転職活動中SEの珍道中を描きます。会社バレが怖いぞ!(汗

2. どうしようもない僕に天使が降りてきた

»

■10月15日 あめ

 弱ったなぁ。

 転職サイトに登録してから2週間経ったけど、特に自分から、何か行動を起こす、というわけではない。サイトに登録しているおかげで、転職情報は湯水のように入ってくるけど、具体的にどんな行動を起こせばいいのかが、わかっていない。

 試しに、本屋の転職コーナーで“それ”用の本を探してみたりもするが、そもそも”それ”の目的が明確になっていない。全般なのか、面接なのか、筆記試験なのか、etc……。よくもまあ、こんなにいろんな本があるなと変に感心してしまう。

 ので、どの本を買うべきか、1時間半迷って、最終的にテレビ情報誌を買って帰る始末。根本的に転職活動の仕方がなってないなぁ、と、帰りの電車でふと思ってみたりする。

😌「どこかいいとこ見つかった?」

 さやかが、ゲームしながら聞いてくる。

😔「ううん、情報はいっぱいあるけど、結局どこがいいのかよくわかんなくてさー。結局大きいとこばっかり見ちゃうんだよね」

😨「自分が何の仕事をしたいかにもよるんじゃないの? いきなり、そうそう希望通りの会社は見つかんないよ」

😔「んー……そうなんだけどね。とにかく、応募しなきゃ始まらないから、印象がよさげな企業に応募してみるよ」

 ここでさやか、ゲーム中断。一緒に考えてくれるのか、ただ単にゲームに飽きたのか。

😣「印象がよさげって、大体が、今の大輔は『今の会社がヤ』って思ってるだけで、具体的にやりたい仕事のイメージが落とせてないと思うの。そんな状態で、印象だけで決めようとしてたら、うまくいくものも行かないと思うんだけど、そこんとこはいかがか、チミィ」

😅「ぬっ……鋭く核心をついてくるとは、なかなかやるな。どれ、ほうびにミカンをやろう」

😊「(華麗にスルーして)わたしとしては、今後の生活を考えていくと、安定している企業がいいです。今の世の中、どの企業も、いつどうなるかわからないけど、基礎体力がある企業の方が、将来困んなくてすむと思うしね。それに、転職なんて、そうそうできるものでもないでしょう?」

😜「んー、確かに。やりたいことだけ考えてても、いつどうなるかわかんない不安におびえるよりは、仕事に専念できる環境が整っている企業の方がいいね。働く側としては」

😝「もし大輔が大企業に受かったら、鼻血出して喜びます。ブーとね」

😅「その喜び方はいただけないが、がんばっていいとこに入れるようにするよ」

とりあえず、で回答。応募つっても、応募の仕方や、進め方も良くわかってないのに、どうすんだよ、俺……。さやかはもう寝てしまうし、あと1時間求人探したら、寝ることにしよう。

おっ! 面白げなブログ発見。ああダメだ、なんだかんだで転職活動が進まねぇ……。

■翌日。

 今日も、仕事が終わってからマッハで帰宅して、転職サイトを開く。

 今の会社に愛想が尽きたとはいえ、さすがに会社では転職活動できない。お客さんのとこで作業するなら、なおさらだ。

 やはり、仕事をしながらの転職活動となると、時間の使い方がキモとなる。仕事で少なくとも1日8時間は拘束される。+2時間ほどの残業をこなし、ようやく帰宅。自宅との行き帰りの往復で2時間使い、転職活動にじっくり時間をとろうとすると、生活、趣味と睡眠時間を削って、やっと2、3時間取れるかどうか。

 土日は土日で、多趣味のため、家にいる時間は少ない。「そこは自分で調整しろよ」と言われそうではあるが、結局のところ、個人的に、転職活動に割く時間は、他の人よりは少なくなってしまうのであった。

 今日も昨日の課題を解消できないまま、ただ求人情報の検索だけしている。職務経歴書とか、履歴書とか、自己PRのための資料とか、作らなきゃいけないもの、やることは山ほどあるんだろうけど、今は求人情報を検索しているだけで、何となく転職活動をしている気分になってしまっている。

 このままじゃ一向に進まないなぁ……なんかしなきゃいけないけど、何したらいいんだろう……。めんどくさがりの血が騒ぎ、手が進まない。

 と、求人情報の隅に、いつもなら見逃すバナーに目が行く。転職エージェントサービスの広告だ。

 何気なくリンクをクリックし、読み進めてみる。なになに……

 「貴方の転職活動を、弊社のエージェントが万全にサポートいたします!」

 「仕事をしながら転職活動をしている、そんな時間がない貴方におすすめです!」

 「転職サイトでは公開されない、非公開求人についても、ご紹介いたします!」

 「当サービスは、無料でご提供いたします。貴方からお金をいただくことは、一切ございません!」

 「貴方の個人情報は、外部にもらすことはありません。現職に就きながら、会社に情報をもらすことなく、安心して転職活動ができます!」

 なんと! 今の俺にピッタリじゃないか! 今までなんで気づかなかったんだろう……意識が薄かったからだろうか……。

 なになに、登録をすれば、そこからエージェントさんがサポートしてくれるのか。いくらめんどくさがりの俺でも、登録ぐらいなら時間をかけずにできるぞ。なんとなく目に入ってきたエージェントの登録フォームに移動して、早速、登録。会社のメールアカウント使ってやり取りするわけには行かないから、フリーのアカウント使おうっと。

 あとは、果報は寝て待てというし、明日も早いし、今日はとっとと寝ることにしよう。最近あまり寝てないから、目の下のクマも、尋常じゃないことになってるし。

■さらに翌日。

 午前中、100ある潜在バグの1つが炎上し、トラブル一歩手前の状態に。

 まずお客様とゴール状態を確認し、対応策の合意が取れたところで、火消しをGO。データ修正の調査・対処が6Hで終わったことと、プログラム修正の優先順位を、ある程度低めに設定できたことによって、徹夜作業は免れた。

 疲れきって、若干遅めの電車で帰宅する。ふと思ったけど、潜在バグの個数なんて、あらかじめわかってることなんてあるのだろうか? ホントは200個ぐらいあったりして……と、自分にツッコミ。

😃「おかえりー。大輔、久々に遅かったのね」

😲「たらいまー…。しばらく炎上することなかったしさ、ひっさびさに疲れたよ」

😜「まあ帰ってこれたから良かったじゃない。あ、そういえばメール来てたよ」

😣「メール? 誰だろ。」

 さやかからパソコンをぶんどって、自分のWebメールを開く。内容はこんな感じ。

Subject:ご登録ありがとうございます

藤本様

株式会社ドーデモエージェント アドバイザーの松嶋 みゆきと申します。この度は、弊社ホームページよりご登録いただきまして、ありがとうございました。藤本様のご転職のお手伝いをさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

つきましては、直接ご面談をさせていただいて、ご転職についての詳細をお伺いできればと存じます。ご面談では、求人情報のご提案から、転職についてのアドバイス等を行っております。お手数ではございますが、ご都合の良い日程をお教えいただけますでしょうか。

 昨日のエージェントだ。登録した翌日なのに、早速サポートをしてもらえるらしい。ありがたや。

 面談か……名前を見るに、女性だから、話しやすそうだ。アドバイスもしてくれるというし、ちょっとお話聞いてもらおうかな。日程いつがいいかなー。

 その刹那、背後から凍てつく波動と殺気が。

😠「……だーれーーー、そのおんなーーー」

 さやかだ。もともと相当なやきもち焼きの彼女、俺宛てに自分以外の女性からメールが来ると、過剰に反応することを失念していた。

😅「うおお、いや、エージェントさんだよー。昨日の夜、転職活動のついでに登録したんだよ」

😡「……ふーーん、浮気じゃないでしょーーーねーーー」

😭「ギョエーーー」

■3日後。

 なんとかトラブルも収束し、今日は早く帰ることができた。必死の調整の賜物である。今日は、先日のメールの、ドーデモエージェントさんを訪問して、面談をすることになっている。

 目のクマ? ああ、これは、この前さやかに殴られたのが、内出血しているんだ。ご心配なく、睡眠不足ではない。その証拠に、クマだったら、こめかみ付近じゃなくて、下瞼にできるだろう?……シクシク

 受付を通り、案内されたミーティングスペースに入る。きれいなビルだ。外には都会の夜景が見える。俺の今の仕事も、こんな環境でできたら、どんなにはかどることだろう……。

 そんな理想に思いを馳せ、5分後。不意に、ドアをノックする音がした。

😌「失礼します」

😅「……あ、どうも、はじめまして。藤本大輔と申します」

😜「はじめまして。エージェントの松嶋です。本日はお越しいただきまして、ありがとうございました」

 そこには、ラフなスーツ姿の、小柄な女性が立っていた。年の頃は、26、27といったところか。

 ……あれ? エージェントって、若い人もいるの? てっきり、経験豊富なアラフォーの方々が、エージェントなんだろうと思っていた俺にとっては、ちょっとしたカルチャーショックだった。

😃「松嶋さんて、お若いんですねー。エージェントのイメージが違ってたので、ちょっと驚きました」

😌「……さ、かしこまった挨拶はここまでにして」

はい?

😆「何ゆーてんの、お兄さん! ここ、ミナミのひっかけ橋とちゃうでーーー! 転職しにきたんちゃうの!?」

 え? ええええ? 関西人? 続けざまに、左肩をバシバシ叩かれ、おしゃべりは続く。

😆「アタシな、礼儀とか、かしこまった態度とか、あんま好きちゃうねやんか。ま、アタシが面倒見るからな、お兄さん、絶対ええ転職するわ。いや、ホンマ良かったなー、アタシで。安心しいや!」

 えええええええ。

つづく。

※このコラムは、筆者の実体験をもとに、脚色と、1/3のモイスチャーミルクと、1/3の優しさを加えて作られた、フィクションです。決して、ボディシャンプー的なものではありません。

Comment(3)

コメント

第3バイオリン

sunsetさん

第3バイオリンです。

転職活動が少しずつ動き出した感じですね。

それにしてもさやかさんはしっかりした女性ですね。
こういう人がそばにいてくれると心強いですよね。
いいなー、うらやましい(あっ、思わず本音が)

そして新キャラ(?)の松嶋さんも、なかなかパワフルな女性のようで。
2人の強力な女性に支えられて、sunsetさんの転職活動はどうなっていくのでしょうか。
続きを楽しみにしています。

sunset

第3バイオリンさん

こんにちは。sunsetです。
コメント、ありがとうございます~。

>それにしてもさやかさんはしっかりした女性ですね。

→嫁は、基本的に僕より仕事できる人なので、いつも戦々恐々と暮らしています(汗
 ちなみに、内出血のくだりは、脚色です(笑

>そして新キャラ(?)の松嶋さんも、なかなかパワフルな女性のようで。

→実際、僕についてくれているエージェントさんは、こんな感じではないんですけどねw
 基本はお笑い芸人さんの名前をとって、キャラに名づけをしていて、性格も、名付け親(?)と、極力合わせようとしています。
 

追記1:
このあとの内容が、以前別の方が書いたコラムと、かなりかぶっているのを、今日気づきましたorz
来月くらいから、ちょいちょいサブストーリーを交えてお送りできればと思っています。

追記2:
「冬の終わり」、毎日拝見させていただいています。
最終回の今日は、どうなるのでしょう。
読みながら、松岡修造バリに「大丈夫!ガンバレ!」と心の中で連呼しています。

第3バイオリン

sunsetさん

第3バイオリンです。

>「冬の終わり」、毎日拝見させていただいています。
>最終回の今日は、どうなるのでしょう。
>読みながら、松岡修造バリに「大丈夫!ガンバレ!」と心の中で連呼しています。

わー、ありがとうございます!
本日無事に最終回を迎えました。
よろしければ、ご意見、ご感想などコメントしてくださいね。

コメントを投稿する