シンガポールでアジアのエンジニアと一緒にソフトウエア開発をして日々感じること、アジャイル開発、.NET、SaaS、 Cloud computing について書きます。

シンガポールでの家探し

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 あまりITネタとはいえないが、会社の命令でシンガポールに赴任しててくる人、またはやむにやまれぬ事情で、シンガポールで生活する羽目になった人などのために、少々シンガポールネタを披露することにする。

 小生がシンガポールにやって来たのは、2006年。もうすぐ4年になる。諸所の事情で日本に住むことが難しくなり、海外の住みかを探し回った結果、たどり着いたのがシンガポールというわけだ。日本で住むことが難しくなった理由だが、別に警察に追われてとか、やばい犯罪組織からの追っ手を逃れてとか言うわけではない。また、あまりに高すぎる日本の法人税に嫌気がさしてとか、アジアの金融センターの一翼を担う某金融機関からヘッドハントされてというわけでもない。本当の理由は、とりあえず置いておくことにして、こちらにやってきてから、生活を立ち上げるまでのことを少し書くことにする。

 シンガポールで外国人が住むために、まず必要なもの。それは、「法的に住めるようになる」ことだ。つまり、ビザの話である。その辺りの話はまたた別の機会に書くことにして、とにかくそれをクリアした後は、次に住むところを見つけなければならない。

 シンガポールは別名、『団地国家』と呼ばれる。つまり、国中にいわゆる『団地』が林立しているのだ。『団地』というのはもちろん比喩的表現だ。日本で言うところの団地、つまり公団住宅に相当する住宅という意味で、そういう言葉を使った。つまり、政府が国策として立てた住宅だ。正しくは、HDB(Housing and Development Board)という。

 シンガポールは、1963年にイギリスからマレーシアと一緒に独立。そして、1965年にマレーシアから分離独立して、都市国家が成立したわけだが、最初はとにかく住宅事情がひどかったらしい。そんな時、政府による住宅政策の一環として始まったのがこのHDBである。そして、今ではシンガポールの住人の80%が、このHDBに住んでいる。淡路島ぐらいの島に、500万人もの人がある程度快適な住環境で暮らしているのだ。

 当然だが、HDBは高層化していく。最近新しく立つHDBはすべて超高層化しているのが分かる。私が今住むHDBは15階建てぐらいで、多分築20年ぐらい。最近建つHDBを見ていると、40階を越えるものが多い。日本で言う「超高層マンション」というやつだ。日本には地震国ならではの厳しい建築基準法があり、それを満たす建物はかなり頑丈そうな作りのものが多い。多分、こちらの建築基準法はそれほど厳しいものではないのだろう。外観からしても危なそうな、例えば、上に行くほど広がる超高層ビルなどが平気で建っている。

 さて、大企業の駐在員としてシンガポールに住むことになった人は、多分HDBではなく、いわゆる「コンドミニウム」に、会社が紹介してくれるエージェントに紹介されて住むのだろう。欧米や日本からのいわゆるExpatという人種だ。これから書くことは、そういう人には向かないので、ここで読むのをやめてほしい。私のように、好き好んでこの地にやってきた人や、駐在員だが海外手当てがほとんどなくて、高いコンドミニウムに住めないという人に、れから先も読んでほしい。

 賃貸として貸しだされるHDBフラットは、それほど多くはない。HDBの目的の1つが、「国民の持ち家比率を高めて、国への帰属意識を高める」ということらしい。その成果は数字に現れている。シンガポール国民の持ち家率は、90%を超え、世界一らしい。インターネット上に情報を見つけたので、ここにリンクを張っておく(編注:Wordファイルにリンク)。ということで、HDBフラットオーナーが部屋のすべてを賃貸できるようになったのは最近のことらしい。賃貸に関しては、今でもかなりの規制が存在する。購入後、3年以上住んで初めて賃貸できるとか、賃貸するためにはいちいち役所の許可を得なければならない、などだ。賃貸とは関係ないが、HDBを転がして金儲けをできなくする施策の1つだと思うが、HDBを売るには3年以上住まないとできないとか、売ったとしても新しいオーナーが住み始められるには3カ月待たなければならないなどの法律がある。HDBはあくまでもシンガポール住民に快適な住居を安価に提供するために存在するもので、金儲けに使われることを防ぐためだ。日本のバブル、米国のサブプライム住宅ローンなど、住宅ローンをトリガーに経済不況が発生したことは、数多い。シンガポール政府は本当に賢いと思う。

 さて、HDBで貸し出される物件が少ないと言えど、まったくゼロというわけではない。賃貸として貸し出されるフラットはネット、例えば、Property Guruなどに見つけられる。しかし、多分、今でも一番広告量が多いのは新聞だ。町中で手に入れられる Straits timesの広告欄が、圧倒的な広告量を誇っている。

 さて、広告でめぼしいところを見つけた後、そこに書いてある電話番号に電話することから、家探しは本格化する。この国、日本やイギリスにあるような不動産屋が駅前に店を構えているというシステムではない。不動産エージェントは店舗なしで自由に新聞、インターネットなどに広告を出し、客からの電話を携帯電話で待ち、案内するというやり方をとる。しっかりとした場所なしでことが進むので、なんとなく不安にはなるが、実に合理的なやりかただとも感心したりもする。

 シンガポールは小さい。アメリカにあるような、治安の悪い場所と良い場所の区別などもない。どこに住んでも、日本以上に治安が良い。さらに、実に小さな国で、国の一番端に住むことにしたとしても、1時間以内で国のどこにでも移動できるわけだ。全国を範囲に住処を探すことが、何の不思議にもならない国だ。私は、こんな機会はめったにないと判断して、「全国」を対象に家探しをすることにした。

 電話をかけて、エージェントとアポイントメントを取り、決められた時間にそのエージェントが紹介するフラットに、自分で探して向かうわけだ。国中を大まかに走るMRT(地下鉄)、そして全国の隅々まできめ細かく走るバス網のおかげで、それもそんなに難しくない。確かに、バスは数が多いだけに、目的地に向かうバスを探すのは難しい。しかし、いったん使い方をマスターしてしまえば、簡単に使えてよく体系づけられているバスマップがある。

 さて、エージェントが待つフラットに到着すると、そこで部屋を見せてもらうことになる。そこに住民がまだ住んでいることも多い。ベッドルームを見せるというので、部屋に入ると、現在の賃貸人のご主人と思われる人が、すやすやと眠っていたり。夜勤明けで、まだ住人が眠っているので部屋を明るくできないと言われて、暗い寝室しか見せてもらえなかったこともあった。さらには、「オーナーが突然オーストラリアに行くことになったので、部屋を貸すことにした」と言って見せられたところは、そのオーナーの家財道具が一切残ったままだったり。イギリスでは、インベントリーチェックと言って、残っている家財道具一式をすべて記録に残して、部屋を出るときその記録を照合し、紛失したり破損したものは、敷金から引かれるというシステムだったが、これだけ家財道具が多いと、多分そんなことは不可能だ。シンガポールでは大家もおおらかなものだ。

 日本人の感覚ではついていけないことが多々ある。実は、小生、日本に残したマンションを賃貸に出している賃貸のオーナーでもある。日本の場合、賃貸に出す時、家財道具を一切残せず、かなりのものを処分することになった。こういうやり方は入退去時のトラブルを防ぐもっとも有効な方法ではあるが、無駄が多いような気もする。人間関係のトラブルを防ぐことをものすごく重要視する日本社会ならではの方法かとも思ったりするが、不動産にとってもっとも楽なやり方をするように強制させられているのかもしれない。シンガポールのやり方だと、多分入退去時のトラブルは頻繁なんだろう。しかし、それを避けるためにかける工数や無駄のことを考えると、シンガポール的やりかたに軍配が上がるような気がする。

 さて、日本で借家人として家を借りた経験や、オーナーとして家を貸している経験、イギリスやアメリカ、シンガポールで家を借りている経験を持つ私が、日本の今の問題、つまり公園にブルーテントを張って住んでいるホームレスやネットカフェ難民などの問題に関して書こうと思ったが、私が思うことをそのとおり書いてくれているブログを見つけたので、そのリンクを張っておく(モジックスZopeジャンキー日記)。

 少し長くなったので、この続きは次回に続くことにする。

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