーなWebサイトの場合は、色々な処理をメッセージキュー経由で別のサーバに処理させるようなことをする。負荷の変動が大きくなればなるほど、間接的に処理する部分が増えるのだ。
電力の供給も同じかと思う。
そんな風に考えていた時、私が良く見るブログを見ていて見つけたのが、東京理科大の生物学の教授の坂口謙吾教授のこのブログサイトだ。
バイオインフォマティクスを勉強しようと企んでいるわけだからではないが、これは超有望ではないかと思う。何分素人の理解ゆえ、勘違いしているかもしれない。これ読んで本気で理解しようと思われた方は、当然のことだが、教授のブログを直接読んでいただきたい。
原理は簡単で、地球上の動物すべてが、その活動のエネルギーの源としているものはブドウ糖だが、そのブドウ糖を燃料として発電しようというものだ。燃料がブドウ糖なので、「ブドウ糖発電」と名付けることにする。ところで、「燃料」という文字だが、英語のfuelに燃やすというニュアンスがあるのかどうかわからないが、日本語では「燃」の字が使われるので、燃やすというニュアンスが入ってしまう。
しかし、動物がブドウ糖からエネルギーを習得する時は、決してブドウ糖を燃やさない。体の中にある、酵素(酸化酵素や脱水素酵素)の助けを得て、生物の体内温度でブドウ糖を分解して、ATPを作るのだ。さて、このブドウ糖発電では、ATPを作る代わりに、電子を生成しそれを貯めることにより発電する。実験レベルだが、このブドウ糖を燃料とした発電過程は、ソニーの研究所で成功している。
そこで、問題になるのは、ブドウ糖をどうやって供給するかだ。われわれが食するブドウ糖を燃料にするようなことをすると、食料の価格の高騰を招いてしまい、食料危機になりかねない。そこで、このブドウ糖発電では、ブドウ糖をわれわれが消化できないセルロースから生成するのだ。セルロースは木材や雑草、野菜などの主成分で、地球上に無尽蔵にあり、太陽のエネルギーを受けて光合成している植物が常に大量に作っている。
問題は、セルロースの分解をどうやって大量に効率よく行うかだ。普通の動物はセルロースを分解して、ブドウ糖をとり出せる酵素を持っていない。しかし、自然界にはセルロースを分解する酵素を持つ生物が、数は少ないが存在する。例えばシロアリなどだ。原子力発電に匹敵する量の発電需要をこなすのだ、大量の酵素が必要だ、シロアリを大量に培養してそこからセルロール分解酵素をとり出すような方法ではまったく間に合わない。そこは、遺伝子工学を応用する。知っている人もいると思うが、糖尿病患者が常用するインシュリンは、今や遺伝子工学の応用で作られている。インシュリンを作成する遺伝子をバクテリアの遺伝子の中に人工的に入れこんで、その後そのバクテリアを大量に増殖させて、インシュリンをとり出しているのだ。ブドウ糖発電でも、同じ仕組みでセルロース分解酵素を大量に生成する。
そんなこんなで、もしこの技術が実用化した後の私のイメージは、今まで地球上で食糧の耕作に適さないとして、ほったらかされている地域で、その地域でも育つような植物を大量に生成する。サハラ砂漠を灌漑するとか、ロシアのツンドラ地帯など使うなどだろうか。そこで大量に生成した植物を、地球上に何か所かあるブドウ糖発電所に集めて、発電するのだ。
この方法が実用化できれば、(1)エネルギー生成の過程でCO2は排出しないうえ、大量の植物を生成するので、逆に大気中のCO2が減るぐらいだろう。結果地球温暖化の問題は一気に解決する。
(2)反応は常温で行うので安全。もちろん、処理に困る放射性廃棄物など一切出ない。
(3)太陽光を集めるために、高価なソーラーパネルで地表を敷き詰める必要などない。
(4)太陽光のエネルギを植物の光合成によって、セルロースに変換して、それを蓄積。蓄積したセルロースを必要に応じて、ブドウ糖発電にいれて電気を作る。という仕組みで、燃料のバッファーが過程にあるため、需要の変動に対応出来る。良いことばかり思えるが、教授も指摘しているが、一つだけ危険なことがある、それは、セルロース分解酵素作成機能を身に付けたバクテリアが自然界に出てしまうリスクだ。これは、現在普通に行われていることだが、そういう遺伝子操作でバクテリアを作る時、常に同時にそのバクテリアが自然界では生きられないようにする遺伝子操作を同時に行うことで危険を回避する。
ということで、こういう人類の将来のかかわるような研究をやってみたいと思う昨今です。