連載2周年 書き始めた動機について
僕は、決して技術者然としているわけではありません。どちらかといえば詩人に近い人間なのですが、隅っこの方で、ぶつぶつつぶやきながら、@IT自分戦略研究所エンジニアライフ、2010年9月で、連載丸2周年になりました。これもひとえに、皆さまのご支援のおかげです。新しいことを始めるのも大いに結構なのですが、ひとところにとどまってみっちりやるのも、いいことじゃありませんか。
■書き始めた動機はスキルの棚卸し
最初は、スキルの棚卸しが一通りすんだら、連載はやめようと思っていました。これまでに何をして来て、これから何になろうとしているのか、何になりたかったのか、何になれるのか、いろいろなことを考えてきました。結果、図らずも、過去を切り売りする結果になってしまったのですが、おかげさまで、以前よりは自分のことがくっきり見えるようになりました。
くっきり見えたのはよいのですが……。選手交代の時期に差しかかり、現役サラリーマンの続投を遠慮しなければならない年齢であることに気付きました。スポーツと同様、若者を教育する年齢にさしかかってきたのです。年齢はいわゆるサラリーマン的な仕事に雇われない理由でもあり、背景には、時代の厳しさ、企業が目利きし過ぎる点などがあります。
■難しいことを易しく書くことの難しさ
難しいことを、難しいままに書くのは簡単ですが、それでは読者の理解が進みません。読者の理解を深めようと思えば、難しい物事を、いったん自分の脳内で咀嚼し、かみくだいて理解してから、はじめてコラムにする、ということを心がけてきました。また、なるべく実体験を交え、自分が理解できないことはコラムにしないこともそうです。技術屋さんの文章でありがちなのが、略語を平易に説明しない(あるいはかみくだいていない)ことなどですね。それだけは、なるべく気をつけています。
■その時々に合わせたテーマ設定
新卒雇用が危ないときにはそのテーマを書き、メンタルヘルスが危ないときは体験談を寄せ、暑いときには「暑うおますなあ」という記事を書き、その時々に合わせたテーマでコラムを書いてきました。生活者目線といいますか、そういったタイムリー性を大事にしたいです。決して上から目線じゃなくて、同じ困った者同士という視点を大切にしていきたい。アイティメディアさんが出す「お題」には、1~2回しか投稿していません。なぜなら、僕が考えるタイムリー性と、会社の皆さんが考えるタイムリー性とは、少し軸足が違うのです。なので「お題」にはならっていません。
■テーマを絞りすぎないのが、永続の秘訣
もし、純粋にインフラ系SEのお話だけをしていたならば、ここまで続けられたかどうか分かりません。僕が仮に、ルータのルーティングの話をしても、仮に、サーバの仮想化の話をしても、ここ(@IT)には、僕よりも詳しい人々がごまんとおられるわけでして、餅のことなら、餅屋に聞いてほしいのです。古い脳細胞がいえることは、失敗も成功もしてきた道程。技術のお話がご所望ならば、僕よりも詳しい人が大勢おられるので、そちらの記事をご参照願います。
たしかに、僕はエンジニアでありましたし、そっち系の技術情報を書こうなら、むりやり背伸びして書けなくはない。しかしながら、ここは「エンジニアライフ」です。業種は違えど、ずっと何らかのエンジニアをしてきた、苦い経験やライフハックなどをお伝えし、若い人たちに同じ苦労をさせたくないので、これまでの苦労話などを書いてきたわけです。テーマに縛られない。テーマを絞りすぎないのが、永続の秘訣といえば、秘訣でしょうか。特定のテーマにこだわらない、テーマが片寄らないことが、書き進めるための秘訣といえば、秘訣でしょうか。何事にも、こだわらない、片寄らないことでしょうかね。
■僕はこれでも進歩しているのかな
急に周囲を不安に陥れる小見出しですみません。しかし、実際こう思っているのでやむをえませんね。カタログスペック的な、例えば資格だとかは、お金の都合がつかなくて取得できていないのですが、どんなに小さい人間でも、着実に進歩しているつもりです。書をとって勉強していますし、壁にぶち当たったら、努力の方向を見直すスキルは身についたような気がします。自分を俯瞰できる余裕が作れ、サラリーマン時代には治せなかった身体のガタつきを治す余裕もできました。
「ブランク」と呼んで嫌気する人事もいるかもしれません。しかし、もしあのままサラリーマンとして走り続けていたら、介護できずに母親が早死にし、借金は膨らみ、総入れ歯になって、精神を害したままでしたでしょう。「ブランク」は必要で、今までの自分を省みる「人生の踊り場」は絶対に必要なのです。サラリーマンでいることが、本当に幸せなのか。いいかたを変えれば、サラリーマンになることだけが、必須不可分条件なのか。幸せって何だっけ、と思うたびに、立ち止まって考えることができるといいですね。特に、アラフォーになってからは。
(なに? 進歩せい? へえ……)