エンジニアが敬遠しがちなプロジェクトマネジメントを、テレビドラマを題材に解説する

プロマネ「半沢直樹(仮名)」 VS(バーサス)編

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■プロマネ半沢直樹(仮名)の評判

 「プロマネ半沢直樹(仮名)」の倍返しは可能か?」が好評でした。あるある、の声が多数から起こり、ちょっと悲しくなりました。あるんですよね、やっぱり。IT業界って、いろいろな理不尽が銀行以上にまかりとおっている世界。そのなかでプロマネ半沢はいろいろなモノと戦っています。今回は、VSをテーマに半沢直樹(仮名)を語ります。


■VS 監査人 白崎(仮名 ♂)

 半沢はあるシステムの開発に携わっていた。そのシステムは長年稼働してきた歴史あるシステムなのだが、今回スマホに対応できるように、機能修正をする必要があった。開発メンバーはそのシステムを長年維持運用してきた運用管理部のSEが中心であり、半沢はプロマネとして、そのシステム運用チームに期限付きで出向という形で入った。

 開発の半ばで、毎年実施しているという「システム監査」を実施することになり、半沢もプロマネとして、同席する必要があった。

 会議室。机の片側に半沢と運用管理部の十和田部長、システム部員たち、反対側にシステム監査人白崎が座っている。

 机には、分厚いキングファイルが並べられ、ところどころに付箋が挟まれている。

半沢:「では、よろしくお願いいたします」

白崎:「では、はじめましょうか。半沢ちゃん」

 キングファイルを適当にみていく、白崎。突然手を止め……

白崎:「あら、これ、特権IDじゃないの? それにこのユーザーIDの権限だとIT統制的にまずいんじゃない」

半沢:「そんなことは(慌てて資料を確認する半沢)資料が古いようです。実際にはユーザーIDの権限は問題なく管理・作成しています」

白崎:「そう。じゃ証拠みせてよ」

半沢:「(立ち上がり)では、実際に設定しているロールを見てもらいます。(横に座っている運用担当者に)マシン室に案内しろ」

白崎:「なに? 私にあの寒いマシン室まで行けっていうの? ふざけんじゃないわよ。あんなとこ行ったら、お肌があれちゃうじゃない。それに私冷え性なのよ」

半沢:「しかし、設定はセキュリティ上マシン室のコンソールからじゃないと見れないので」

白崎:「しるか。さっさとリモート端末も持ってこんかい、われ」

 いきなり口調が変わる白崎。何でこんな野郎に、えらそうに指示されなければいけないのか。半沢の倍返し魂がさく裂寸前です。

十和田:「落ち着いてください、白崎さん。半沢は素人なので、無礼は私がお詫びします」

 角刈りの頭を下げる十和田。

白崎:「素人? (半沢をねっとりと見つめる)そうなの。ねぇ半沢ちゃん、やっぱり監査はコミュニケーションなのよ」

半沢:「何を言っているんだ、いきなり」

白崎:「これから、池袋北口あたりで打ち合わせしない?」

十和田:「半沢、白崎さんに連れて行ってもらえ」

白崎:「あーらありがとう、とわちゃん」

十和田:「領収証は、こちらに回してもらって結構です」

白崎:「あら、気が利いているわね。あなたも前は突っ張っていたのに、やわらかくなったものね」

十和田:「勉強させていただきました」頭を下げる十和田。

白崎:「いいこと考えちゃった。三人で行きましょうよ」

十和田:「(顔色を変え)いえ、あ、ありがとうございます。今年は、半沢さんが担当です」

半沢:「何だ、担当というのは」

白崎:「あーら、半沢ちゃんが勉強会の担当なのね。じゃ、行くわよ」

 半沢のネクタイをひっぱり、会議室から出ていくシステム監査人白崎。直立して見送る十和田。その日の半沢の行き先と行動は…… 言えません。

■監査人 白崎の⚠㊙⚠ぐり返し

 システム監査人 白崎。

 耳慣れないかもしれませんが、システム監査とは、経済産業省のシステム監査基準によると「監査対象から独立かつ客観的立場のシステム監査人が情報システムを総合的に点検及び評価し、組織体の長に助言および勧告するとともにフォローアップする一連の活動」としています。やっぱりよく分かりません、さすがお役所です。まぁ、ポイントは「独立」した監査人による健全なシステムかどうかのチェックフォローアップなのですが。

 そして、この監査人については

 システム監査人・・・次の知識及び能力を有し、システム監査に従事する者

   1 情報システムの基本的知識
   2 システム監査の知識
   3 システム監査の実施能力
   4 システム監査の実施に当たっての関連知識


とされていますが、女っぽい男がなってはいけないというルールはありません。でも実際には、このルールの1に当てはまった人が実施することはないですね。ITに疎い方が多いように見受けられます。しかし、そんなことは言えません。システム監査人からNGを出されると、その報告は「組織体の長」にエスカレーションされ、問題となってしまうのです。

 半沢(仮名)が「ふざけたことをいうな。やられたらやり返す、倍返し、いや百倍返しだ」と言ってしまったタイミングで、白崎(仮名)に、🆖🆖ぐり返しされることは確実です。銀行とは異なるシステム開発でも、やはり監査ってあるのです。

■VS オフショア開発業者(匿名)

 半沢(仮名)は、テレビ会議の設備がついている会議室にいる。今回の案件は、客が予算削減を強硬に主張したため、オフショア開発で対応することにしている。半沢は、オフショア先 A共和国の担当者と進ちょく会議の真っ最中です。

半沢:「リーさん、進ちょくが良くないみたいですね。対策を打っていますか?」

リー:「プログラミングの進ちょくが悪いので、ガイドラインを作って勉強会を開こうとしているアルヨ」

半沢:「それはいいことですね」

 半沢は、今回は「倍返し」がなさそうなのでホっとしていた。

リー:「でもお金が足りないアル。後で請求書を送るアル」

半沢:「いや、それは」

リー:「いま勉強しないとだめアル。いつやるんですか、いまでしょうアル」

半沢:「何いってるんですか。(アルアルってお前は神楽@銀魂か)。自己啓発の勉強ですよね」

リー:「当然アル。われわれ、学習能力が高いアル」

半沢:「だとすると、その費用はこちらでは出せませんアル、じゃなくて出せないですよ」

リー:「何、A共和国人を差別するアルか」

半沢:「差別じゃありません。エンジニアとして当然のことです」

リー:「じぇじぇじぇ、ではプログラムの品質は上がらないアル」

半沢:「じぇじぇじぇ、じゃなくて、なんでそういう話になるんだ!」

リー:「だ・か・ら、ガイドラインを作成して、それをみんなで学習する勉強会を開くアル」

半沢:「プログラムの品質は上げてください。でもそれはそちらの費用でやってください」

リー:「もう話にならないね」

半沢:「待て」

 テレビ電話の回線が切れる。

半沢:「なんだ、あいつらは」

 半沢は会議室を飛び出し、スマホを片手に、自宅にいる愛妻の華(巨乳)に「ごめん、今からA共和国に行く」と連絡。パスポートを持ってきてもらい、そのままオフショア先、A共和国の首都に向かいました。

 A共和国では、いきなり乗り込んできた半沢に驚きもせず、「そんなこともあるかと思ったアル」と対応され、半沢に「さすが伝説の国」とうならせました。

 そして、開発現場に向かおうとする半沢に、「半沢さん、白黒クマ食べるアルか?」「半沢さん、ゴルフ行くアル」「半沢さん、三国志のゲーム一緒にやるアル」など、悠久の歴史に裏付けられた接待責め。

 結局、半沢は半年近く、クマ料理を食べることになりました。A共和国に行ったきり戻らない、いや戻れない半沢に愛想づかした妻の華は、子どもを連れて、実家に帰ってしまいました。

■オフショア開発のプログラミングは良くなっているのか?

 オフショア開発、つまり日本以外の国で、安い金額で作業を行うことは、いまや当たり前の時代。そう、グローバルな時代なのです。IT業界でも、オフショア開発を行う会社は増えていますが、それに伴い、オフショア先の成果物の品質問題、言い換えると「ひどいプログラム」のことが問題になっています。そんなの一部の会社の話でしょ、とか、「昔はそうだったかもしれないが、今は違うのでしょ」という声が聞こえてきそうですが、あまり改善してません。

 品質面で懸念があるし、コミュニケーションはボロボロ。そもそも、やっぱり海外は遠い。見てないところで何やっているか分からないし、現場に行こうとしても時間と金がかかる。「インターネットは世界の距離を短くした」と言われていますが、ネットは仮想であり、リアルじゃない。テレビ電話・テレビ会議で頭を下げる裏で、舌を出すのが当たり前。オフショア開発は、まだまだ大変なんです。

 半沢(仮名)はA共和国でどんな体験をしたのか? 愛妻と再会できるのか?

 では、また別のお話で。

「半沢直樹」
2013年7月7日から、TBS系列の日曜劇場枠で放送。主演は堺雅人(役:東京中央銀行大阪西支店融資課課長→ 東京本部営業第二部次長 半沢直樹)、共演に香川照之(役:常務取締役 大和田暁)、北大路欣也(役:頭取 中野渡謙)、片岡愛之助(役:金融庁検査官→ 大阪国税局査察部統括官→ 金融庁検査局主任検査官 黒崎駿一)等。
2013年9月22日(日)は最終回25分拡大スペシャル。昼間にダイジェスト特番があります。必見。

 

Comment(1)

コメント

匿名

「ううむ。。システム監査人の端くれとして言わせてもらうと一応基礎的なシステム知識が土台であって、監査対象のシステムに関しては事前に更に勉強するのが当たり前だと思います。特に監査証跡とかセキュリティ関連は対象システム担当者より知っているくらいじゃないと勤まりませんです」

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