エンジニアが敬遠しがちなプロジェクトマネジメントを、テレビドラマを題材に解説する

「高校入試」とシステム開始日の熱い2日間

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■ドラマ「高校入試」は2日間の物語

 最終回が間近の「高校入試」です。

 前のコラム(「高校入試」で学ぶステークホルダー調整法とPM神化論)でテーマにしましたが、このドラマは突っ込みどころが非常に多く、もう1回テーマにしようと思います。この「高校入試」というドラマ、高校の入学試験の前日、試験当日の2日間を描いています。そう、たった2日間です。米ドラマ「24」と比べるとスケールダウンしていますが、それでもこのドラマの特徴といえるでしょう。

■システム開発における熱い日

 システム開発においても、1日が非常に長く、まるで1クールのドラマ、それもジェットコースタードラマ(古い!)を見るように、イベントが発生しまくる日があります。それは、システムのスタート日です。

 システム開始日、S日、リリース日、システム切替日、サービス開始日、カットオーバー、いろいろな言葉で表されますが、この日の緊張はハンパないのです。ある意味、この日のために、システム開発を行ってきた、その苦労がすべて報われるか、それともさらなる地獄が待っているかの運命の分かれ目の日。

 「大丈夫だよな、大丈夫なはず、大丈夫かもしれない、きっと大丈夫、大丈夫だといいなぁ、神様、お願いだぁ」

という心の声が思いっきり聞こえてきます。

 そして、すごいことに、このときだけは、ユーザー、ベンダ、関係者全員はシステムの無事を祈るのです。想いが一致するのです。

■システム開始日のトラブルといえばアレ

 しかし、神は無情です。やはりトラブルは起こってしまいます。有名なところでは、みずほ銀行の三行合併時のトラブルです。2002年4月1日、第一勧業・富士・日本興業のシステムを「みずほ銀行」として一本化するシステム統合で、まさにいろいろなことがあって、テストを充分にしきれずに開業(うわっ)。ATMが止まり、二重振込や引落しが発生、まさに史上最大規模と呼ぶシステム障害が発生したのです。そして、システム障害の件で国会に招致されたみずほホールディングスの社長が残した名言です。

 「クレームはたくさんきたが、利用者に実害は出ていない」

すごいです。すご過ぎます。こんな言葉を吐くなんて。

 しかし、この史上最大のトラブルにも、いいことが1つあります。以降のシステム開発、特に銀行の合併系の開発は注意! するようになったこと。でも、システム障害は減ってないですよね。みずほは2011年にまたやらかしちゃったし。うーん。

■システム開始日のドキドキ感

 私もシステム開始日は妙に緊張します。あれこれと考えて、不安になります。

 「バグはちゃんと直してくれただろうか?」
 「間違えたオペレーションをしないだろうか?」
 「間抜けなヤツがコンセントに足を引っかけて、サーバの電源が落ちないだろうか?」

 あれ、他人のミスばかり。ま、自分はちゃんとやっているはずだし。

 そして、電源オンというか、システムスタート!

 何も起きないんですよね。そして、夜にバッチが走り、データのチェックなどを行い、翌日になります。マシン室の横で、少し仮眠。当然、全員が眠るわけはない。何人かは、まだモニターをチェックしています。リソースを確認しないと怖いしね。

 さて、翌日。

 なぜか、2日目はユーザーからの問い合わせが多い。

 「これ動かないんだけど」
 「遅い」
 「ログインできない」

 なぜ、初日に問い合わせがないんだ? って、初日は仕様だと思って、ユーザーは質問を遠慮していたのです。ユーザーからの問い合わせは2日目が多いのは意外なトリビアです。なんとかかんとか問い合わせに対応し、やっと2日目の夜に突入。このあたりになってくると、待機要員も少しへばってきます。ギリギリまで、準備してましたから。そして、このあたりでオペミスなんかも発生したりする。バックアップメディアのセットする方向を間違えたり、オペレーションを間違えたり。前日に発見できなかったミスやトラブルも見つかっちゃたり。

 「なぜ、昨日すり抜けたんだ?」
 「いや、その」
 「眠っていたのか? どこに目を付けているんだ!!」

 怒号が飛び交います。2日目だと、ユーザーのお偉いさんもマシン室からいなくなっているしね。とにかく、本番環境のデータを確認しつつ、開発環境でプログラムを修正したり、テストしたり。

 一方で、トラブルの影響範囲を調べることも大事。場合によっては、すぐに、ユーザー企業の社長にまで連絡しなくちゃいかんしね。ま、数字が違っていたら、緊急連絡は必須です(泣)

■やはりトラブル発生、そんなときは?

 「高校入試」でも、入試の前日や当日は、チェックリストを作成したり、生徒の立ち入りを禁止したり、採点の確認をしたり、とさまざまな防御策を実施します。が、実際には問題が起こり、長い1日になってしまいました。システムの開始日も、同様です。いろいろな防止案・防御策・過去のトラブルからの再発防止策を検討・実行してもトラブルは起こることがあります。そんなときは、どうすればいいのか? 犯人を探せばいいのか? それとも?

 それは、また別のお話で

「高校入試」
2012年10月6日から、フジテレビ系列の土ドラ枠で放送。主演は長澤まさみ(役:英語教師 春山杏子)、共演に高橋ひとみ(役:英語教師 坂本多恵子)、山本圭(役:校長 的場一郎)、 中村倫也(役:元受験生 田辺光一)など。12月29日、いよいよ最終回。

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