エンジニアが敬遠しがちなプロジェクトマネジメントを、テレビドラマを題材に解説する

プロジェクトはドラクエなのか? ―「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」―

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■プロジェクトはドラクエなのだ

 「システム開発プロジェクトはドラクエである」

という名言をはいた人がいる。

 顧客の要求にこたえるために、システム開発という長く苦難の道を行く勇者たち。さまざまなモンスター(ステークホルダーやトラブル)が行く手を遮り、最初はレベルが低かった勇者たちも経験値を積み、少しづつ前進していく。パーティには、魔法(DB)が得意な魔法使い、回復呪文(NW)が得意な僧侶、ガチな肉体派(プログラミング)な戦士。それぞれの特性を上手く活かして、旅を続けなくてはならない。レベルが上がれば、使える呪文も増えるし、HPも増えていく。

 ラスボスにたどり着く前に、小ボスというさまざまな問題と戦い、さらに旅の後半では、もう終わりが見えている試験工程にもかかわらず、「仕様変更」という即死系の呪文を唱える凶悪なモンスターとのバトルも待っている。

 ラスボスとの戦いは熾烈である。メンバーが死なないように、体力を回復しつつ、バグをつぶしていく。場合によっては、(本当に場合によっては)メンバーが1人死んでも、攻撃を続けなくてはならない。そして……。全力を尽くして、バグをつぶしつつ、移行をしつつ、なんとかかんとかサービスを開始する。書いているだけでも、疲労感がドっと出てくる旅である。難易度SのRPGと同一である。そう、徹夜という属性が付くところも類似している。

■ドラクエドラマ「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」

 2012年10月クールに、ドラクエ的なドラマが放送されているのだが、ご存じだろうか? 「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」である。このドラマは好評をはくした「勇者ヨシヒコと魔王の城」の続編にあたる。前作で魔王を倒してから100年後、またモンスターが暴れまわっている。
何故なのか?

 モンスターを封じた鍵が開けられたらしい。そこで、すでに死んでいるヨシヒコとその一行が蘇らせられ、旅が始まる。

 復活したヨシヒコは「すでにレベルが高いので、今回は楽そうです」と思ったが、セーブポイントの都合なのか、レベルは0となっている。そして、また辛く苦しいレベル上げから旅は始まる。

 このレベル上げだが、プロジェクトでも同様のことがよく起こる。あるプロジェクトが困難の末、やっと終了する。そして、半年後、勇者=PMは新しいプロジェクトを任される。メンバーを集め、プロジェクトを開始するが、なぜか上手くいかない。

 メンバーの問題か? いやいや、メンバーは熟練したメンバーだ。

 PM(自分)が悪いのか? 前回、あれだけ苦労したのに、なんで今回も苦労するんだ? 向いていないのか? PMなんてやってられない!

 このような自問自答を繰り返すPMは、かなり多いと思う。しかし、新しいプロジェクトを立ち上げた場合は、やはり苦しいレベル0から始まることが多いのである。

■プロジェクトのレベルって何?

 毎回、毎回プロジェクトが大変なのは、PMの問題もあるかもしれないが、1つの要因は、チームビルディング自体がレベル0に戻ってしまった、ということが原因である。

 プロジェクトにおけるチームビルディングについて、よく「タックマンモデル」が引き合いに出されます。「タックマンモデル」とは、チームは形成されただけでは、機能しない。チームを形成していくには、五段階のプロセスがあり、形成後、混乱を経て、機能するようになる。

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 そういえば、プロジェクトに限らず、いろいろな集まりでも同じようなプロセスを経ているようです。マンガでもタックマンモデルしているのがたくさんあります。「リンかけ」「キャプ翼」などの王道ジャンプ系なんて、そのままです。

■ヨシヒコたちは関係ないプロジェクトレベル

 ただ、「勇者ヨシヒコ……」は、チーム自体は、前回と同じだから、チームビルディングは必要ないんですけどね。単純に、メンバーのレベル自体が0になっているだけなので、個々のレベルを上げればOKなので、そういう面でメンバー間の葛藤とか対立が少ないようです。

■レベルを早く上げる方法はあるのか?

 プロジェクトのレベル0状態を、早くレベル99に持っていきたい。タックマンモデルでいうと、「Performing」に達したい。いかに、チームをこの状態に早く持っていけるか、これがプロジェクトを成功させる勘所だったりします。下手すると、混乱期(storming)のまま、プロジェクト終了という事態もたまにあります。では、どうやったら、早くチームの意思を1つにできるのか?

 それは、また別のお話で

「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」
2012年10月12日から、テレビ東京系列のドラマ24枠(金24:12-24:52)で放送。主演は山田孝之(役:勇者ヨシヒコ)、共演に木南晴夏(役:ムラサキ)、ムロツヨシ(役:魔法使いメレブ) 、宅麻伸(役:戦士ダンジョー)等。
関西では、月曜深夜で放送(らしい)。

Comment(3)

コメント

はじめまして、司馬さん

勇者ヨシヒコ、私は見たことがないんですが、話題になっているみたいですね。

>「形成後、混乱を経て、機能するようになる」
なるほどなあと思ってしまします。

>王道ジャンプ系

プロジェクト管理 → タックマンモデル → 王道ジャンプ系
なんていう発想は、すばらしです。

基幹システムの導入で、I社さんのベテランマネージャの方のお話がありましたが、8合目までいくと必ず誰か「やめよう、引き返そう」というそうです。ちょうど、その案件も8合目くらいのところだったので、強烈に今も覚えており、司馬さんの話には共感させられます。

銀魂の銀さんは、王道ジャンプ系の例として、ドラゴンボールのことを語りますよね。

ベジータが地球に現れたとき、クリリンは悟空に「こいつは絶対に改心して、いいやつになんかならない。ピッコロみたいにはならない。殺してしまえ。そうしないと絶対後悔する」と言っても、悟空はベジータを許してあげた、その後ベジータとベジータの子供トランクスは悟空率いるZ戦士として戦う。このような美談はアニメの世界だけであって、現実のプロジェクトはダメなやつは救いようがない!ようなことが起こってしまうのが多いのではないかと思ってしまうのですが・・・いかがなもんでしょう。

みながわ様

コメントありがとうございます。

たまたまですが、前回の「ヨシヒコ」はドラゴンボールの小ネタが満載でした。やはり面白い。

>このような美談はアニメの世界だけであって、現実のプロジェクトはダメなやつは救いようがない!

そうかもしれません。腐っているやつはそのまま腐りきるパターンが多いので。
ただ、経験では、一度対立した人とは、その後結構仲良くやっています。一度、バトらないと、真の関係は作れないのも確かではあるのですが。まぁ、バトることによって、相手が何にこだわっているのかがよくわかるというのもあります。

昨日の放送で、とうとうヨシヒコは地下(裏世界)へいってしまった。これはS後のデバックを意味するのか?

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