システム導入時のユーザ教育に関するノウハウを書いていきます。

第5回 システム導入教育(2) 教育計画を具体化する

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 こんにちは、エル・ティー・エスの忰田です。

 このコラムでは、システム導入時のユーザー教育を中心とした「システム展開支援」サービスを取り上げ、その目的や内容について紹介しています。

 
 前回のコラムでは、システム導入が決まった! というところで、最初に着手する「教育計画」の作成に必要な情報として、以下の3つを挙げました。

  • 教育期間
  • 教育対象のユーザー範囲
  • ユーザーの特徴

 
 これら3つの情報を収集しユーザーに必要な教育について検討する「ユーザー分析」のプロセスから、教育計画の作成がスタートします。

 今回は、この「ユーザー分析」の次のステップとして何をするのか? そしてどのように教育計画を作成するのか? を説明します。

 
■ユーザーにどう教育すれば効果が出るのか? を考える

 ユーザーの情報を集めることで、まずは以下の情報が導き出せるはずです。

  • ユーザーにはどんな分類があるのか
  • どのユーザーに対していつまでに教育が必要なのか

 
 ※実際の「ユーザー分析」では、なかなか情報が集まらず(ユーザーに聞いても回答をもらえないケースが多々あります……)完全な情報がそろわないことの方が多いのが現実ですが、まずは「主要なユーザー」についての情報を押さえるようにします。

 
 上記2つの情報を基にすることで、教育の実施期限が分かりますので、あとは「どう教育するか」を考えます。

 そこで必要になる情報が、「ユーザーの状況」と「教育する内容(範囲)」です。これらを知るためには、以下のようなことを確認します。

  • 普段はどのように業務に関する教育を受けている(情報を受け取っている)のか?
  • 現時点でどこまでシステムを導入する業務の仕組みが分かっているのか?

 
 「どう教育するか」とは、どうすれば・どこまで教えれば教育が成り立つのか? を考えることです。

 例えば、ユーザーにマニュアルや研修を「提供すれば」それでOKと考えるのは間違いです。大事なのは「提供したか?」ではなく、「相手が受け取れたか?」です。

 そのため、教育するユーザーが受け取れる形式・理解できる内容に「教育すべきこと」を組み立てて提供する必要があります。普段PCを使わないユーザーに教材の電子データだけを配布しても意味がありませんし、業務の前提やルール・制約が分かっていないユーザーにシステム上での業務の考え方や入力項目の意味を教えても理解はできません。

 どのユーザーに、どこまでシステムを理解してもらう必要があるか? を考えて、ユーザーの状況に合わせて教育する内容を組み立てていきましょう。

 ユーザー教育も大きくくくれば「コミュニケーション」の一部です。皆さんも普段誰かと情報をやりとりする場合、相手が受け取れる方法・相手が理解できる伝え方を無意識に選択しているはずです。

 この「普段は無意識にやっていること」を、ユーザー教育では明確に意識して進めることが重要です。

■教育でやることをスケジュールに落とし込む

 ここまでで、教育対象のユーザーの分類と分類ごとの教育実施期限、また必要な教育内容と方法を考えてきました。この先は、教育内容を具体的なタスクに落とし込み、最終的にスケジュールを作成する工程です。

 教育提供側からすれば教育は実施すべきタスクの一部なので、期限と作業ボリュームと必要なメンバーを考えて工数を割り出し、WBSに落とし込みます。ここまでくれば、他の作業の設計と大きく変わりはありません。

 教育を実施する要員の計画もここまでに明確にしておいた方がいいでしょう。また、教育実施には必ずユーザー側のレビュー・承認が必要になります。特にマニュアル等のドキュメントレビューは想像以上の時間がかかりますので、レビュー工数の確保もこの時点でやっておかないと後で困ることになります。

 そもそも教育実施側の要員に余裕がない場合(ほとんどのケースで教育実施要員に余裕はないと思いますが……)は、教育内容や対象のユーザー範囲を少しずつ削っていくしかありません。ただし、削れば削るほど後の工程に良くない影響が出ますので、本当に問題がありそうな場合はバックアッププランも考えておいた方がよいでしょう。

 あとは、教育を受ける側の「業務の都合」を確認します。教育を受けるユーザーは当たり前ですが通常業務を抱えているので、業務に支障がないようにやりくりしつつ、スケジュールに落とし込みます。

■この先何をするのか? のイメージを共有する

 さて、やっとスケジュールまで形になってきました。教育計画の作成としては、これで半分終わったというところです。なぜ「半分」なのか? というと、スケジュールだけでは意味がないからです。

 教育計画では、「具体的なスケジュール」と「具体的な作業のアウトプットイメージ」がセットであることが重要です。何をするか? を具体的に共有できていない場合、いざスケジュールどおりに教育施策を実施しようとしても、

  • 操作説明書を作成するとは聞いていたが、こんな内容だとは思っていなかった
  • 研修実施は認識しているが、もっと分かりやすいものをイメージしていた

 などの意見が直前になって噴出し、再検討⇒スケジュールの引き直し……となるパターンが少なくないからです。

 システム導入時の教育は、システムの設計・開発・テストなどの工程に比べてユーザーが参加する頻度が高く、また「やること」が定型化されていないため、「やることのイメージが違う!」が起きやすいのです。

 それでは、何をどの程度まで具体的に決めておくべきでしょうか?

 教育計画を作成する時点では、ほとんどの場合システムの画面イメージもなく、設計書・仕様書等の資料も作り終わっていません。そんな状況の中で、例えば教育用に作成するマニュアル等のドキュメントの中身を細かく定義するのは極めて困難です。また、たたき台もない中で細かい議論に終始しても結論は出ません。

 ここですべき作業は、なるべく大きな論点からスタートし、計画時点で決められる決定事項を積み重ねておくことです。

 例えば、教育用に作成するマニュアルであれば、

  • 作成する目的
  • 作成することで達成すべき目標
  • 想定する対象者
  • 提供方法
  • 想定する利用シーン
  • 提供するデータ形式
  • 新規作成~修正作業手順
  • 作成完了後のレビュー、修正、承認方法
  • 導入教育後のメンテナンス運用方法

 などが該当します。

 
 これらを検討し、決定した内容を前提とすることで、ある程度「中身」のイメージが限定されてきます。作成プロセスや担当者が明確になることで、作成や運用に関与するメンバーが「対応できる範囲」の「現実的に作成可能なマニュアル」がイメージされるはずです。

 この時点で「教育でやること」を目に見える形で100%決める必要はありません。作業イメージと、完成イメージの大まかな「見た目」が共有できていればOKです。あとは、作成・運用プロセスを可視化(資料化)し、計画時点で想定可能な大まかな「完成イメージ」を共有して教育計画書に記載します。

■計画を共有し、教育タスクをスタートしよう!

 ここまでの説明で、教育計画の作成では何をすべきか? が把握できたでしょうか?

 それでは最後に、システム導入教育で「やること」や「やり方」が明確になるまでの検討プロセスを含めて、ユーザーを含めた関係するメンバーで内容を共有し教育計画書を作り上げます。

 計画を共有、合意する上で重要なことは、ここまでに説明したとおり、

  • 事前に必要な情報を集めてユーザー種別と教育内容を定義する
  • スケジュールの作成と、作業者・レビュー担当者などの決定および工数確保
  • 作業工程と実施する作業結果のイメージを共有する

 以上の3点です。

 以前のコラム(2回目3回目)で書きましたが、システム導入プロジェクトに参画するユーザー側とベンダ側には、同じ作業を行う場合でも意識の違いがあります。これらの「違い」を認識した上で、教育実施イメージに理解の違いが発生しないように、具体的な計画を共有することが重要です。

 さて、前回と今回でシステム導入教育で最初に行う「教育計画」について説明しました。次回は、教育と同じく重要な「ユーザーとのコミュニケーション」をどう行うか? について説明してきたいと思います。

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